相場展望4月28日 米金融引締め効果:ナスダック主導で下落する米国株 市場の特徴:好材料には小さく、悪材料に大きく反応

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■I.米国株式市場

●1.NYダウの推移

 1)4/25、NYダウ+238ドル、34,049ドル(日経新聞より抜粋)  ・中国では上海市以外でも都市封鎖への警戒が強まり4/25上海総合指数は急落した。中国景気減速懸念から幅広い銘柄が売り先行し、一時▲488ドル下げる場面があった。リスク回避で安全資産とされる米国債が買われ、米長期金利は一時2.76%に急低下。  ・売り一巡後は米長期金利の低下を支えに、足元で下げが目立ったハイテクを中心に買いが入り相場を押し上げた。マイクロソフト、アップル、セールスフォースが上昇した。  ・米原油先物が大幅下落し、ガソリン高で消費圧迫警戒感が和らぎ消費関連も買われた。

【前回は】相場展望4月21日号 5月格言「セル・イン・メイ」、決算イベントで資金化 FRBのQT、悪い円安の織込みは、これから

 2)4/26、NYダウ▲809ドル安、33,240ドル(日経新聞より抜粋)  ・中国での新型コロナ感染拡大を受けた都市封鎖拡大が北京市にも及ぶ可能性が高まり、世界景気の減速やサプライチェーン(供給網)混乱への懸念が強まった。中国売上比率の高いナイキ▲6%、ボーイング▲5%、テスラ▲12%下げた。  ・大手ハイテク企業決算を見極めたい投資家も多く、アップル・マイクロソフトが下落。  ・高インフレに対応するために米連邦制度理事会(FRB)金融引締めペースを速めることで景気が冷え込むとの警戒感が相場の重荷となり、ビザなど消費関連が下げた。  ・NYダウを構成する30銘柄が全て下げ、ナスダック総合の下落率は今年最大だった。

 3)4/27、NYダウ+61ドル高、33,301ドル(日経新聞より抜粋)  ・好決算を発表した銘柄が買われ、相場上昇を支えた。NYダウが前日▲809ドル安し、短期的な戻りを期待した買いが入りやすかった。  ・ただ、米金融引締めや、世界景気の鈍化への警戒感は強い。  ・1〜3月期決算が市場予想を上回ったビザは+6%高、マイクロソフトは+5%高と、2銘柄でNYダウを+170ドル押し上げた。ハイテクは売りが出やすい地合だった。  ・中国政府の景気刺激策期待で上海株式市場が反発したことで、ナイキやキャタピラーなどが上昇するなど米国株にも買いが波及した。

●2.米国株:

 (1)米金融引締めの負の効果により、ナスダック総合指数主導で下落する米国株

 (2)最近の金利低下は一時的で、金利は再び上昇する  1)米国株は、ハイテク株の多いナスダック総合指数が主導して大幅下落した。   要因は、(1)金利上昇で、高PERのハイテク値嵩株が相対的な割高感が出た。       (2)半導体価格にピークアウト感が出始めて、株価に波及した。       (3)世界経済に景気減速がみられる。   ・ロシア侵略  : ウクライナ情勢の長期化と紛争国拡大の恐れ   ・中国の感染拡大: 都市封鎖で経済後退、サプライチェーン混乱   ・原油価格高騰 : コスト上昇・値上げ・消費減退   ・インフレ加速 : 消費減退   ・金融引締め  : 金利引上げ、特にQT(FRB資産縮小)の悪影響

  2)米金利低下は、警戒感から株売り⇒相対的に安全資産の債券買い、により起きた現象。   ・従って、米金利低下は、金融緩和政策によるのではなく、一時的なもの。むしろ、株式市場からの資金流出と受け止めるべきで、より警戒したい。

●3.米1〜3月期GDP、マイナス成長を警戒(フィスコ)

 1)米商務省発表の3月貿易収支は▲1,253億ドル、予想に反し拡大し過去最大を記録した。原油などを含む燃料価格の上昇が影響し、輸入は+11.5%、輸出は+7.2%となった。

 2)赤字の予想外の拡大は1〜3月期国内総生産(GDP)の成長を抑制する。エコノミストの予想は、前期の+6.9%から+1.0%へ成長鈍化を予想している。万が一、マイナス成長に落ち込んだ場合は、景気後退懸念が強まり、ドル高が減速する。

●4.米連邦住宅金融局(FHFA)発表の2月住宅価格指数は過去最大の伸びを記録(フィスコ)

 1)2月は前年比+20.20%と、予想+19.20%・1月+18.94%から予想以上に拡大した。

●5.マスク氏、ツイッター社を440億ドルで買収契約締結、非公開化へ(ロイター)

●6.米3月中古住宅販売成約指数は前月比▲1.2%、予想▲1.0%、5ヶ月連続マイナス(フィスコ)

●7.ロシア、ウクライナ関連

 1)ロシアは、天然ガス供給停止を4/27から実施とポーランドとブルガリアに通告(毎日新聞)

■II.中国株式市場

●1.上海総合指数の推移

 1)4/25、上海総合▲158安、2,928(亜州リサーチより抜粋)  ・新型コロナ感染拡大の影響が懸念される流れとなり、心理的節目3,000を割り込む。  ・感染が多発した北京市朝陽区では、検査を実施、厳格な都市封鎖に入る恐れがある。政府が「ゼロコロナ」政策を堅持する中、行動抑制の長期化で国内経済が停滞すると不安視、資金流出も警戒、対米ドルの人民元相場は元安基調を強め低水準で推移。  ・上海総合指数は中盤から一段安にとなり、ほぼ全セクターが値下がりした。  ・業種別では、景気動向に敏感な素材が安く、ITハイテクも急落、金融も下げた。

 2)4/26、上海総合▲42安、2,886(亜州リサーチより抜粋)  ・新型コロナ感染対応の強化が警戒される流れで続落、約1年10ヶ月ぶり安値水準。  ・感染が多発した北京市朝陽区ではコロナ検査実施、他の11区でも検査実施を発表。結果次第では、上海市と同様に事実上の都市封鎖に突入する恐れがある。  ・中国人民銀行は4/26、穏健な金融政策で実体経済を支える方針を改めて強調し、新型コロナ感染拡大で打撃を受けた中小企業を支援する方針を示した。  ・業種別では、非鉄・鉄鋼の下げが目立ち、保険・証券・ハイテク・不動産も安い。

 3)4/27、上海総合+71高、2,958(亜州リサーチより抜粋)  ・中国の経済対策への期待感が相場を支える流れとなった。  ・政府は経済成長を促し、内需を拡大するためインフラ建設を強化する方針との報道。  ・このところ上海総合は急ピッチで下落し、前日は1年1ヶ月ぶりの安値に落ち込み、値ごろ感から買われ一段高となった。  ・業種別では、ゼネコン・建機などインフラ関連の上げが目立ち、ハイテクも急伸。

●2.「首都防衛」に向け緊張、北京で大規模PCR検査、市幹部「極めて重要な時期」(読売新聞)

■III.日本株式市場

●1.日経平均の推移

 1)4/25、日経平均▲514円安、26,590円(日経新聞より抜粋)  ・米国市場の大幅安と中国経済減速懸念も意識され、運用リスクを回避したい投資家の機械・鉄鋼・海運など景気敏感株の売りが膨らみ、下げ幅は一時▲600円を超えた。  ・値ごろ感から買いが入り、下げ渋る場面もあったが、米連邦制度理事会(FRB)が積極的な金融引締めに動くとの見方が根強く、米株価先物が軟調に推移した。  ・決算発表で下方修正の清水建が大幅安となり大林組・鹿島などゼネコンに波及。ソフトバンクG・ファストリの下げが大きく、2銘柄で▲208円押し下げた。

 2)4/26、日経平均+109円高、26,700円(日経新聞より抜粋)  ・前日、米株式市場でハイテクを中心に買われた流れが波及、また2営業日で▲1,000円近く下げたことも、自律反発狙いの買いが入り、一時+200円を超えた。  ・ソフトバンクG・エムスリーなどの値嵩ハイテクを中心に見直し買いが入った。  ・引けにかけ、企業の2023年3月期業績見通しが例年以上に保守的な内容になるとの見方から、伸び悩む場面が目立った。住友鉱山・DOWA・任天堂・中外薬が安い。

 3)4/27、日経平均▲313円安、26,386円(日経新聞より抜粋)  ・米株式市場が大幅安、なかでもナスダック総合が▲4%近く下げる流れを受け、中国でも都市封鎖拡大で世界景気の減速やサプライチェーン(供給網)が混乱するとの懸念が強まり、東京市場でも運用リスクを回避する売り優勢となり、一時▲600円を超えた。その後、上海総合などが高く推移したこともあり、下げ渋った。  ・決算発表したファナック・キッコーマンが急落し、第一三共・海運が買われた。

●2.日本株:5月決算イベントで着目するのは、2023年3月期業績見通しだが慎重な様相

 1)5月相場は、決算発表イベントで好材料に期待あるが、来期見通しは強気になれない。理由は、企業決算発表は、2022年3月期は好調・回復実績を示すと思われるが、2023年3月期はコスト高要因もあり、地政学要因、中国経済の後退と供給網の混乱もあり、企業は例年以上に慎重な業績見通しを出すと思われる。

 2)短期反騰の可能性があるが、米金利上昇とQT(資産縮小)による金融引締め効果で、淡い期待も現実に引き戻されそうだ。米金融引締めが日本株にも波及する、ことに留意したい。

●3.総務省4/26発表、3月失業率2.6%に改善、有効求人倍率1.22倍(ロイター)

●4.企業動向

 1)アサヒ  スーパードライなど162品目を10/1から6〜10%値上げ(FNN)

●5.企業業績

 1)関西電力  23年3月期▲750億円の赤字予想(日経新聞) 2)日野自動車 22年3月期▲847億円過去最大の赤字、データ不正響く(時事通信)

■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)

 ・4661 オリエンタルランド  業績回復期待。 ・5857 アサヒ        業績堅調、値上げ効果期待。 ・9616 共立メンテ      黒字転換期待。

執筆者プロフィール

中島義之 (なかしま よしゆき)
1970年に積水化学工業(株)入社、メーカーの企画・管理(財務含む)を32年間経験後、企業再生ビジネスに携わる。現在、アイマックスパートナーズ(株)代表。メーカーサイドから見た金融と企業経営を視点に、株式含む金融市場のコメントを2017年から発信。発信内容は、オープン情報(ニュース、雑誌、証券リポート等々)を分析・組み合わせした上で、実現の可能性を予測・展望しながらコメントを作成。http://note.com/soubatennbou