アダルトビデオは性のお手本ではない「観賞用」と心得よ - 田野幸伸

写真拡大

※この記事は2018年10月29日にBLOGOSで公開されたものです

複雑化する社会課題を解決する具体策を探るための議論の場として開かれた「日本財団ソーシャルイノベーションフォーラム2018」。その中で行われたタレントで元AV女優の麻美ゆま氏、産婦人科医の宋美玄(そんみひょん)氏、泌尿器科専門医の福元和彦氏、株式会社TENGAヘルスケア取締役の佐藤雅信氏、国際基督教大学・公共政策専攻の福田和子氏による「私たちは性のはなしを知らない」を、前回・前々回に続きリポートする。

AVでお馴染み「潮吹き」のリアル

福田:オーガズムに話を進めて行きたいんですけれども、AVの中で思い浮かぶものの一つに「潮吹き」というものがあります。それがオーガズムの象徴みたいに思っている人もいたりするのではないかと思うんですけれども、実際、現場でそれはどういうふうになっていて、そもそも医学的にいうと何なのかというところをお二人に説明いただきたいと思います。

宋 :実は何千年も前から女性も射精するといわれています。「Female ejaculation」といって、文献もいろいろあり、女性も射精すると、ピュッと出ることがあるということはいわれているんです。

一応、解剖学的には女性にも前立腺と同じようなものが膀胱の近くにあるんです。なので、女性もそこが刺激されたりとか、たまたまオーガズムとタイミングが一緒になったりすることもあるんですけれども、ちょっと多めに濡れる、皆さんもセックスの途中に急にシーツがジャバッと濡れたりとかはあると思うんですけれども、そこに液をためられるのは数ccなのです。

なので、AVみたいに50mlとか、たくさんシュパーッとビジュアルで分かるようなのは、膀胱の後ろをこすりあげていて、そこから出ている。

福元:そうです。刺激しすぎて、オーガズムを超えすぎて膀胱が麻痺した状態。だから、かき出すという作業をしなさいとテクニックでは加藤鷹さんとかも言ってるんですけれども、かき出すことによって出るということは、ほぼそれは「尿」です。

激しい手マンは女性器を傷つける

麻美:男女を問わず、「どうやったら女の人の潮を吹かせられるんですか」と聞かれることはすごく多くて。女性は女性で、「自分は潮を吹けるか分からないんですけれども、ゆまちゃん、どうやったら吹けるのかな」という質問を受けることが多くて。

でも、特に女性は男性みたいに突起物があるわけではないので、すごく説明がしにくかったりするんです。そこのポイントをやると出るよとか、そういうことは全然なくて。

AVの現場の話で言いますと、男優さんのテクニックといいますか、それまで女優さんに対しての数々のいろいろな鍛錬があって、潮吹きが得意な男優さんがいたりするんですけれども、加藤鷹さんとかもそうなのですが、女性の体のことをすごく知っているから、女性の体を傷付けずにできる。それは並大抵の経験では恐らくできないと思います。

AVの現場ではたくさん水を撮影前に飲むとか、すごく水分が出やすい状況で撮影に挑んだりしています。そういうシーンになったらローションを必ず使うとか、ガシガシやってしまうと(膣を)傷付けてしまって撮影が中断するということもあったりするので、すごくそこはケアを大事にしています。

本当にAVのせいでと言いますか、女性もそういうのをやってみたい、男性もやってみたいというのが増えてきてしまっているのはすごく悲しいと思ったりもするんですけれども、本当にあれは観賞用と考えていただいて。

実はモザイクの中ではそんなに手を動かしてなかったりとか、激しくしているように見えるけれども、実はそんなに動いてないとかもあったりするので、激しくすれば出るものだと思っている方が男性にはいるので、そこは大きな間違いだということは分かっていただきたいです。

宋 :AVというのはビジュアルで見ている人が興奮するものなので、例えば、指で刺激するのとかも、本当は女性は中でソーッとした刺激のほうが良かったりするんだけれども、それだと映像としてつまらなさすぎるので、すごく激しく動いてたりとか。女性もイッたりするんですけれども、イッたふりをする女性もいるから、男性から見て「イカせた」という証拠が欲しいみたいです。

ところが、潮吹きというのは女性がオーガズムに達した証拠ではないんです。もちろんテクニックがある男女だとそういうプシュッて出るものがあったとしても、本当に観賞用で、それが女優さんが気持ちいいとか、男性がうまいとか、イカせたとかいうものではないので、AVだけを見て、ああいうセックスを俺もいつかしたいとか思っていると、実際の生身のセックスとは違うという典型例です。

福田:爪が伸びてると純粋に血が吹き出るみたいな感じです。

麻美:男優さんは驚くほど、もう爪がないのではないかというぐらいの深爪をしています。膣はちょっとしたことで傷ついたりするので、そこは気を付けて。

佐藤:女性の潮吹きがメインになったと思うんですけれども、男性も最近、潮を吹く方が多いんです。

宋 :男性が潮を吹くの?

佐藤:AV業界で流行っているんです。

福元:あれもパフォーマンスです。

潮吹きの「潮」は尿でしかない

麻美:女性の潮吹きに関してなのですけれども、潮吹きは何ですかと聞かれることもあって、でも、私は医者ではないので分からないので、自分の感覚的に、尿になる前のものという感覚ではあったんです。

宋 :膀胱にたまっているものは腎臓で尿になったものしか出てこないから、尿になる前のものではない。

麻美:尿ですね…。

福元:尿しかない。しかも、たくさん水を飲んでるわけですから、相当薄い尿なのです。だから、透明だということです。

麻美:なるほど。

福元:男性も刺激しすぎて我慢できないところまでやって潮を吹くということは、女性も潮を吹かせようと思ったら、そこまで刺激しないといけない。

宋 :それは男性で喜んでやってる人がいるんですか?

福元:そういうお店もあります。

宋 :そうなんや。徹底的にやってくれるという?

福元:そう。

宋 :いろいろな人がいるんですね。勉強になります。

男性の「賢者タイム」は当たり前のこと

宋 :これは私の『女医が教える本当に気持ちのいいセックス』から出してきたグラフなのですけれども、男女の性反応の違いです。私はこれを勉強したとき、女に生まれてよかったと思ったんですけれども、男の人は興奮してバーッと達して、オーガズム・交感神経の反射、その後は俗にいう「賢者タイム」というものになるんです。シューって消えるんです。

福元:一瞬で落ちていきます。

宋 :「おれは何しているんだろう」みたいな。

福元:そうです。これは体の構造としてそうなる。確実に賢者タイムに入るんです。

麻美:女の人は、イった後が悲しい、素っ気なくされるみたいなものもあったりしますけれども、それは当たり前のことという感じですよね。

福田:あきらめたほうがいい?

福元:これは実際にプロラクチンというホルモンの影響だということも分かっています。プロラクチンは女性でいう乳汁分泌ホルモンなのです。そういう男性に出るものではないものが賢者タイムで出てくるので、それは当たり前だと、そこを頑張って「ピロートークしようよ」ということですよね。

セックスのあとはトイレで排尿を

宋 :背中向けて「ハー」みたいな感じ。さっき打ち合わせで言ってたんですけれども、シャケが川を上ってきて、卵を産んで、精子をかけたら死ぬではないですか。(男性を)プカーッと川に浮いてるシャケだと思ってそっとしておいて、(その間に)私が強くお薦めしたいのは、セックスした後にトイレに行ってください。

麻美:女性がということですね?

宋 :そう。膀胱炎になってしまう方が多いのです。いろいろと触るではないですか。そうしたら、本来、無菌の尿道とかに菌が上がっていっちゃうかもしれないので、排尿をしてきれいにしてくださいと。

福元:急性膀胱炎というのは性交渉の後になるというのは当然なのです。

宋 :すごく多いんです。

福元:でも、お医者さんはあまりそこまで言わないんです。きれいな女性が来て、「膀胱炎ですね」って薬を出すわけなのですけれども、僕は「セックスをしたでしょ?」と必ず言います。「そういえば、すいません」って…。

宋 :あと、「トイレに行ってますか?」、「いえ、そのまま寝ます」。

福元:絶対、そのまま果てて寝てるパターンが多いので、その前に男性が賢者タイムに入っているすきにトイレに行ってください。

福田:男性はトイレに行かなくていいんですか?

福元:男性も行ったほうがいいです。でも、男性はそんな膀胱炎にはならないんです。

宋 :尿道が長いので。

福元:女性は尿道が短いので。男性は風俗に行ったときには必ずトイレに行ったほうがいいです。

パイパンにすれば清潔度UP

麻美:聞きたかったのが、きれいにしすぎても駄目っていったりするではないですか。菌を殺しすぎちゃうと駄目みたいなことで、石けんで洗っちゃいけないとかっていうのはどうなのですか?

宋 :女性のデリケートゾーンの話ですか?

麻美:はい。

宋 :そんなことは全然なくて、きれいにしすぎちゃ駄目と言われているのは、膣の中は洗ったり触ったりしないほうがいいんです。

福田:中は石けんで洗っちゃいけないんですよね?

宋 :中は乳酸菌という常在菌がいてきれいにしてくれるので、中を洗ったりすると逆に雑菌が増えちゃったり、かびが生えたりすることがあるんです。

麻美:撮影のときに、セペという女性器に入れて中を洗うものがあったので、結構使っていたんですけれども、それを使っているときのほうが、例えばカンジダになりやすかったりとか、調子が悪いときが結構あったりしたので、きれいにするものなのに、間違った認識もあるのかなと思ってました。

宋 :そうなんです。だから、中は触らないでいただきたいんですけれども、デリケートゾーン自体はしわも多いし、垢もたまりやすいし、アンダーヘアーに尿とかおりものがこびりついたりするので、お湯とか水だけだと落ちないんですよね。

でも、例えばボディソープで一緒に洗っちゃうと粘膜もあるし、その名のとおりデリケートな皮膚なので、顔をボディソープで洗う人はいないではないですか。洗顔料で洗うでしょう? なので、デリケートゾーン専用の洗剤がちゃんと売っていますので、それで外側だけ洗っていただくことが正しいケアの方法です。

もっと言うと、アンダーヘアーは特に意味があって生えているわけではないので、脱毛していただいたほうが皮膚のトラブルは減ります。

麻美:それは男性にもいえることなのですか? どうなのでしょう?

福元:もちろん男性も剃ってもいいと思いますけれども、僕は別にお薦めはしません。そんなに男性は感染しやすいということはないので。

宋 :でも、毛じらみとかはアンダーヘアーが生えてなかったら絶対にかからない。

福元:ならないです、もちろんそうです。

宋 :私が海外で診療していたときは、みんなアンダーヘアーが全然なくて、日本でも最近増えてきたんですけれども、大抵パートナーが外国人っていう人がツルツルになっていて、美しい感じです。

女性のパターンがあるんですけれども、オーガズムに毎回達するとも限らないです。なので、毎回いかないと彼が納得しないみたいな感じだと、イッたふりをしていたりすることもあるんですけれども、いくときは逆に波に乗ると何回でもいけるというのがあるので、女性のオーガズムのほうが。

あと、男性はほぼ亀頭への刺激でオーガズムに達すると思うんですけれども、女性の場合はクリトリスであったり、Gスポットであったり、あとはポルチオとかいろいろなところで、しかも、何カ所も同時に刺激してオーガズムに達するといろいろな神経が反応して、大変深いオーガズムになることもあります。詳しくはこの本に書いてあります。

麻美:本当にこれはザ・教科書というぐらい具体的に載っているので、ぜひ男性も女性も読んでいただきたい本です。

女医が教える 本当に気持ちのいいセックス
posted with amazlet at 18.10.27
宋 美玄
ブックマン社
売り上げランキング: 1,142
Amazon.co.jpで詳細を見る