小泉進次郎氏「人と違うことを恐れるな『とりあえずビール』を拒否するところから始めよ」 - 田野幸伸
※この記事は2018年09月15日にBLOGOSで公開されたものです
9月8日・9日に開催された「日本財団ソーシャルイノベーションフォーラム2018」渋谷区の青山学院大学で行われた小泉進次郎衆議院議員の基調講演をダイジェスト版でお送りする。
人と違うことを恐れるな
小泉:「おはようございます。今、私がここにつけているのは、青山学院大学の新しいスローガンを表しているピンバッジです。Be the Difference、「違っていい」、「違いがあれ」、「人と違っていいのだ」ということです。日本はどちらかというと、人と違うことを恐れる空気が強い国ですけれども、青学・堀田理事長の掲げられるBe the Difference、「違っていい」という思いに、先ほど控室で強く共鳴をして、きょうはバッジをつけさせていただきました。Be the Differenceという意味も、このソーシャルイノベーションフォーラムに通ずる1つのテーマだと思います。
世の中を大きく変えた東日本大震災
ソーシャルイノベーションを振り返れば、最近の大きなきっかけは東日本大震災だと思います。2011年3月11日に世の中が大きく変わった。われわれの意識も、本当に今までの日本のあり方でいいのだろうか、考え直さなければいけないことがあるのではないかという思いがさまざまなセクターに広がったのがこの日ではなかったでしょうか。今回、2018年9月6日に北海道で地震が起きました。そんな中、私はNHKのニュースを見ていて、しばらく考えさせられるシーンがありました。サラリーマンのような方が街角インタビューで、インフラが止まっているから職場まで1時間かけて歩いていきましたというコメントをされていたのです。
もちろん、絶対に職場に行かなければいけない方もいるでしょう。どうにかしてでも行かなければいけないというケースや立場の方がいることは重々承知です。ただその上で、私はそれを見ながらこのように思ったのです。
「仕事は職場じゃなくてもできる」
今、本当に職場に行かなければできない仕事とは何なのか。そこに行かなくてもできるツールがテクノロジーとしてたくさん出てきているのに、それに気付かずに頑張っている、これは日本的です。
どんな手段を使ってでも職場にたどり着いた者は偉い、よく頑張った。しかし、本当にそうなのだろうかと、私はこの街角インタビューで非常に考えさせられました。
災害は働き方改革のチャンス
8月の下旬に私は総務省へ行きました。今、親しく一緒に仕事をしている小林史明議員が総務省の政務官をしており、総務省は働き方改革やテレワークの推進、職場改革、ペーパーレス、いろいろなことに取り組んでいます。省庁の中でテレワークを利用した職員の割合は、総務省がぶっちぎりで、2人に1人がテレワークの経験をしています。この総務省の改革を視察に行って、テレワークの体験などをしたのですが、そこで私は、今度台風や災害があったとき、東京のインフラが少し乱れたりしたら、働き方改革のチャンスだと思って、災害の日は全員、基本的にテレワークでいいことにすれば、災害がソーシャルイノベーションのチャンスになると言いました。
今回の北海道の地震でも、世の中を前に動かしたり社会を革新していくヒントが多く詰まっているのではないかと思います。われわれ政治家だけではできません。シェアリングエコノミー、そして、まさにソーシャルアントレプレナー、いろいろな方々が出てきました。そういう皆さまの力を一緒になって結集すれば、今までの日本の歴史のように、災害のたびに日本は強くなる、そういう国が必ずできると思います。
つまり、今回のソーシャル・イノベーションフォーラムにかけて言えば、日本の災害の歴史はソーシャルイノベーションの歴史とも言えると私は思います。
異例の予算マイナス要求を実現
国会改革も動いています。与野党100人以上が集まって、超党派の衆議院を改革する会が立ち上がりました。そして、この前の国会の最後の日には、超党派の会で提言を議員運営委員会の委員長に渡して、その1つがすぐに形になりました。国会改革が行われるためには、どこが動かなければいけないのか。それは議員運営委員会、通称「議運」といわれる会議体です。
そこに対してペーパーレス、IT化、こういったことをもっとすればコストも下がる、そして霞が関の皆さんの働き方も楽になる、そして意思決定の速度も速くなる、こういったことをするべきだと言って、今回、議運が動いて、本当にこれは珍しいことですけれども、来年度の予算要求に4,500万円のマイナス要求がされました。
普通、霞が関というのは、今年の予算よりも1億円でも上乗せをすることが局や部署の評価基準なのです。だから、どんどん予算が膨れてくるのです。それをどのようにして切るのかを考えるのが財務省です。
その中で今回、衆議院の議運は4,500万円のマイナス要求をしています。これはペーパーレスを一部実行するだけで、皆さんが送り届けている国会で働く国会議員のコストが4,500万円下がるのです。これはまだまだ序の口です。これからまだまだたくさんありますから、こういったことを1つ1つ積み上げていって、動かないと思われた国会改革を平成のうちに必ず動かしていきたいと考えています。
自民党も動き出しました。自民党が政策をつくるところは政務調査会、略して「政調」と言います。私は、この政調の改革の事務局長もしていまして、これはあまりニュースになっていませんが、とても大きな改革の一歩を踏みだしました。
それは2020年までに自民党の政調の会議資料、完全ペーパーレス化ということを決めました。
おそらく来月ぐらいから始まるであろう、次の国会の初めての自民党の政調の会議から早速ペーパーレスをやるということが決まりましたので、どうか、皆さんがソーシャルイノベーションを生み出すように、私も皆さんに負けないように政治の世界でのイノベーションを生み出していけるように頑張っていきたいと思います。
ありがとうございました。
(拍手)
小泉進次郎議員に質問コーナー
--人材のお話をされていたと思うのですが、「若者に期待していること」をお伺いしたいです。小泉:若者に期待すること、一言で言うと「Be the Difference」。
今、堀田理事長がおられるから言うわけではありませんけれども、僕は本当に大事だと思います。人と違うことを恐れない。
「とりあえずビール」をやめる
例えば最近、小さなことですけれども、私がしていることは何かといいますと、議員の仲間とか、時々お世話になった官僚の皆さんとか、友達とも飲み会に行きますが、そのときに「とりあえずビール」をやらないことにしているのです。日本というのは、「小泉さん何にしますか?」と、私のように気を使われる立場の人間が「じゃあ、ビール」と言うと、ビールを飲みたくない人まで、みんな1杯目がビールになってしまうわけです。私はそれを見るのがすごく嫌で、お酒って、飲みたくないお酒を飲むときほど、まずい酒はないです。
だから、好きな酒を1杯目から頼めばいいのです。だから、私は1杯目をみんなに変えてもらうために、ビールを飲みたくてもビールを頼まないのです。最近は、1杯目のハイボール率が相当高いです。我慢して2杯目に生ビールを頼みます(笑)。
--そうすると、(小泉さんに合わせて)みんなハイボールにならないのですか?
小泉:この前、それがあったのです。だから、これからはちょっと何にしようかなと、今度から生ビールとハイボール両方でと言おうかなと思ったぐらいですけれども。例えばサークルとかゼミの飲み会のときに人に従わないということです。
Be the Difference。本当に大事だと思います。私がこうしたい、俺はこうしたいという主張をきちんと大事にして、最後は自分が納得する以外にないですから。
--学生、あるいは社会に出て会社に入っても、すごくやる気がある人と、残念ながらそうではない人とのモチベーションのギャップというのがかなり目立っています。しっかり頑張ろうという人が、モチベーションがない人にどんどん引っ張られてしまって、全体の士気が下がってしまうのはどうしたらよいでしょうか。
小泉:これは正直、僕自身も同じ悩みを持っています。自分のモチベーションが高ければ、周りのモチベーションが上がるという単純な問題ではないので、モチベーションコントロールをどのように合わせて、結果的に大きなモチベーションを組織・チームとして行っていくかというのは、最終的には一緒に仕事をする一人ひとりが何にモチベーションを感じるのか、という理解をすることがとても大事だと思います。
私は、松岡修造さんが大好きですけれども、松岡修造さんのあの熱さ、あれは最高です。しかし、みんなが松岡修造さんのような熱さを表に出すかというとそうではなく、表に出さないけれども、中身は松岡修造さんみたいな人はたくさんいるのです。
大事なのは、常に理想的なリーダーシップとフォロワーシップは何だろうかと問い続け合うこと、これがモチベーションアップにとても大事ではないのかなと思います。
坊主頭のいない甲子園が見たい
もう1つ、教育現場の話で言えば、教育は自分たちで変わるスピードをもっと早めてほしいと思います。教科書を変えるのにもとても時間がかかって、教科書が変わったときは時代も変わってしまっているような気がします。最近で言えば、夏の甲子園も盛り上がりましたけれども、将来、坊主頭のいない甲子園も私は見たいです。もう自由でいいのではないでしょうか。私も高校球児だったことがありますけれども、坊主にしたらヒットが打てるのかなと思いました。それも自由であるべきだし、別に坊主にしたい人はそれでいいのです。
そして、2年後から小学生のプログラミング教育が始まります。最近、ニュースを見てびっくりしたのは、学校の先生たちがプログラミングを習いに行っているそうです。私は習わなくていいと思います。なぜなら、今の先生たちよりも、今の10代のほうが、よほどプログラミングがネイティブだから。分かっている子がたくさんいます。今から学ぶ先生たちが、その子たちにプログラミングを教えるということが、本当に先生たちにとっても、生徒たちにとっても幸せですか。私は、これから社会がどんどん変わっていくたびに、先生たちがそれに追いつく研修をやり続ける果てにあるものは、先生たちの疲弊と、教育の質の低下だと思います。
だからそういったものは、どんどんアウトソースして、本当に教師が生徒と向き合ってやるべきことは何なのかを考えたら、外国人の方が教室に入って英語を教えるように、プログラミングも先生たちが学ぶ必要はないのです。
教育の全体的な改革も、最終的には先生のモチベーション、学ぶ側の生徒のモチベーション、そういったところも含めて上がっていくと思いますし、18歳から22歳までが大学生だと思い込んでいるこの日本の社会が変わって、行きたいときに行くのが大学であるというように、まさに生涯学習を担う場所へと変わっていくのではないでしょうか。
今、経済連の中西会長が、「2021年から新卒一括採用廃止」という言葉を投げて、その波紋が広がっていますけれども、このような波紋が広がることを私は大歓迎しています。それが本当にいいかどうかを含めて議論をすればいいのではないかと思います。