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四輪駆動EV 名前は「ソルテラ」

text:Kenji Momota(桃田健史)editor:Taro Ueno(上野太朗)

スバルは2021年5月11日、トヨタが共同開発を進めている四輪駆動EVの名称を「ソルテラ」に決めたと発表した。

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ラテン語で、ソルは太陽、テラは大地を意味し、ソルテラは造語である。


スバル・ソルテラ    スバル

日本/北米/欧州/中国などグローバルで2022年央までに発売する予定だ。

スバルはソルテラをSUVの仲間として位置付けている。日本でのXV/フォレスター/アウトバック、さらに北米でのアセントに次ぐ新型SUVとなる。

モーターの出力、搭載する電池容量、満充電での航続距離、加速性能など技術な数値やボディ寸法などについては今回未発表だった。

唯一示されたのが、電動車専用の車体として「eスバル・グローバル・プラットフォーム」を採用するという点だ。

これはトヨタでいうe-TNGA(トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)に相当する。

e-TNGAを使った四輪駆動EVといえば、トヨタが2021年4月の上海モーターショーでワールドプレミアした「bZ4X」があり、同車についてトヨタはスバルとの共同開発と説明している。

つまり、ソルテラはbZ4Xの兄弟車という見方ができるが、2ドアスポーツカーのBRZと86の場合はスバル主導開発だが、ソルテラではトヨタ主導の開発というイメージを持つ。

今後、世の中でのEVシフトがさらに進む、スバルはさらにトヨタへの依存度が高くなるように思えるのだが……。

開発体制の改革でEV時代に対応

スバルはいま(2021年5月)から約2年前となる2019年6月6日に「中/大型乗用車向けのEV専用プラットフォーム、およびCセグメントクラスのSUVモデルのEVをトヨタと共同で開発することを合意した」発表している。

このSUVモデルのEVがソルテラとbZ4Xになったわけだ。


トヨタbZ4X    トヨタ

2019年6月発表では「複数車種への幅広い応用や、効率的な派生車開発に対応する」としている。

また、今回のソルテラの名称発表と同時におこなわれた2021年3月期 通期連結決算の発表にあわせて、中期経営ビジョン/STEP2.0の進捗報告の中で改めて、「開発体制の改革」を示している。

それによると、従来の開発体制では、車種/ボディ/エンジン別に最適解を追求してきたが、これを機能軸と価値軸という2つの軸によって再構築するという。

さらに、開発効率と機動性を高め、次世代技術への比重を高める、ともいう。

つまり、現行モデルではインプレッサを皮切りに、数十年ぶりに刷新した新型車体のスバル・グローバル・プラットフォームによる車種展開をおこなってきたが、今後はさらに車種間の部品共通性が高まることになる。

これは当然、本格的なEV時代の到来を念頭に置いた考え方だといえる。

大物技術ではトヨタ主導へ一気に転換

スバルが示した、開発体制の改革は、けっしてEVなど電動化だけに重点を置いているわけではない。

コネクティビティ技術や、高度運転支援システムのアイサイトとその延長上で考慮される自動運転技術など、いわゆるCASE(ケース)への対応が急務であるとの判断がある。


スバル・レヴォーグが搭載するアイサイトXのモニター・イメージ。    スバル

そのコネクティビティ技術については、2021年4月27日に、トヨタ/スバル/ダイハツ/マツダ/スズキの5社が次世代の車載通信機の技術仕様を共同で開発し、通信システムを共通化することを発表したばかりだ。

これは、トヨタが新車に装着しているDCM(データ・コミュニケーション・モジュール)や、そこから得られるデータをトヨタがモビリティ・サービス・プラットフォームと呼ぶクラウドサービスを基盤とした協調領域を念頭に置いたもの。

こうした基盤技術をスバルなどトヨタ以外の4社を活用して各社が独自開発のサービスに結び付けるという発想だ。

ようするに、電池/モーター/インバーターなどの電動化技術や通信関係の技術など、初期開発コストがかかる次世代技術の「大物」については、トヨタ頼みという日系メーカーが増え、スバルもそのうちの1社であるということだ。

こうした状況で、スバルは本当にスバルらしいクルマを作り続けることができるのだろうか?

「大きな決断」 Xデーはいつか?

中期経営ビジョンSTEP2.0では「スバルのありたい姿へ」として「他とはちょっと違うスバルとお客様との深い関係性をさらに進化させる」と表現している。

その上で、機能価値では、安全性/耐久性/走破性を挙げているが、現行車での技術的な他社との差別化は、水平対向エンジンによるところが極めて大きい。


決算発表時の資料に記されたCO2削減に向けたロードマップ。    スバル

シンメトリカルAWDによる低重心による安定した走り味こそ、スバルの真骨頂である。

これがソルテラを皮切りに今後本格化する。

スバルとしてEV多モデル化によって各モデルでトヨタ車との走りにおける明確な差別化は難しくなり、スバルらしさを維持することも難しくなるだろう。

そうしたスバルEVシフトの過程で、水平対向エンジンのハイブリッド化やプラグインハイブリッド化を並行して進めるのか?

それともボルボやジャガーのように、スバルもEV専用ブランドという生き方を早い時点で表明することになるのか?

その上で、BRZと86については、内燃機関の開発をやり尽くして、その使命を全うする道を歩むのか?

現実的には、スバルにとって最重要市場であるアメリカが今後、カリフォルニア州など一部の州のみならず、連邦政府としてEVシフトについてどのような政策を進めるかによって、スバルとして「大きな決断」をしなければならない日が訪れるのかもしれない。