ケンシロウが20-21年シーズンを振り返る!(撮影:福田文平)

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昨年「フジサンケイクラシック」で2位に入るなどの活躍を見せて初シードを獲得し、今季からブラックアンドホワイト ホワイトラインとウェア契約を結ぶなど初優勝が期待される選手の一人である池上憲士郎。有名なアニメから名付けられた覚えやすい名前を持つ29歳は、ゴルフに対して一家言ある選手でもある。そんな“ケンシロウ”に自身のスイングやセッティングの解説、持ち球の打ち方まで様々な質問をぶつけてみた。今回は初めてシードを獲得した20-21年シーズンについて。
“ケンシロウ”が一躍名前を世間に売ったのが2021年の「フジサンケイクラシック」だった。ウェイティングで出場していた若武者は、同級生で2年連続賞金王の今平周吾に一歩も引かないゴルフを展開。最終的に2位タイに終わったが、人気漫画の主人公と同じ覚えやすい名前の29歳の名はツアーに知れ渡った。
この活躍で賞金ランキングも一気にシード圏内入り。「周りの目は、多少は変わったのかなとは思います」という周囲は元より、「これで一気に目標というかシードが見えた」と自身もスイッチが入る。だが、その後がなかなか続かない。そしてシード獲得へ予断を許さない状況で迎えたのが「カシオワールドオープン」。ケンシロウはこの試合を富士桜での戦いを差し置いて、「シーズンで一番印象に残っている試合」として挙げている。
「フジサンケイもそうですけど、カシオは…最後だったので。ここでシードを獲れなかったら結局フジサンケイの2位も良い試合だったね、惜しかったねで終わってしまう。シードを獲れたからようやく1年を振り返れる」
そのカシオを一言でいえば「良く辛抱した」大会だった。終盤戦になるにつれてプレッシャーも多くなっていく中で、得意のアイアンをはじめ自分の調子は上がってこない。それでも1打の重みがのしかかってくる。
「(シードのことは)意識してはいないんですけど、でもやっぱり頭のどこかにあるので、ちょっとしたミスとかで結構グッとくる。なかなか前半戦みたいに受け止められなかったですね」
なんとか、しのいでしのいで11位でフィニッシュ。自力でシードをつかみ取った瞬間は、喜びよりも安どが先に来た。「良く辛抱できたなと思いますね。最後まで。めちゃくちゃホッとしました」。すぐさま母に報告したところ「良かったね。お疲れ様」との声をもらった。息子の初シード獲得にしては意外と淡々としたように感じるが、「多分途中経過とか見て分かっていたんだと思います」ともちろん一番気にかけていた。
シード獲得につながった“辛抱”。これは19年のファイナルQTでの教訓が非常に生きた。元々入り込みやすい性格のケンシロウだが、このときは「ラフな気持ちでやってみよう」とあえて集中しすぎないように心がけた。「今までは集中しすぎて良くない方向にいくこともあった。でも、適当にじゃないですが、ラフにやったら結果がついてきてくれた。じゃあ、もうちょっと続けてみようと思いましたね」。心構え1つで、気持ちの切り替えや我慢がより効くようになった。これがシーズンで一番成長した部分だった。
とはいえ、まだまだだと感じることも多かった。「シードは獲れたんですが、勝てるのかと言われたらまだ勝てるような準備ができていないなと感じました」。よりレベルの高い環境で頂点を目指すなかで周囲との差は如実に出た。
それは高校の先輩・木下稜介、そして総合力を示すメルセデス・ベンツトータルポイントランキングで1位となった大槻智春と同組でラウンドした「ANAオープン」のムービングデーにより鮮明となる。
「2人はやっぱり3日目にビッグスコアを出して一気に上位に行ける。その差は何だろうと思ったら、いいスコアを出すにはパッティングを入れ切らないといけない。パッティングは僕の課題なのですが、木下先輩はしっかり入っていたし、大槻さんはショットメーカーだけどトータル的に仕上がっている。予選落ちが無くなったタイミングでグッと伸ばしきれる力が必要かなと思いました。これは気持ちの部分が大きい。そっちが技術を引っ張っていく感じですかね」
耐える力は身についた。次は攻め切る力を―。その先に初優勝という星が見えてくる。
池上憲士郎(いけがみ・けんしろう)
1992年4月17日生まれ、岡山県総社市出身。祖父の影響でゴルフを始め、ジュニア時代から様々な大会で活躍。高校は強豪ゴルフ部のある香川西へ進学、木下稜介の1学年下で腕を磨いた。大学は名門・東北福祉大へ。ここにも1学年上に松山英樹という最高の手本があった。14年にプロ転向、20-21年シーズンは21年の「フジサンケイクラシック」で2位に入るなどの活躍を見せて初シードを獲得した。憲士郎の名は漫画「北斗の拳」の主人公が由来。180cm/76kg
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