ホーム画面にウィジェットを配置できるようになり、情報を集約しやすくなった(筆者撮影)

7月1日にパブリックβ版が公開されたiPadOS 15だが、ユーザーインターフェイスの変化の大きさや新機能の多さはiOS 15以上だ。iOSと同様、iPadOSでもウィジェットをアプリのアイコンと並べてホーム画面上に配置できるようになったほか、インストールしたすべてのアプリを格納しておくための「Appライブラリ」にも対応。iPhoneと同様、iPadOSでもホーム画面の使い方が大きく変わることになる。

iPadならではの大画面を生かしたマルチタスキングも、iPadOS 15で進化する。画面を分割して2つのアプリを表示する「Split View」や、メインで表示しているアプリの上に小さく表示したアプリを重ねる「Slide Over」を、従来以上に呼び出しやすくなっている。PCと比べ、複数アプリを同時利用する際の手順が面倒だったiPadだが、iPadOS 15でこれが大きく改善される。

既存の機能の日本語対応が進むのも、iPadOS 15のトピックの1つ。iPadOS 14で導入された手書き文字を認識する「スクリブル」が、ついに日本語で利用できるようになった。そんなiPadOSならではの注目の新機能を、パブリックβ版に基づいて紹介していきたい。なお、本来パブリックβ版は動作検証を目的としており、画面の公開は禁止されているが、本稿では取材に基づく特別な許可を得て掲載している。

ウィジェットでホーム画面を整理

iPadOS 15は、ウィジェットでホーム画面の使い方が大きく変わる。iOS 14の導入に合わせ、iPadOS 14でもウィジェット自体は導入されていたが、配置可能な場所に制限があり、ホーム画面の1ページ目にしか表示できなかった。2ページ目以降を開いているときには、せっかくのウィジェットを目にすることがなかったというわけだ。アプリを開くことなく情報に触れられるはずのウィジェットのメリットを、生かし切れていなかったと言えるだろう。


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これに対し、iPadOS 15では、iOSと同様、ホーム画面上に直接ウィジェットを配置できるようになった。アプリと並べておくことができるため、天気予報や時刻、ニュース、スケジュールなどの情報が目に留まりやすくなる。ファイルアプリのウィジェットも追加され、最近使ったファイルや特定のフォルダの中身をホーム画面で表示できるようになった。PCのデスクトップとまではいかないが、カスタマイズの幅がこれまでのiPadOSより広がった格好だ。

iOSとの違いは、iPadOSが縦横両方の表示に対応しているところにある。縦と横ではアプリのアイコンのレイアウトが変わってしまうため、iPadOSでは、ウィジェットの位置をそれぞれのパターンで記憶しているようだ。縦で使うときにはアプリのアイコンをタップしやすいよう、ウィジェットを上部に寄せておき、横画面では画面下に移動させるといった形で、使い方に合わせてウィジェットを置くといいだろう。

また、iPadOS 15からはAppライブラリも導入され、ホーム画面の役割が変わった。これまでのホーム画面は、アプリそのものを置くための場所で、アプリをインストールするたびにアイコンが増えていったが、iPadOS 15からはショートカットに近い位置づけになる。すべてのアプリはAppライブラリに格納されるため、利用頻度の高いものだけを厳選してホーム画面に配置できる。

標準では新規にインストールしたアプリはホーム画面とAppライブラリの両方に追加されるが、「設定」の「ホーム画面とDock」で、「Appライブラリのみ」に変更することもできる。ウィジェットやAppライブラリを駆使して、ホーム画面を整理することで、iPadを使ったときの作業効率がさらに上がるはずだ。

「マルチタスキング」の使い勝手がアップ

文章を書きながらネットで調べものをしたり、メールを書きながらスケジュールをチェックしたりといったときに便利なのが、マルチタスキング機能。画面サイズの大きなiPadOSでは、iOSとの差分として、2つのアプリを同時に表示できる機能が強化されてきた。画面を分割して表示する機能をSplit View、表示中のアプリの上に小さな画面を重ねる機能をSlide Overと呼ぶ。

ただ、これまでのiPadOSは、その利用方法が少々複雑だった。1つ目のアプリを開いている際にDockを画面下から引き出し、アプリのアイコンをドラッグして画面端に移動させるという手順は直感的とは言えない。Dock内にアイコンがないアプリを2画面目として呼び出すこともできず、あらかじめ準備が必要だった。この操作性が、iPadOS 15で大きく改善される。


画面上部のアイコンをタップするだけで、簡単に2つ目のアプリを表示できる(筆者撮影)

iPadOS 15では、1つ目のアプリを開いている際に、画面上部に「…」と書かれたアイコンが表示される。ここをタップすると、表示中のアプリをSplit Viewで2分割するか、Slide Overの小画面で表示するかの選択肢が現れる。どちらかを選択すると、アプリが画面右端にいったん隠れ、ホーム画面から2つ目のアプリを選択できる。アイコンでマルチタスキングが可能なことを明示しているため、よりわかりやすくなったと言えるだろう。従来の方法もそのまま残されているため、慣れている人はそちらを使ってもいい。

また、画面下部を上方向にフリックした際に現れるAppスイッチャーのサムネールからも、Split Viewを作成できる。利用方法は簡単で、Appスイッチャーで表示されているアプリのサムネールを、ドラッグ&ドロップで重ねるだけ。2つのアプリの組み合わせを複数作っておき、Appスイッチャーで切り替えるといった使い方も可能。iPadの広い画面を生かしやすくなった。

手書き文字認識「スクリブル」が日本語対応

スクリブルとは、iPadOS 14で導入されていた機能の1つ。手書きの文字を認識してテキストデータとしてコピーしたり、検索窓に直接キーワードを手書きしたりできるのが特徴で、iPadの売りであるApple Pencilを生かす機能として導入された経緯がある。ただ、iPadOS 14では、残念ながら英語や中国語には対応していたものの、日本語には非対応だった。

このスクリブルが、iPadOS 15でついに日本語に対応した。その効果がわかりやすいのが検索だ。Safariを開いているときに、URL/検索欄をタップすると通常はキーボードが現れるが、iPadOS 15でスクリブルを有効にしていると、そのままApple Pencilで文字を手書きすることが可能になる。書き終わるとそのまま文字が認識され、検索が始まる。

Safariの検索欄だけでなく、Spotlight検索、マップ、メモ、連絡先といったアプリ内の検索もスクリブルに対応する。サイト内に設けられた検索欄でも、スクリブルは機能するようだ。例えば東洋経済オンラインのトップページには、検索窓が設けられているが、ここにも直接Apple Pencilで文字を書き込むだけで検索をすることができた。これまではテキストを入力しようとすると、Apple Pencilをいったん手から離してキーボードで入力しなければならなかったが、スクリブルならそのまま手書きで入力できてしまうため、操作の流れがスムーズになる。


検索欄に直接手書きできるようになり、操作がスムーズに(筆者撮影)

書き損じや認識ミスがあった場合でも、Apple Pencilだけで削除ができる。削除したいときは、波線を書くように入力された文字をこするだけ。テキストの上を横切るように線を引くと、その範囲が選択された形になり、「カット」や「コピー」などのメニューが現れる。文字入力だけでなく簡単な文字の編集まで行えるため、本当にApple Pencilだけで操作が完結してしまう。

日本語の入力が可能になったことで、メモアプリの使い勝手も増した。メモアプリ上で手書きした文字をダブルタップすると、線の上に半透明のマーカーを塗ったような見た目になり、範囲を選択できるようになる。認識させたい文字に範囲を広げ、その文字をタップするとメニューが出現。ここで、「テキストとしてコピー」を選択すると、手書きの文字がテキストデータとしてクリップボードに保存される。あとは、適当な場所にペーストするだけだ。

ほかにも、特定のアプリや人からの通知を制限する「集中モード」やビデオ会議アプリのように使えるようになったFaceTimeなど、iOS 15から搭載される新機能はほぼ同じように利用できる。新機能が多数盛り込まれたiPadOS 15だが、そのベースがiOSであることに変わりはない。一方で、マルチタスキングやペン入力が強化されたことで、iPadならではの大画面やApple Pencilをさらに生かしやすくなった。そんなiPadOS 15の正式版が配信されるのが、今から楽しみだ。