首を痛め2試合欠場したブランクを感じさせない強さを、先週の「パナソニックオープンレディース」で西郷真央が見せつけた。最終日のスタート時につけられていた2打差を、終盤ひっくり返しての逆転優勝。今季7戦4勝という脅威の成績を残す20歳を、上田桃子らを指導するプロコーチの辻村明志氏はどう見たのか。
この副賞はうらやましい…【大会フォト】
■ラフからでもチャンスにつける技術は圧巻
先週、上田のキャディを務めた辻村氏は、初日、2日目と同組だった西郷の強さをロープ内で体感することになった。ティショットについては「パラついてました。滑るショットもあり、西郷さん自身も50点以下、と感じていたのではないでしょうか」と評価。決して完璧だったというわけではなく、故障の影響も感じ取ることができた。
実際に西郷は、第2ラウンド後の会見で「ティショットが(ミスの)許容範囲を超えることが何度かあった。修正するポイントを見つけようとしてるけど、なかなか…」と話していた。その2日目までのフェアウェイキープ数は28ホール中16ホールで、率にして57.1%と決して高い数値とは言えない。
ただ、それ以降のプレーは優勝に値するものだった。まず目を奪われたのが、ラフからのショット。最終日こそフェアウェイキープ数を14ホール中12ホールまで上げてきたが、2日目まではラフからグリーンを狙う…という場面が少なくなかった。ただその2日間は、ともに16ホールでパーオンに成功。ティショットで負ったビハインドを感じさせない数値といえる。
「西郷さんは、ラフからでもカット目にクラブを入れて、高く上がるフェードボールを打てる。これにより最少のランでボールを止めることができます。このラフからでもグリーンでしっかりと止める技術が素晴らしかった」
これは、さらにラフがさらに伸びる夏場になるとより効いてくる。体さえ問題なければ、その活躍が当分続くことも予感できるショットの数々を見た。
■小技もバツグン…プレー姿にもスキはなし!
さらに辻村氏が注目したのが、グリーン上のプレー。「2日間まじまじと見させてもらいましたが、出球、ボールの回転が素晴らしかったです。西郷さんはクロスハンドで、32インチと短いパターながら、下になる左手の甲にブレが見えず、しっかりとフェース面を管理していました。つかまったボールが、フェースにしっかりと乗るから、キレイな回転の球が出ていくんです」。
浜野GCのグリーンはアンジュレーションに富んでいるものの、しっかりと、いい回転のボールを打てばイレギュラーは起こりづらい仕上がり。最終日の前半こそバーディパットが一筋決まらず天を仰ぐシーンも目立ったが、不要なロスもなかった。ここにも4勝目の要因が見てとれる。
これに加え小技の精度も光る。77.7778%のリカバリー率、サンドセーブ率でツアー1位に立つなど、守備面でもスキがない。「とにかくプレースタイルが落ち着いている。ミスが出ても切り替えが早く、冷静に対処できるんです」。たまにグリーンを外した時でも、涼し気に寄せてパーを拾う姿は、とてもプロ3年目の20歳とは思えない。
最終日の15番パー4では、“逆転ホームラン”ともいえる起死回生のショット・イン・イーグルも飛び出した。西郷は単独トップに躍り出たこのショットを「ラッキー」と振り返ったが、辻村氏の目には「右ピンでフォロー風のなか、ハイカットのボールが生み出したスーパーショットでした」と、特性が生きた一打という風に映った。
「“賞金女王のマジック点灯”。そう言っていいほどのプレーを続けていますね」。まだシーズンが開幕してからわずか9試合だが、辻村氏にこう言わせるほど、内容・結果ともに充実のシーズンを西郷は送っている。
解説・辻村明志(つじむら・はるゆき)/1975年9月27日生まれ、福岡県出身。ツアープレーヤーとしてチャレンジツアー最高位2位などの成績を残し、2001年のアジアツアーQTでは3位に入り、翌年のアジアツアーにフル参戦した。転身後はツアー帯同コーチとして上田桃子、松森彩夏、吉田優利などを指導。様々な女子プロのスイングの特徴を分析し、コーチングに活かしている。プロゴルファーの辻村明須香は実妹。ツアー会場の愛称は“おにぃ”。
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