オンラインサービスの有料化は、ユーザーのためにも重要 - 赤木智弘
※この記事は2018年09月16日にBLOGOSで公開されたものです
任天堂は9月14日に公開した動画「Nintendo Direct」(*1)の中で、Nintendo Switch Onlineの正式サービス開始と、有料化を発表した。(*2)
Nintendo Switch Onlineのサービス開始は9月19日からで、これまでの無料体験は終了する。
詳しくない人の中には「突然、任天堂がオンラインサービスを有料化した」と思っている人もいるようだが、実際には任天堂Switchが発売される前から、オンラインサービスは有償であることが発表されていた。
当初のは2017年の秋、つまり2017年3月3日のSwitch本体の発売から半年程度での有料化が予定されており、正式開始まではβ版という形で、誰でも無料でオンラインサービスを楽しめるようになっていた。
しかし、Switch人気による品薄で、欲しくても手に入らない人が続出した影響などもあり、当初の予定を後ろ倒しして無料期間を継続していたのである。
現在では一時期の品薄状態も脱し、Switch本体はいつでも手に入れられる状態になっている。そこで、当初の予定から1年ほど遅れたが、満を持してオンラインサービスを正式開始し、有料化を開始というのが流れである。
有料化されるオンラインサービスは、オンラインを通してのゲームソフト内での対戦プレイなどが対象で、スイッチ本体やソフトウェアのアップデート。ニンテンドーeショップの利用やフレンド機能などは、これまで通り無料で利用できる。
また、Switchで可動するオンラインゲームであっても「ドラゴンクエスト10」のようにゲームサーバーを独自に用意しているゲームであれば、Nintendo Switch Onlineの加入の有無は関係がない。そのようなサービスの場合は独自にプレイ料金を払っているはずである。
ひとまず分からなければ、Switch版の「マリオカート8デラックス」「ARMS」「スプラトゥーン2」「マリオテニスエース」「モンスターハンターXX」などの、オンライン対戦に料金がこれまでかかっていなかったソフトをこれまで通り楽しみたいのであれば、Nintendo Switch Onlineに加入する必要があると考えればいい。
ちなみに、12月発売予定の「大乱闘スマッシュブラザーズSPECIAL」もオンライン対戦対応である。仲間同士で一箇所に集まって遊ぶのであればオンラインは必要ないが、いつでも誰かと対戦したいと思えば、オンライン必須である。
価格的には基本の1ヶ月の値段は税込み300円と、PS4のオンライン料金である税抜き476円と比べると安い。ただしそれはサービス内容の違いであり、例えばPS4では比較的新し目のタイトルが月替りでフリープレイになるなど、Nintendo Switch Onlineの特典と比べると豪華な特典がつく。なので単純に高い安いとは言えないことに注意。
また、WiiUや3DSなどのオンラインサービスには今回の有料化は関係なく、いまのところは有料化の予定もない。
さて、今回の有料化に対して、ネットでは不満を言っている人も目立つ。
月額料は決して高くは無いのだが、子供が払えないとか、ファミリープランが高いなどの不満が多いようだ。
ただ、僕はオンラインの有料化は、ゲーム業界の健全な発展において重要であると考えている。
まず重要なことは、すでにテレビゲームは「一度売ったら終わり」という時代ではないということだ。
昔のゲームであれば、ソフトを買った時点で、そのソフトに関するデータの譲渡は、すべて完結した。だからバグがあっても、あとからそれを修正することはできなかった。「バグではなく仕様」という言葉があるが、製品化されてしまったソフトのバグは、そう言い張るしかなかったのである。
しかし現在のソフトは一度販売しても、アップデートなどが提供されるようになっている。無償有償と幾度となくアップデートされることで、バグフィックスはもちろん、新しいステージや新キャラなどが追加されたりするのが当たり前になっている。
今のゲームはかつてのように「一回買ったら、その内容を提供してサービス終了」ではなく、「一回買っても、バグがあれば直しますし、いろいろとアフターサービスの用意がありますよ。ゲームを気に入っていただければ、有償ですがオプショナルツアーも楽しめますよ」というものになっているのである。
そのために、家庭のゲーム機はかつてのようなスタンドアローンではなく、オンラインで楽しむゲームはもちろん、たとえソロプレイのゲームしかプレイしない人であっても、アップデートの情報などを得るためにサーバー接続をすることが前提になっているのである。
そうした保守管理やオプショナルサービスまでもを含めた、テレビゲームというコンテンツサービスを円滑に提供するために、その入口となるハードメーカーが持つサーバーの維持は非常に重要な課題となっている。もはやサーバーはゲーム機の持つ機能の一部として欠かせないのだから、「ゲーム機利用料」としての料金負担は、必然であるとも言える。
むしろ、オンライン対戦などを使用さえしなければ無料でアップデートなどのサービスを受けられるということに、ありがたさを感じるべきだとすら思う。
それは逆に言えば、オンライン接続料が設定されていないオンラインサービスは、いつ終了しても仕方ない状況にあるといえる。
先にWiiUや3DSのオンラインサービスに有料化の予定は無いと書いたが、それは決して今後もずっと無料で遊び続けられるということではなく、いずれサービスが終了するという意味である。
3DSはまだ新作ソフトの発売もあり、現行機であることからしばらくは安泰であろうが、WiiUはいつサービスが終了してもおかしくない。今も初代のスプラトゥーンで遊んでいる人は多いが、そのサービスはいつまで続けてもらえるのだろうか?
これからもそのハードで長く楽しく遊び続けるためにも、オンラインサービスの有料化は必須である。ゲームで遊ぶ人たちや、子供をゲームで遊ばせる親は、サービスを受ける上で多少の負担があるのは当然という考え方を受け入れていく必要があるだろう。
*1:Nintendo Direct 2018.9.14(Nintendo公式チャンネル YouTube)https://www.youtube.com/watch?v=vAXicfW9oO8
*2:Nintendo Switch Online(任天堂)https://www.nintendo.co.jp/hardware/switch/onlineservice/