花き卸取扱高 最低更新 20年6・5%減 家庭向け鉢物は堅調

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 全国花き卸の2020年取扱高は前年比6・5%減の3175億円となり、過去最低だったことが9日、日本花き卸売市場協会のまとめで分かった。新型コロナウイルス禍でイベント自粛や生花店の営業縮小が広がり、切り花が大きく減少したことが要因。鉢物は家庭需要が高まり、わずかに増加した。花き業界にコロナ下の需要の変化を捉えた対応が求められている。 同協会の加盟花き卸111社(118市場で営業)の取扱高をまとめた。 全体の取扱高は16年以降、毎年1〜4%ペースで減少が続いたが、20年はコロナ禍が需要期の3、4月を直撃し、減少幅が拡大。取扱高は過去30年で最少となった。 切り花は8・9%減の2250億円と減少が大きかった。品目別に見ると、前年を上回ったのはリンドウ(前年比2%増)だけ。その他は軒並み落ち込み、特に業務用の比率が高い品目は苦戦した。輪菊が12%減、バラは15%減、カーネーションは10%減、ガーベラが10%減となった。産地も出荷調整を強いられるなど打撃が広がった。 鉢物類は0・2%増の832億円で、東日本大震災後の12年以来の増加となった。品目別に前年を上回ったのは観葉植物を中心に全体の55%に当たる28品目。取扱数量が最も多いシクラメン(5号以下)も17%増と好調だった。苗物類は市場入荷量は減ったが、家庭菜園を楽しむ人が増え、単価が大きく伸びたことで金額を押し上げた。 同協会の福永哲也会長(豊明花き社長)は「コロナ下で新規の消費者が生まれ、家庭需要は伸びている。産地と協力し、需要に合った商品を効率よく届けるシステム構築を進めたい」と市場機能強化の必要性を訴えた。<解説>生消つなぐ体制強化を 2020年の花き市場卸取扱高は新型コロナウイルス禍の影響を色濃く映した。切り花、鉢物とも春の最需要期にイベント中止や営業停止が広がり、産地や市場の打撃は深刻化した。その後、自宅で過ごす人が増え、観葉植物や花壇苗の需要が増加。切り花も季節品目を中心に家庭需要が伸びた。ただ、切り花は業務用比率が高く、家庭用の増加が業務用の減少分を取り戻すまでには至っていない。 日本花き卸売市場協会の福永哲也会長はポスト・コロナでは業務需要の戻りに加え「コロナ下で生まれた新規の家庭需要を離さないことが大切」と強調する。消費者の要望を産地につなぎ、適切な品種や規格で出荷してもらうことで、市場の需給調整機能を発揮していくことの必要性を指摘した。 物流の効率化、情報のデジタル管理化などでも産地が市場と連携できる局面は多い。消費の振興と経費の削減に向け、産地と市場、小売りの一気通貫での協力体制の構築が求められている。(柴田真希都) 
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