道端アンジェリカが乾癬をあえて公表したワケ 肌が汚くて死にたいとコンプレクックスに - BLOGOS編集部
※この記事は2018年10月07日にBLOGOSで公開されたものです
昨年5月、「乾癬(かんせん)」という皮膚の病気を患っていることを告白したモデルの道端アンジェリカさん(32)が今月5日、製薬会社のヤンセンファーマ(東京都)が立ち上げた乾癬の疾患啓発プロジェクト「HIKANSEN project(ヒカンセン プロジェクト)」のアンバサダーに就任した。同日東京ミッドタウンで行われたキックオフイベントに登壇後、BLOGOS編集部のインタビュー取材に応じた。【取材:石川奈津美】
道端さんは昨年5月12日、自身のInstagram上で加工なしのすっぴん写真を投稿。乾癬を患っていることを明らかにした。
「乾癬は一生治らない病気です。出ないように自分でコントロールしようと頑張っても、なかなか消えないし、突然違うとこにできていたりします。。
肌が汚いといわれてもしょうがないんでしょうが、乾癬が悪化しないように日々人一倍努力しているので、悔しくて書かせてもらいました!!(笑)」
(2017年5月12日 道端さんのinstagram投稿より)
乾癬は皮膚が赤くなったり、乾燥したかさぶたがフケのようにボロボロとはがれ落ちたりする症状が出る皮膚の病気。日本での患者は約50~60万人(人口の約0.4~0.5%)と推計されるが、生活習慣の変化などの理由から、増加傾向にあるという。感染する病気ではないが、病名の「かんせん」という響きから誤解が生じたりするなど、患者の精神的な負担が大きい病気であるとされている。
道端さんのこの投稿には、いいねが約3万3000件、共感や励ましのコメントが2200件ほど寄せられメディアでも大きな反響を呼んだ。また、乾癬という病気が社会に認知されるきっかけとなった。
乾癬の発病を、家族にも事務所のスタッフにも言えなかった
道端さんが体調の異変に気づいたのは約5年前。
「ひじとひざの裏に2箇所、五円玉のようなボツボツができました。最初はここだけ皮膚がおかしいな、と思っていただけで。乾癬という病名すらも知りませんでした。
私の場合は発症後、一気に広がっていきました。お腹に1つあったものが、次の日3つになり、翌日は4つ、さらに次の日には5つと日に日に増えていって。朝起きるのも嫌でしたし、鏡も見ないようにして、お風呂に入るときも電気を消して入っていました。
背中をずっと見ていなかったのですが、ふとしたときに見たら、すごい数のボツボツができていて。どうしよう治るのかなと、さらにストレスがたまり、負のループに入って余計悪化しましたね」。
突然の病に苦しんだ道端さん。「親友の女友達3人には『乾癬という病気かもしれない』と伝えていましたが、家族にも、事務所にも伝えることができませんでした」と打ち明ける。
「仕事柄、『モデルはきれいでいなきゃいけない』っていうプレッシャーがものすごくありました。その分、みんなが思っている私の姿と、自分が見ている現実との違いもつらかったです。
だから、ヘアメイクさんたちスタッフにも『ブリーチしているから頭皮がちょっと赤いかも』とか、『加圧トレーニングをしているからすこし痕が残っている』とか、とにかく嘘をついて『今だけ肌が荒れているんです』というフリをして、隠してきました。
プライドというか、自分の弱みになることを言いたくないという自分の性格もあったんだと思います。それが逆に自分をストレスに追い込んでいきました」。
ネット上で目にした「肌が汚い」の一言が追い討ちをかけた
道端さんが自らの病を告白するきっかけとなったのは「スーパーフードを食べているのに肌が汚い」と自身の肌の状態について指摘するネット上の書き込みを目にしたことだった。
「肌のお手入れを何もしてこなかったならいいんです。でも、これまで本当に、人一倍努力してきました。
乾癬は生活習慣からくるといわれていますが、元々食事にはとても気をつけていましたし、運動もしていたのでなぜ発症してしまったのかが不思議でした。
発症後も、夜寝る1時間前にお腹に薬を貼って試してみたのですが、それも重曹を使わないと落とせないので毎晩、とても時間がかかりました。それでも何とか治そうと思ってとにかくできることは試しました。
そんな中、追い討ちをかけるような心無い言葉を言われて。自分の心の中で張りつめていた線がぷつっと切れた感覚でした。
翌日の朝、もういいや、言っちゃおうと。何で私、ひとりでこんなに悩んでなきゃいけないんだろう、っていう感じでしたね。言って楽になりたいなと思いました」。
乾癬を公表後、当事者以外の人たちからも寄せられた声
一方、道端さんはInstagramに投稿直後、事務所にあらかじめ持病を伝えていなかったことに気づく。
「批判の声がたくさんあるかもしれないと思い、『これもしかして、ものすごいこと言っちゃったかもしれない』とすごく心配したんです。
でもそんな心配は不要でした。『勇気をもらえた』『告白してくれてありがとう』とたくさんのうれしいコメントをもらって、『モデルなのに乾癬なのか』といった批判はひとつもなかったんです。
それに、当事者の方だけじゃなくて、アトピーの人や、ニキビがずっと治らないといったお肌の悩みを抱えている子たち、そして、ただただ自分の容姿に悩んでいる子からも『アンジェリカさんみたいな人でも、欠点じゃないけどそういう悩みがあると思うと、励みになる』とか『自分の悩んでいたことなんて』とコメントをたくさんもらいました。
私がずっと隠していた、コンプレックスだったことを公表したことが、まったく会ったことのない方々の勇気になれたことはすごい良かったし、うれしかったです」。
「見た目重視」の社会で、他人の目を気にしないでいられるには?
だが、道端さんのようにコンプレックスを周囲に公表することは簡単なことではない。私たちが、そうした思いを克服し、他人の目を気にしないようにすることはできるのだろうか?
道端さんは語る。
「本当に言いにくいことですよね。でもまず、やっぱり人に言う・言わないの前に、本人がコンプレックスを受け入れることが大事かなと思っています。
私がそうでしたが、人に言えない理由というのは、自分で受け入れられていないからなんです。
やっぱり自分のことってどうしてもネガティブ思考から人間は入って思うんです。でも、コンプレックスの克服だけではなくて、例えば良い美容をしていこうとしても、ダイエットにしても、自分の体や見た目をまず一度受け入れないと、それがプラスには働いていきません。
私は、まず『自分を許してあげる』ようにしました。こんな自分でも大丈夫、こんな自分でも良いところがあるから大丈夫だって。
自分のコンプレックスだったところを少しずつ自分で許してあげていって、「私はこれがあるから大丈夫」と思っていくと、少しずつ「そんな私もかわいいじゃん」となっていく。
そういった過程を何度も重ねていくと、最終的に自分のことを愛してあげることができるようになんじゃないかなと思っています。
今の日本社会、特に女性は周りと自分を比べて『あの人はこうなのに私はこうじゃない』とか、『今の流行の髪型やメイクはこうだからこうしないといけない』とか、気にしすぎているんじゃないかなと思っています。
でも、その基準を決めたのは誰ですか?と思うんです。基準を決めていいのは自分じゃないかなって。自分の基準は自分で決めればいいし、そういう世の中になってほしいなと思います」。
東京ミッドタウンでは10月5~7日の3日間、乾癬の認知向上を目的に、当たり前の日々を見つめなおすアートイベント「ふれられなかったにんげんもよう展」が開催されている。
最終日の7日の午後2時からは、道端アンジェリカさんや、『顔ニモマケズ』の著者で作家の水野敬也さんらが登壇するトークセッションも行われる。入場無料。
・ふれられなかったにんげんもよう展 特設サイト