●日本ユーザーの声から生まれた仕事用メカニカル

ロジクールは、ワイヤレスキーボード新モデル「MX MECHANICAL」シリーズを6月30日に発売した。同社のフラッグシップモデルとなるMXシリーズのキーボードとして初めてメカニカルスイッチを採用し、非常に心地よく、軽快なタイピングが行える点が特徴となっている。

今回は、このMX MECHANICALシリーズのうち、テンキーレスの「MX MECHANICAL MINI」をレビューする。

ロジクール「MX MECHANICAL MINI」。今回試したのは茶軸モデルだ。直販価格はMX MECHANICALが20,790円、MX MECHANICAL MINIが18,700円

○非常にコンパクトなボディが特徴

これまでロジクールでは、メカニカルスイッチを採用したキーボードをゲーミング向け製品のみで展開していた。ただ近年は、メカニカルキーボードの快適な打鍵感や、確実にタイピングできる利便性などから、ビジネスシーンでもメカニカルキーボードを利用する人が増えているという。

特にそれは日本で顕著とのことで、日本のユーザーからMXシリーズでもメカニカルスイッチを採用する製品を開発してほしいとの声が多く寄せられていたそうだ。それを受けてロジクールが本社に強く働きかけたところ、MX MECHANICALシリーズの開発に繋がったのだという。

MX MECHANICAL MINIは、テンキーを省いて小型化を実現。周囲の余白も少なく、サイズはW313×D26×H132mmと非常にコンパクトだ

そういった経緯で登場したMX MECHANICALシリーズ。フルキータイプの「MX MECHANICAL」と、テンキーレスの「MX MECHANICAL MINI」の2モデルをラインナップしている。

MX MECHANICAL MINIのサイズは、W313×D26×H132mm。テンキーレス仕様に加えて、キー外周の余白も非常に少なく、サイズはかなりコンパクトな印象だ。

それに対し重量は、電池込みで612gと、なかなかの重さとなっている。実際に手に持ってみても、サイズ以上に重く感じる。ただ、この重量があることによって、デスクに置いても非常に安定して設置でき、多少強めにタイピングしてもキーボード自体が動いてしまうことがない。

正面

左側面

背面

右側面

また、キー直下にアルミニウム製のパネルを装着することでキーボードの剛性が高められている。樹脂製ボディのキーボードのように、キーを強く押しても本体がたわむといったことがほとんどなく、実際に手でボディを強くひねっても全くびくともしない。これも、軽快かつ安定したタイピングに大きく寄与しているだろう。

重量は実測得615gと、サイズの割にはずっしりと重い

○白色バックライト付き、派手なカラーリングはなし

バックライトは、MXシリーズということで白色のみとなる。ゲーミングキーボードのような派手なバックライト演出はないが、発光パターンを6種類の中から選べるようになっているため、多少の遊び心は残されている。

バックライトは操作しないと自動的に消灯するようになっているが、近接センサーや環境光センサーを搭載しているので、手を近づけると点灯したり、周囲の明るさにあわせてバックライト輝度を自動調節するギミックも用意している。

白色のキーボードバックライトを搭載

バックライトの発光パターンは6種類から選択可能

○接続はLogi BoltかBluetooth、3台まで切り替えOK

PCとの接続は、Bluetooth Low Energyまたは「Logi Bolt ワイヤレス接続用USBレシーバー」を利用した無線接続に対応。従来のロジクール独自無線技術「Unifying」には対応せず、Unifyingレシーバー経由では利用できない。対応OSは、Windows 10以降、macOS 10.15以降、iOS 13.4以降、iPad OS 14以降、Linux、Chrome OS、Android 5.0以降。

機器とのペアリングは、最大3台の機器との同時ペアリングをサポート。キーボード最上列のEsc右の3つのキーを押すことでワンタッチで機器を切り替えて利用できる。

製品には充電用のUSB Type-Cケーブルと、Logi Bolt ワイヤレス接続用USBレシーバーが付属する

最大3台の機器と同時ペアリングが可能で、Escキー右のキーで接続機器を切り替えて利用できる

さらに、自動切り替え機能「Flow」対応のロジクール製マウスと組み合わせれば、登録したPC間でマウスの切り替えに合わせてMX MECHANICALも追従して自動で切り替えたり、PC間でのファイル転送やクリップボードの転送などが行えるようになる。このあたりは他のMXシリーズキーボードに搭載されている機能と同等だ。

本体後方には、内蔵バッテリー充電用のUSB Type-Cと電源スイッチを配置。底面後方には、後部の高さを2段階に調節できるスタンドが用意されており、キーボード面の角度を2段階で調節可能。

バッテリ駆動時間は、バックライトオンでで最大15日、バックライトオフで最大10ヶ月。

底面後方には折りたたみ式のスタンドを用意

底面のスタンドを開くと、このように後方が高くなり、キーボード面の角度を2段階に調節可能

背面には、内蔵バッテリー充電用のUSB Type-Cと電源ボタンを配置

●スイッチは3種類。茶軸を触った感触は?

○タクタイルの茶軸、リニアの赤軸、クリッキーな青軸

MX MECHANICALシリーズで採用されているメカニカルスイッチは、ロジクールのゲーミング向けメカニカルキーボードで採用されているものと同じ、ロジクールが独自開発したものだ。5,000万回の押下耐久性という、申し分ない耐久性を備える。また押下圧は55gとなる。

軸は、静音タクタイル(茶軸)、リニア(赤軸)、クリッキー(青軸)の3種類の軸を用意している。つまりMX MECHANICALシリーズは、全部で2モデル6製品をラインナップしているわけだ。なお、今回試用したのは、茶軸採用のMX MECHANICAL MINIだ。

MX MECHANICALシリーズで採用するメカニカルスイッチは、ロジクール独自開発のもので、静音タクタイル(茶軸)、リニア(赤軸)、クリッキー(青軸)の3種類の軸を用意している。写真は、今回試用した茶軸のスイッチ







MX MECHANICALの青軸モデル(写真左)、赤軸モデル(写真中央)、茶軸モデル(写真右)

○ゲーミング向けと異なるチューニング

ただ、ソフトウェア開発者やエンジニアなどをターゲットとしているMXシリーズということで、メカニカルスイッチには、ゲーミング向けとは異なるいくつかのチューニングが行われている。

まず、最も大きな違いがストロークで、MX MECHANICALのスイッチはストロークが3.2mmのロープロファイル仕様となっている。これは、エンジニアやビジネスユーザーのタイピング頻度を考え、指や手首への負担を抑えるためにストロークを短くしているという。

実際にタイピングしてみると、ストロークが1.8mmの「MX Keys」シリーズなどと比べると、しっかり深く押し込む必要があると感じるが、一般的なゲーミングキーボードの3.8mmよりはわずかに浅い。その差は、数字で見るとわずかだが、実際にタイピングしてみると、このわずかな違いによって、思った以上に軽快にタイピングできるという印象だ。

もちろん、メカニカルスイッチらしい、しっかりとした打鍵感はそのまま維持できている。これは、長時間キーボード入力を行うエンジニアなどにとって、かなり魅力的と感じる。

○ゲーミングと比べると打鍵音は静か

また、いずれのスイッチも、ビジネスシーンでの利用を考慮して静音性が高められているという。メカニカルスイッチということで、メンブレンスイッチなどに比べると打鍵音は大きいのは事実だ。

実際にタイピングしてみても、タイピングするごとにカチカチという打鍵音がしっかり耳に届く。それでも、一般的なゲーミング向けメカニカルキーボードと比べると、その音は静かだと感じる。

なお、今回は茶軸以外のスイッチは試せていない。おそらく、静かさという点では赤軸が最も優れるのではないかと思われるが、茶軸でもそこまでうるさいとは感じない。このあたりは、実際に家電量販店などで実物を触って確認してみることをお勧めする。とはいえ、メカニカルキーボードながら比較的静かに使えるという点は、ありがたいと感じる。

キーストロークは3.2mmのロープロファイル仕様で、軽快なタイピングが可能。またスイッチは静音化も施されており、打鍵音も比較的静かとなっている

●仕事向きのメディアコントロールキー。Enter周りは気になる

○日本語配列で88キー、19mmフルピッチを確保

キー配列は日本語配列で、キー数は88。メカニカルスイッチ採用ということで、MX Keysのようなアイソレーションタイプではない。キーピッチは縦横とも19mmフルピッチを確保。

日本語配列で、キー数は88。キーピッチは縦横とも19mmフルピッチをしっかり確保している

配列は、基本的にはテンキーレス仕様のキーボードとして標準的ではある。ロジクールも「サイズが75%のキーボードとして標準的な配列を採用」としている。

ただ、Enterキー付近は、コンパクトなボディを優先したしわ寄せが見られるのも事実。例えば、カーソルキーの[↑]が右Shiftの横に配置されていたり、Enterキーの右にもキーが配置されている部分がそうだ。合わせて、右Ctrlキーなど、一部省かれているキーも存在している。

最上列には、メディアコントロールなどの機能を配置。ファンクションキーを標準動作として設定することも可能だ

音声認識機能や絵文字の呼び出しボタンも用意している

○Enterキーの右にキーが並ぶ点は気になる

中でも、個人的に最も気になったのが、Enterキーの右に、間をあけずにキーを配置している点だ。実際にタイピングしていても、Enterキーを押そうとしてその横の[pgup]を押したり、[Back Space]を押そうとして[home]を押してしまう、といったことがあった。

この点については、慣れれば問題ないのかもしれないが、個人的には、慣れに頼らず、はじめからミスタイプしない配列にしてもらいたいと強く感じる。こういった部分は、ボディのコンパクトさを追求したことが大きく影響しているのだろう。ただ、利便性を考えると、幅があと5mm増えてもいいので、Enterキーと、Enterキー右側のキーの間に隙間を用意するなど、もっとゆったりとキーを配置してもらいたかったように思う。

最上部の列は、メディアコントロールキー、またはファンクションキーとして動作する。標準ではメディアコントロールキーが有効となっているが、「Fn + Esc」でファンクションキーを標準動作として設定することも可能。

小型化の影響で、カーソルキーが窮屈に配置され、右Ctrlキーも省かれている

Enterキー右に隙間なくキーが配置されている点はかなり気になる部分。多少幅が増えてもいいので、隙間をあけて配置するなどの配慮がほしい

○PCやタブレットなどの使い勝手を反映

メディアコントロールキーは、ボリューム調節やマイクのON/OFFといった機能に加えて、絵文字を呼び出したり、音声認識機能の呼び出しなどの機能が用意されている点がおもしろい。こういった部分は、近年のPCやタブレットなどの使い方を反映したものと言える。

また、最上部と右端の一部キーは、キーボードショートカットを登録したり、他の機能を割り当てることが可能となっている。ショートカットの登録や機能の変更には、専用ユーティリティ「Logi Options+」を利用する。標準では登録されていない機能を登録するなどして、自分が使いやすいようにカスタマイズすれば、キーの少なさをカバーして使いやすくできるだろう。

メディアコントロールキーなど一部キーは、専用ユーティリティ「Logi Options+」からキーボードショートカットを割り当てたり、他の機能を割り当てられる

●仕事で使えるメカニカルキーボードを探している人にお勧め

○小型ボディと軽快なタイピングは大きな魅力

今回実際にMX MECHANICAL MINIを試用してみて、配列などに一部気になる点はあるものの、打鍵感や軽快にタイピングできるという点はさすがという印象を強く感じた。

また、なによりコンパクトなボディは大きな魅力。デスク上にあまり大きなものを置きたくないという人にとっては、このコンパクトさでメカニカルスイッチの軽快なタイピングが可能、という点は大きな魅力となるだろう。

個人的に気になった配列についても、慣れでどうにかなる部分ではある。またどうしても気になるという場合には、フルキー仕様のMX MECHANICALを選択すれば問題ないだろう。

そして、MXシリーズで受け継がれている便利な機能もしっかり踏襲している。そのため、MXシリーズの特徴をそのまま利用できるメカニカルキーボードが欲しいと考えていた人には、間違いなく手に取ってもらいたい製品と言える。合わせて、ビジネスシーンで快適に利用できるメカニカルキーボードを探している人にもお勧めだ。