ベスト8進出を決めた三潴ファイターズ【写真:加治屋友輝】

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昨年6月創業の「株式会社HOUSOUBU」がライブ配信を担当した

 4つの画角で、右下にはプロ野球のようなスコアボードがリアルタイムで更新される。22日から行われているポニーリーグ、夏の全国大会「マルハンインビテーション大倉カップ 第48回全日本選手権大会」の江戸川区球場で行われている試合は、中学硬式野球とは思えない本格的なライブ配信が行われている。保護者や選手から感謝の声が上がった取り組みは、昨年創業したばかりの新参企業の努力があった。

「アマチュア野球は予算が少ないので、その中でいかにプロ野球のように近づけるかがテーマでした」

 日本ポニーベースボール協会のYouTubeアカウントでライブ配信されている今大会。開会式の視聴者は800人以上にのぼり、登録者数も3日間で500人以上増えた。コメント欄には、保護者だけでなくファンから「頑張って」といったエールも寄せられていた。担当しているのは昨年6月に創業した「株式会社HOUSOUBU」。代表取締役の帖佐順三さんは、かねてより子どもの夢を応援したいという思いを持っていた。

「高校野球やプロ野球では熱い戦いが展開されていますが、それは子どもたちも同じ。選手たちの一生の思い出を形にしたいと思い、昨年、那須(勇元)事務総長に提案したところ、『やってみようか』と快諾してくださいました」

 HOUSOUBUにとって、昨年の同大会が初めての案件。やってみると、「試合に見に行けなかったので良かった」といった言葉を保護者からもらった。「那須さんからも『今年もやろう』と言っていただいたので、もっとクオリティを上げられたらと思いました」。2回目となる今大会は準々決勝からリプレーや打球を追うカメラを導入することも決まっている。

千葉ジャガーズの金子くんはコロナで大会を欠場

 新型コロナウイルスが再流行している中、「何とか日常の野球をさせてあげたい」という思いで協会は感染対策を徹底している。一方でコロナに感染し、大会に参加できなかった選手も少なくなかった。千葉ジャガーズの金子徹平くんもそのひとり。24日の三潴ファイターズとの3回戦でチームは1-6で敗れたが、グラウンドに立つことはできなかった。

 3月に沖縄で行われた「日本旅行カップ 第6回全日本選抜中学硬式野球大会」は右腕の怪我で出場できなかった。夏に悔しさを晴らすことを誓ったが、大会前に高熱に浮かされた。検査を受けると陽性判定。すでに熱は下がっていたが、試合に出ることは許されなかった。

 ベットの上で悔しさを滲ませるしかなかった。しかし、そんな金子くんを支えたのがライブ配信だった。チームメートを応援するために動画を見ると、自分が着用するはずだった21番のユニホームがベンチに飾られていた。

「嬉しかったです。自分がいなくてもユニホームを飾ってくれて、一緒に戦っている気にさせてくれました」

 結果としてはチームは勝つことはできなかったが、「これからも頑張ります」と仲間の雄姿を見て前を向くことができた。

両親が仕事で観に来れなかった三潴の玉城くん「1本打てて良かった」

 試合に出場できなかった選手だけではなく、出場していた選手にとってもライブ配信はモチベーションになった。ベスト8進出を決めた三潴ファイターズはこの日が初の江戸川区球場での試合だった。先制打を放った玉城匠人くんの両親は、仕事のため球場観戦ができなかった。

「江戸川区球場でやっている試合(のライブ配信)を見て、自分もここで活躍したいと思っていました」と思いを明かす。勝利につながる一打に「(母は)ライブ配信を見ていると思うので、1本打てて良かったです」と笑顔だった。

 帖佐さんも「今の時代はテレビだけでなく、YouTubeなどもある。選手たちの一生の思い出になれば嬉しいですね」と頬を緩める。コロナ禍の中、選手同士、保護者、そして指導者ら関わる全ての人の距離をライブ配信が繋いでいた。(川村虎大 / Kodai Kawamura)