コロナ禍で急増したコミュニケーション破綻! 負のスパイラルに陥らないために必要な要素とは?

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新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、出社をしない「テレワーク」が急増した。
テレワークの急増により、コミュニケーション不足や破綻が増えているという。

国土交通省はコロナ禍以前からテレワークを推進していたが、今年(2021年)3月に公開した「令和2年度 テレワーク人口実態調査」によると、
「勤務先にテレワーク制度等が導入されている」と回答した割合は38.8%に上り、前年度の19.6%と比べるとおよそ2倍に増えている。

また、同調査の「テレワーク開始時期・満足度・実施意向等(テレワーカー)」では、
約64%がテレワークに満足しており、
約82%が今後もテレワークを継続したい。
このように解答している。

一方で、「テレワークを実施して悪かった点」は、
1位が「仕事に支障が生じる(コミュニケーションのとりづらさや業務効率低下など)、勤務時間が長くなるなど、勤務状況が厳しくなった」が46.7%と圧倒的に多く、
35.2%の「仕事をする部屋や机・椅 子、インターネット環境や、プリンター・コピー機などの環境が十分でなく不便だった」などに10ポイント以上の差をつけた。

注目したいのは1位の「コミュニケーション」の問題だ。
リアルでのコミュニケーションから、ネットを使った遠隔コミュニケーションに変わったことで、コミュニケーション不足や破綻が顕著になってきているようだ。


出典:令和2年度 テレワーク人口実態調査 −調査結果の抜粋−(国土交通省)


以前から、
・ネットでの人物像
・リアルでの人物像
この2つが剥離している人は意外に多い。
コロナ禍となりテレワークが増えたことで、強制的にリアルからネット対応に移行し、コミュニケーション不足や破綻という問題が顕著になってきている。

従来のリアルコミュニケーションで何の問題もなかった人が、ネットではうまくコミュニケーションが取れないという人が増えているのだ。

これはアプローチ方法が異なるとコミュニケーション能力に差が生じるということを意味している。例えば、会話コミュニケーションは得意という人が、必ずしも文字コミュニケーションが得意とは限らないということにも似ているかもしれない。

円滑で正確なコミュニケーションを取るために必要な要素は、様々だ。
・相手のニーズや言いたいことをしっかり聞く(理解する)
・表情から相手の感情を読み取る
・相手を不快にさせない言葉遣い、声の大小
・論理的、建設的な思考と発言
・相手の状況に配慮する気配り
・会話やリアクションのタイミングをとる
・不必要な発言や意見をうまくスルーする

このように他人とのコミュニケーションを取るには意外に多くのスキルが必要となる。

さらに、ネットでのコミュニケーションを不足/破綻させるには、
「記憶力(記録)」という要素が大きく関わっている。

筆者がつい最近、実際に経験したエピソードと共に、記憶力(記録)が人とのコミュニケーションにいかに重要かを考えてみる。


■コミュニケーションにおける記憶力(記録)の大切さ
芸能人、インフルエンサーなどのファンの多くは、自分がその著名人に認知されると嬉しいと感じる人がほとんどだろう。著名人に「覚えてもらえる」ということには、ファンにとって大きな価値があるからだ。

著名人にとっては、ファンとコミュニケーションを取る上で
・ファンを覚える
・ファンとのエピソードを覚えておく
これらのアクションができれば、ファンの信頼度と好感度を得ることができ、円滑なコミュニケーションが取れる。
一方、ファン側からすれば、相手が自分を覚えていてくれたことで、好感度や親密感が向上し、コミュニケーションは円滑になる。

逆に、著名人がファンをまったく覚えていなければ、ファンは大きな失望感を抱き、両者の信頼度や好感度、距離間も遠くなり、コミュニケーションは減少し、不足となり、いずれ破綻してしまう。


人の名前を覚えることが苦手な人もいる


もう少し身近な例をあげると、
接客業や営業などの仕事についても同じことがいえる。

飲食店やコンビニ店員など、馴染みのお客さんの顔やエピソードを、
・覚えている
・覚えていない
どちらが両者間で円滑なコミュニケーションが確立するかは明白だ。

客からすれば、毎日通っているのに、毎回初めてような反応や対応をされれば、親近感や好感は持たれず、コミュニケーションは確立しない。


■記憶(記録)ミスがショッキングな出来事を生む
筆者は、執筆だけでなく、土日祝に開催されるイベントの現場スタッフの手伝いもしている。主な仕事は、設営や撤去、お客様誘導、受付のほか現場スタッフや物品、現金などもある程度管理をしている。ざっくりいえばイベントでの雑用全般を受け持つ裏方ワークだ。

イベント運営している会社のAさんと7月イベントでの相談をした。
・7月開催イベントでは初となる物販2カ所を実施する
・ネットMTGで、筆者の経験から注意点などを約50分相談した
・2日後、Aさんから物販場所について仮決まりのメッセージが送られてきた
・ところが後日、別のスタッフから送られてきた資料には物販場所が1カ所になっていた
・Aさんに1カ所に変更になったのかを再確認した
・再確認の結果、資料側が誤りであることが判明した
・Aさんからは2カ所使うのは初めてなので忘れたと伝えられる

実はこの件、資料の修正や変更ミスではなく、2カ所で実施すること自体を忘れていたというのだ。
物販2カ所で運営するMTGを約50分もかけて行っていたにも関わらず、それ自体を忘れているという信じがたい反応だった。
MTGまでして事案は、さすがに忘れないでほしい旨をAさんに伝えたところ「1カ月前の話ですから」との返信をいただいた。


この時、筆者もパソコンの前で頭を抱えていたかもしれない


こうした情報共有の行き違いは、9月中旬のイベントでも同じような事案が発生した。
イベント開催2日前に、Aさんから会場内のスペース振り分けに悩んでいる旨のメッセージが送られてきて、30分ほどのやり取りで複数場所での物販実施という内容を確認して終了した。

ところが開催当日の朝7時頃に別のスタッフから送られてきた資料では物販場所が1カ所になっていた。すぐにAさんにメッセージで確認をしたが返信はなかった。現地でAさんに確認すると、Aさんは資料修正だけでなく、筆者とのやり取りも忘れていた。


筆者としては、
短期間かつ重要度が高いと思われる事案で、やり取りそのものを失念して共有ミスを繰り返す人に出会ったのは初めてのことだったので、大きな驚きとショックを受けた。


■負のスパイラルに陥るパターン
業務において、
・上司や部下の顔や名前を覚える
・商品名を覚える
・作業の段取りを覚える
こうした基本的な情報共有だけでなく、
取引先の担当者とのやり取りやエピソードもしっかり覚えておくことで、相手は自分とのこと正しく理解し、配慮をし、優先度が高いと認識してくれる。
こうした信頼度と好感度が、仕事上のコミュニケーションを確立し、円滑にしていく。

逆に、こうした対応ができないと、相手の信頼度や好感度が低下し、コミュニケーションはぎこちなくなり、情報共有のケアレスミスを発生させる要因にもなってしまう。

相手との会話やMTGの内容を記憶/記録することは、相手との、信頼度、好感度、親近感を向上させ、コミュニケーションを確立するために不可欠な要素だったのだ。

リアルな仕事場では、ちょっとした物忘れや記録ミスがあっても、周囲の同僚などとの会話や連絡で気づきやすい。

しかしコロナ禍で在宅からのテレワークでは、自分以外に記憶や記録を気づかせてくれる他者はいない。

自分地震で、記憶し、記録し、それら再確認しなければならない。
ちょっとしたことのように思われるが、テレワークでのネットコミュニケーションでは、こうした積み重ねからコミュニケーション不足や情報共有のミスが増え、負のスパイラルに陥ることは間違いない。


記憶力はコミュニケーションを円滑にする


記憶は英語でMemory(メモリー)という。
スマートフォンやパソコンでもメモリーは重要なパーツだ。
メモリーが足りなければ、機器は十分なパフォーマンスを発揮できない。

人とのコミュニケーションも同じだ。
情報の記録、管理が、コミュニケーション不足/破綻を生まないように、心がけたい。




執筆:S-MAX編集部 2106bpm