Amazonの完全ワイヤレスイヤホン「Echo Buds(第2世代)」が、2月24日から出荷開始されました。価格はUSB-C充電ケース付きで12,980円、ワイヤレス充電対応ケース付きで14,980円。

Echo Buds(第2世代)のブラック


Echo Budsシリーズは米国で既に展開されていた製品で、このEcho Buds(第2世代)は2021年から販売中。今回、新たに国内市場に投入されたかたちです。さっそく使い勝手を試してみました。

Echo Buds(第2世代)のパッケージ


“耳に収まるサイズのスマートスピーカー”

音声アシスタントのAlexaを呼び出せる完全ワイヤレスイヤホンは、既に多数のメーカーから登場していますが、“純正品”であるEcho Buds(第2世代、以下Echo Buds)がようやく国内でも利用可能に。Echoの名を冠しているだけあってAlexaをハンズフリーで呼び出せ、「耳に収まるサイズまで小さくなったスマートスピーカー」という趣があります。カラーはブラックとグレーシャーホワイトの2色。今回はブラックを試用しました。

プラスチック素材ながら外側はさらりとした手触りで、耳に当たる側はツヤのあるキレイな仕上げが目を惹きました。高級スピーカーなどで見かける“ピアノブラック”感があって、安っぽさを感じさせない作りです。ちなみに、イヤホン本体には耳への付け外しで音楽を再生/停止したり、電源オン/オフする装着検出センサーが備わっています。

耳に当たる側は“ピアノブラック”感のある仕上げで、安っぽさは感じない


このまま耳にはめて使うこともできそうですが、標準で付いているMサイズのイヤーピースに加えてS/L/XLの交換用イヤーピースと、イヤホンが耳から外れにくくなるように耳の中で支える3つのウイングチップがパッケージの奥底に入っています。

Alexaアプリでの初期設定時にもイヤーピース・ウイングチップに関する案内画面が出ますが、先に耳にフィットするものを選んで付けておいても良いでしょう。ラバー素材のおかげで、指でつまみやすくなります。

ウイングチップを装着したところ


Echo Buds(第2世代)の付属品。充電用USB-Cケーブル(左)や3つのウイングチップ(右上)、S/L/XLの交換用イヤーピース(右下)を同梱


元々のサイズが大きいこともあって、他の完全ワイヤレスよりはいくぶん大柄に見えますが、筆者の耳には問題なくフィットしました。耳の小さい人にはやや不向きかもしれません。

外側はさらりとした手触り。ウイングチップを付けると、付け外しのときに落としにくくなる


完全ワイヤレスイヤホンのサイズ比較。左からEcho Buds(第2世代)、AirPods Pro、COTSUBU for ASMR


ウイングチップを付けた状態で充電ケースに収まる


見た目は一般的なBluetoothイヤホンと変わりませんが、初期設定にはiOS/Android用の「Amazon Alexa」アプリとAmazonアカウントが必要です。イヤホン側のファームウェアアップデートの都合もあり、初回のみAlexaアプリが必須になっているとのこと。

試しにAlexaアプリを使わず、スマホのBluetoothの設定画面から直接Echo Budsと最初のペアリングを試みましたが、「Alexaアプリを使って設定して」といった趣旨のアナウンスに阻まれて上手くいきませんでした(初期設定が終わった後は、Alexaアプリなしでペアリング可能になります)。

Alexaアプリで初期設定を行う


パッケージの裏にもAlexaアプリが必要であることを明記


セットアップは他のEchoシリーズと同様に、Alexaアプリの「デバイス」タブの右上にある[+]ボタン、[デバイスを追加]とタップし、一覧リストから[ヘッドホン]を選ぶと、ペアリング待ち状態のEcho Budsが現れます。

Alexaアプリの「デバイス」タブの右上にある[+]ボタン、[デバイスを追加]と進み、一覧リストから[ヘッドホン]を探す


この後は、画面の指示に従ってイヤーピースのフィットテストを行い、左右イヤホンのタッチセンサーの操作方法など確認。「Alexaで探す」の設定をしたり、「Alexaワークアウト」でトレーニング用の設定を登録したりすればセットアップ完了です。

Alexaアプリが必須な割には、初回セットアップの細かい案内が同梱されていないのが気になります。既にEchoシリーズを使いこなしている人や、ガジェット慣れしている新しもの好きの人には難しい作業ではありませんが、慣れていない人にはちょっとハードルが高いように感じられました。

ウイングチップを付けるよう案内される


イヤーピースのフィットテスト。スキップして後からでも行える


筆者の耳は、どのイヤーピースとの組み合わせでも、右のみフィット状況が「普通」だった(左は「最良」と判定された)


Alexaとの連携が完了してしまえば、基本的にはAlexaアプリを立ち上げなくても各種操作ができます。Amazon Musicなどの音楽再生はもちろん、ニュースやAudibleの読み上げ、設定済みのAlexa対応家電を声で操作するといったことも行えます。また、Alexaワークアウトを設定しておけば、Echo Budsに「ワークアウトをはじめて」と呼びかけるだけで、運動した時間や移動した距離、消費カロリー、歩数などの情報を記録可能です。

Echo Budsをペアリングした状態の、Alexaアプリのホーム画面


内蔵マイクを使い、スマートフォンと組み合わせてのハンズフリー通話に対応。さらにAlexaだけでなく、SiriやGoogleアシスタントの起動もサポートするなど、機能面では至れり尽くせり。

Echo Budsならではの細かいユニークな機能として、内蔵マイクをAlexaアプリやイヤホンのタッチ操作でオフ(ミュート)にできるようになっています。マイクを“明示的にオフにできる”のは、完全ワイヤレスイヤホンでは珍しい機能ですが、スマートスピーカーのEchoシリーズではおなじみであり、プライバシー保護対策を徹底したことの表れと言えるかもしれません。

マイクをミュートにできるのが面白い


音を聴いてみる。“据え置き”Echoとの連携は便利?

音楽再生に関しては、スマートスピーカーのEchoシリーズがあれば「アレクサ、続きをかけて」と話しかけるだけで、外出先でEcho Budsで聞いていた楽曲の続きを自宅のEchoデバイスで再生可能。逆に自宅のEchoデバイスで聞いていた楽曲の続きを、Echo Budsに引き継いで外出先でも聞けるとのこと。筆者の環境でテストしてみたところ、Alexaに頼んで再生した楽曲であれば、上記の「続きをかけて」が実現できました。

一方、Amazon MusicやApple Musicの音楽をAlexa経由でなく、各サービスのアプリから操作してEcho Budsで聞いている場合、続きを自宅のEchoデバイスで再生させることはできませんでした。Alexaに任せず自分で選んで聞いている曲を、Echo Buds→自宅のEchoデバイスへと引き継いで聞くことはできないのかもしれませんが、必ずしもAlexaにすべてお任せで音楽を聴きたいわけではない筆者としては改善を望みたいポイントです。

音質もチェックしてみました。5.7mmのダイナミック型ドライバーユニットを搭載し、Amazonによれば「明瞭でバランスのとれたサウンド」が楽しめるとのこと。

耳への装着具合をしっかり確かめた上でさまざまな音楽を聴いてみたところ、ボーカルはやや引っ込み気味ですがJ-POPや洋楽、アニソンなどジャンルを問わず、そつなく鳴らす印象でした。宇多田ヒカル「First Love(Remastered 2014)」のようにしっとり聞かせる曲よりは、フィロソフィーのダンス「ダブル・スタンダード」のような、リズムがハッキリした元気のいいサウンドが似合うようです。

Amazon Music Unlimitedでは高音質な楽曲に加えて「空間オーディオ」対応の楽曲もラインナップしていますが、Amazonの担当者に確認したところ、Echo Budsは空間オーディオには非対応とのこと。ただ既報の通り、iPhoneやAndroidスマートフォンと一般的なイヤホン/ヘッドホンの組み合わせで空間オーディオコンテンツを楽しめるので、「(ヘッドトラッキングなどの)特別な対応はしていない」という意味合いだったのかもしれません。実際、Echo Budsで試したところ、Dolby Atmosや360 Reality Audioの楽曲を立体的なサウンドで楽しめました。

NC/外音取込は実用的。ワイヤレス充電がイイ

Echo Budsでは、Amazonが独自でカスタム設計したノイズキャンセリング(NC)技術を搭載し、外側の2つのビームフォーミングマイクと内側のマイク1基を使うハイブリッド方式を採用しています。NC効果は決して強くはなく、静かな環境ではホワイトノイズがやや耳につきますが、おおむね実用的なレベル。イヤホンを耳に装着したまま外の音を聞けるアンビエントサウンド機能も利用できます。

Echoシリーズの製品らしく、「アレクサ、ノイズキャンセリングをオンにして」、または「アレクサ、アンビエントサウンドをオンにして」と話しかけるとこれらの機能を切り替えて利用できます。もちろん、イヤホン本体をタップすることでNC/アンビエントサウンドを切り替えることも可能です。なお、イヤホンを装着したときの密閉感はまずまずですが、個人的には「耳にはまっている感」が強く、適度なタイミングで付け外ししながら使いたいと感じました。

初期設定にはAlexaアプリが必要ですが、一度設定を終えると充電ケース背面のボタン長押しでBluetoothペアリングモードに入れるようになります。Alexaアプリが入っていないスマホやPCとペアリングしてもAlexaの音声サービスは利用できませんが、一般的な完全ワイヤレスイヤホンとして使えました。

AmazonではEcho Budsの対応コーデックを公表していませんが、手持ちのスマホで試した限りではSBC/AACの2つをサポートするようです。ABEMAやYouTubeなどの動画再生時はリップシンク(映像と音声の同期)のズレがわずかに見られますが、気になるほどではありません。ただし、「Smash Hit」という3Dアクションシューティングでは体感上の遅延が大きかったので、ゲーム用途には向かなさそうです。

手持ちのAndroidスマートフォンではAAC接続が選べた


Macとペアリングして、一般的な完全ワイヤレスとしても使えた


バッテリー持ちに関しては、1回の充電で最大5時間利用でき、充電ケース込みで最大15時間音楽を再生可能(NCとAlexaのハンズフリー機能がオンの場合)。NC/Alexaハンズフリーがオフの場合はイヤホン単体で最大6.5時間、充電ケース込みで最大19.5時間となります。15分間の充電で最大2時間の音楽再生が行える急速充電にも対応しています。

基本的には背面のUSB Type-C端子に有線接続してチャージしますが、ワイヤレス充電ケース付きモデルであればQi対応のワイヤレス充電パッドに乗せるだけで充電できて便利です。

充電ケースの裏側。USB Type-C端子とペアリングボタンを備える


さらりとした仕上げの充電ケース


Qi対応のワイヤレス充電パッドに乗せるだけで充電できる


Echo Budsを入れた状態でケースを開くと、各イヤホンの前にあるLEDライトが光ってバッテリー状況を知らせます。40%以上であれば緑、それ以下では黄色に光り、残量がわずかになると赤になります。Echo Budsを装着して「アレクサ、バッテリーの残量は?」と話しかけると、左右イヤホンと充電ケースのバッテリー残量を音声で確認できました。

左右イヤホンの前にあるLEDライトが光り、おおよそのバッテリー残量が分かる


充電ケースの裏側にはさり気なくAmazonの“スマイルマーク”があった


高コスパなNC完全ワイヤレス。機能改善にも期待

Echo Budsを試用してみると、イマドキの1万円台の完全ワイヤレスイヤホンに求められるであろうNC/外音取込やスマート機能などを盛り込みながら、Alexaによるシームレスな機能連携もしっかりサポート。コストパフォーマンスはよく、外に連れ出せる「耳穴サイズのスマートスピーカー」としての完成度は高いといえます。



一方、Alexaを使わないユーザーの視点でEcho Budsをじっくり見ていくと、目立ったユニークな機能があるわけではないので、同じ完全ワイヤレスでも別の選択肢を選んだほうが幸せになれるかもしれません。

個人的には、初回セットアップの説明の少なさや、音楽再生時のEcho Budsとスマートスピーカーの連携が特定の状況で機能しない点も気になりました。今後の改善に期待したいところです。

ともあれ、Echo Budsはこのクラスの完全ワイヤレスとしては機能が充実していますし、自分のニーズにピッタリはまるのであれば十分活用できるイヤホンなので、「手ごろな完全ワイヤレスが欲しいけれど、選択肢が多すぎてどれを選べば良いのかわからない」という人には、「とりあえずコレ買ってこの記事を読んでおけば使い始められるから大丈夫!」と太鼓判を押せます。「Amazonのサービスをよく利用する」という人にも向くでしょう。Amazonデバイスは大規模なセール時に値下げされることが多いので、そういった機会を狙っているガジェット好きにもオススメです。