原田香里が女子プロの結婚・出産について語る(撮影:ALBA)

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2021年3月まで日本女子プロゴルフ協会(JLPGA)の理事を務め、いまは女子ゴルフ界発展のため尽力し、自身のゴルフ向上も目指す、女子プロゴルファーの原田香里。まだまだこれからと話すゴルフ人生、そして女子ゴルフ界についての未来を語る。
ゴルフを愛するみなさん、こんにちは。寒い日が続いていますが、お元気でしょうか。
2022年2度目の連載は、女子プロゴルファーの結婚をテーマにお届けしたいと思います。
昨年は、結婚ラッシュという印象がある1年でした。個人スポーツのゴルフでは、有名選手の結婚がメディアで報じられたり、本人が公表したりしなければ、結婚しても表に出ない場合も少なくありません。SNS全盛期の現在では、本人が公表してファンを含めた周囲が祝福。それをメディアが取り上げるということの方が多い気がしますが…。
そんな中で、昨年早々に結婚を発表したのが大西葵さん。同じプロゴルファーの伊藤有志さんとの結婚を公表し、9月には出産というおめでた尽くしの1年でした。
その後、表に出ているだけでも渡邉彩香さん、上田桃子さん、宮里美香さん、永峰咲希さん、有村智恵さん、亀田愛里さんたちが、結婚しています。ほかにも私が知らないおめでたい話もあることでしょう。
アスリートの世界に限らず、結婚してからも女性が仕事を続けることが日本でも珍しくなくなってきました。今では信じられない話ですが、女性が結婚したら会社を辞めるのが当たり前のように言われ、“寿退社”などという言葉も飛び交っていましたね。
時が流れ、結婚してから女性が仕事を続けるのは、ごく普通のことになりました。どのスポーツでも、現役女性アスリートの結婚は増えています。昔は女子プロゴルファーが結婚すると「家事は誰がするの?」などという質問がメディアの方から出ていたそうです。家事は女性がするのが当然、と考えられていた時代だったからでしょうか? さすがにイマドキそんな質問が出ることはないと思いますが…。私も、36歳の時に結婚しています。当時はシード選手としてツアーを転戦していましたので、結婚することに迷いがありました。家庭生活とゴルフを両立できるのか?と。もう昔のことなのであまり覚えていませんが…(笑)。結婚してツアー出場を続けておられる先輩もいらっしゃいましたが、自分自身に置き換えると現実味がない感じでした。
結婚だけならまだしも、その先に出産、育児を考えると、女性の負担が多いのも事実です。育児はとにかく、出産は男性が代わりにするわけにはいかないからです。
体が資本であるアスリートは、タイミングを考えなければならなくなります。出産によるブランクは避けられず、試合でプレーするレベルに体を戻すのには時間がかかるからです。子供を持つか、持たないかという基本的なところに始まり、いつ欲しいかも含めて、パートナーと話し合う必要もあるでしょう。
日本女子プロゴルフ協会(JLPGA)にも産休制度があり、出産する選手も増えました。これからも産休制度についてはもっともっと考えられていくことと思います。
妊娠中に大きなおなかでプレーする選手の姿が見られることも多くなり、出産後、試合会場に子供を連れてくることも増えました。昨年、GMO・インターネットレディース サマンサタバサグローバルカップで優勝した若林舞衣子さんが、2歳になった長男を抱いていた姿を記憶している方も多いでしょう。
このとき話題になったのでご記憶の方もいらっしゃると思いますが、出産後に優勝を経験した選手は若林さんで6人目。意外に少ないのは、環境の影響も大きいと思います。
アスリートとして出産がリスクになること自体は、どうすることもできません。ママとしての時間と、プレーヤーとしての時間のバランスも、それぞれが考えることでしょう。これからは、ママになって試合に出てくる選手が増えてくる可能性もあります。そのとき、安心して子供を育てながらツアーでプレーする環境を整えていくことをさらに考えなければいけない時代になってきています。以前からそれについての話は出ていたのですが、色々な問題があり、なかなか進むことができずにいます。現状では、出産後は、子供を家族に預けて試合に行くか、家族や個人が雇ったシッターさんなどとともに試合会場に子供を連れてくる形をとるしかないと言ってもいいでしょう。ツアー会場ではおむつを替える場所すら毎回、探さなければなりません。
昨年2月に出産した横峯さくらさんは、年内にツアーに復帰しています。彼女は、米ツアーでプレーしている時に子供を連れて転戦する仲間を見て、自分もそうしたいと思ったと話しています。
2019年いっぱいでツアーから離れ、結婚、出産を経験した一ノ瀬優希さんも、復帰を目指してQTに挑んでいます。
結婚、出産をしてツアーに戻ってくる選手が、これからもたくさんいると思います。女性としての様々な選択肢がある中、子供を産んでも安心してプレーできる環境があるのはありがたいことです。よく言われることですが、米ツアーのように、毎週、子供を預けられる場所があるのが理想ですが、もう少し現役中の出産へのハードルが下がるようになれば素晴らしいことですよね。こういうことも含めて、ツアーは変わっていかなくてはいけないと思います。
昨年、結婚した選手たちは、20代半ばから30代半ばまで様々です。これから出産、育児を考えている人も多いことでしょう。その選手たちが、プロゴルファーとしての仕事と子育てを両立できるようにすること。社会が変わりつつある中、女性の“職場”であるツアーもそんな課題に直面しています。
原田香里(はらだ・かおり)
1966年10月27日生まれ、山口県出身。11歳からゴルフを始めると、名門・日大ゴルフ部に進み腕を磨いた。89年のプロテストに合格しプロ転向。92年の「ミズノオープンレディスゴルフトーナメント」でツアー初優勝。93年には「日本女子プロゴルフ選手権大会」、「JLPGA明治乳業カップ年度最優秀女子プロ決定戦」勝利で公式戦2冠を達成。98年には賞金ランキングでも2位に入るなど通算7勝の活躍。一線を離れてからは日本女子プロゴルフ協会の運営に尽力。今年の3月まで理事を務めていた。

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