全国の消防当局に、救急車のサイレンがうるさいという苦情が寄せられています。現場も配慮はするものの、「ご理解を」と説かざるを得ない一面も。同様のことは、「バックします、ご注意ください」などの音声アラームをめぐっても見られます。

救急車「サイレン鳴らすな」はできない

「救急車のサイレンがうるさい」。全国の消防当局に、このような苦情が多々寄せられているようです。2020年10月には沖縄県で、サイレンがうるさいという理由から、緊急走行中の救急車に生肉の入ったビニール袋を投げつけて妨害した男が逮捕される事件も起こっています。

 多くの自治体で、市民からのこのような意見をウェブサイトで紹介していますが、それに対する回答は「ご理解ください」といったケースがほとんどです。なぜなら、救急車が緊急車両として走行する場合には、サイレンを鳴らし、かつ赤色の警告灯を点灯しなければならないと、法律で定められているからです。


救急車のサイレンは緊急走行に必要不可欠なものだ。写真はイメージ(画像:写真AC)。

 サイレンの音量は90デジベルから120デジベルの範囲で決められています。自治体によっては、救急車に音量を切り替えられるサイレンのシステムを搭載し、住宅街などで法令の範囲内において音量を小さくするケースもありますが、そもそも、周囲のクルマのドライバーにしっかり聞こえる音量でなければ意味がありません。

 ほかにも、「誘導する家族などを確認すれば、早めにサイレンを止めるように心がけています」(徳島県小松島市)など、現場も法令の範囲内で配慮しているようです。

「バックします」音声も聞かれなくなった?

 サイレンに限らず、ゴミ収集車やトラックなどの「バックします、ご注意ください」といった音声アラームをめぐっても、うるさいという意見があるようです。

 東京のある自治体のゴミ収集車は、歩行者に注意を促す観点からも、音声アラームは鳴らすのが基本。しかし住宅密集地などで住民から要望があったところでは、個別対応で音声をオフにしているとのこと。音量を小さくするケースもあるようです。

 サイレンと違い、こうした音声アラームの装着は法令で義務付けられたものではなく、事業者や車両の架装メーカーが、安全上の配慮から自主的に装着しています。架装メーカーや音声アラームのメーカーに聞いても、装着自体は大きく減っていないといいます。


ごみ収集車(乗りものニュース編集部撮影)。

 こうした音声アラームはシフトレバーやウインカー操作と連動して鳴りますが、オフにできるようになったこともあり、以前より音声が聞かれなくなったと感じるかもしれない、という意見もありました。

 緊急自動車のサイレンは必要不可欠なものであり、また働くクルマの音声アラームも、周囲にクルマの存在を知らせる役目を負っています。安全上の必要性が広く認識されているとはいえ、これらに悩まされている人がいるのも事実。新型コロナの影響で家にいる機会も増ええるなか、これらを騒音と捉える人と現場の思いのギャップが、さらに広がる可能性もあります。