※この記事は2018年09月08日にBLOGOSで公開されたものです

9月6日未明、北海道胆振地方を震源とする最大震度7の地震が発生した。震源に近い厚真町では大規模な土砂災害が発生し札幌市内でも住宅に被害が出るなど、広範囲に影響があり今後避難所での生活を強いられる人も増えるとみられる。

今回は災害に詳しい専門家や識者に取材し、避難所で生活する際の注意点や日頃から必要な備えについて聞いた。

避難所生活では「助け合い」が大切

自宅を離れた避難所生活では「ストレスを溜めないように、皆さんで話し合って支えあう意識が大切」だと話すのは、2015年の常総水害では最前線で避難所の支援に奔走した「助け合いセンターJUNTOS」代表の横田氏。

他人との共同で暮らす避難所での生活では、年配の方や小さな子供がいる親世代の方が「遠慮しやすく、どうしても我慢してしまう」傾向にあるという。そこでストレスと溜めてしまうと、体調不良につながる場合もあるため「色んな立場の人がいかに助け合っていくか」が大切だ。

避難所となる施設の管理は行政が担当するが、実際の生活は「生活している皆さんが、助け合い、受け身ではなく自分たちで気づいたことを変えていけると良い」と横田氏。例えば、避難所では「トイレが汚い」という苦情が上がることが多いが、当番を決めて掃除を交代で行うだけで生活のストレスが軽減されることもあるそうだ。

同氏は自宅から移動する際に持っていくと役立つものとして、スリッパのほか座布団など布団の代わりになるものや「おくすり手帳」を挙げる。災害時には病院や薬局がなかなか再開しないことも多いが、おくすり手帳があれば看護師の巡回の際などに自分の状態を相談しやすくなるという。

薬は各方面からの支援物資に含まれていることが多いが、必要としている現場にまで届かないこともあり、自分の必要としているものは説明できるようにしておくと良いようだ。

また災害ボランティアの間にはネットワークがあり、ある避難所にないものが別の避難所で見つかり届けてもらえるケースもある。災害支援経験が豊富な横田氏は「役所の担当者だけでなく、ボランティアの人にも困ったことは相談してみては」とアドバイスする。

衛生用品とトイレの備えは必須

災害時にいかに被害を少なく抑えるかという"減災"を提唱する「減災塾」は、災害時に自宅から避難する際に戸締りだけでなくブレーカーを落とすことを忘れないように呼びかける。

震災時には目に見えないところで断線しているケースが多く、ブレーカーを落としておかないと電気が復旧した際に通電火災が発生する可能性がある。実際に阪神淡路大震災で起こった火災のうち、かなりの件数がこの通電火災だったと減災塾の担当者は説明している。

この担当者によると、避難所生活では「衛生用品も、あるとお互いの生活が楽になるグッズ」だと説明する。狭いスペースで多くの人が共同生活する避難所では、ある人の体臭が他人に影響を与え、そのことによって体調不良を起こしてしまう二次災害が起こる例がある。そのため、シャワーに入れないときでも体を清潔に保てるボディペーパーなどは重宝するとのことだ。

こちらは自宅避難の場合だが、日頃の備えとしては災害用トイレ用品もストックしておけると安心だ。

今回の北海道胆振東部地震のように、ある地域で液状化が起こり下水関係のライフラインがダメージを受けると行政から「排水禁止」の通達が出されることがある。自宅では水が出ても水を流した先で汚水が溢れ出てしまうため、トイレの使用が制限されてしまうのだ。そのため「トイレ関係の備えは十分にストックしておくべきだ」と話す。

ほかに日頃は簡単に手に入る一方で災害時にはストックがすぐに底をつく紙類や、電池・懐中電灯なども家に備えておこう。

ペットは一緒に避難所に連れていく

災害時に家を離れる際にはまず一度ペットを同行して避難所まで一緒に行くことが大切だと強調するのは、兵庫県動物愛護センターだ。

東日本大震災時にはペットが残された家が帰宅困難地域に指定され、そのまま長期間にわたり置き去りにされてしまった犬や猫が多かった。その後、一時帰宅が認められてもすでに命を落としていたり別の場所へ移り住んでしまったりする例があったため、同センターでは「ペットも家族の一員なので、一度はペットを連れて避難所に行こう」と啓蒙している。

ペットを伴う際には、ケージに入れて普段食べ慣れてるエサを3~5日分と水、遊びなれているおもちゃなどを持っていくと良いそうだ。「理想を言うと、人間と同じようにペット用の避難袋を準備しておくと良いですね」とのこと。

こうした環境で人間もペットもストレスなく生活するためには、普段からケージトレーニングを行い狭い環境でも大人しく出来るようにしつけておくことが大切だ。

ただ様々な人が共同生活を送る避難所では、動物の嫌いな人も動物アレルギーを持っている人もいることが予想される。そのため一時的に避難し自宅に二次災害がないとわかった場合には、ペットだけ先に返してあげるのも良い方法だ。

人間が生活するインフラが復活していない場合は、避難所で生活する飼い主がその都度世話のために家に戻ってあげることで、他の避難住民との摩擦を避けられるほかペットも住み慣れた環境で生活することができる。

知っておくと便利な役立ちリンク集

◆災害時に開放される無線LAN「00000JAPAN」
http://www.soumu.go.jp/menu_kyotsuu/important/kinkyu01_000125120.html

◆厚生労働省による健康管理に関するガイドライン
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000001enhj-att/2r9852000001enj7.pdf

◆断水や停電時のトイレの流し方(TOTO)
https://jp.toto.com/support/emergency/dansui_teiden/dansui.htm

◆スマートフォンのバッテリー節約方法
◆停電発生時に明かりを確保する方法
◆硬貨をハサミ代わりに使う方法