コロナで「売れた」商品1〜10位

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売れる商品にどのような変化が表れているのでしょうか(イラスト:nishiya_hisa / PIXTA)

新型コロナの感染が確認されてから、2度目の桜のシーズンがやってきた。市場調査会社のインテージが、新型コロナ禍の影響を受ける直前から週次で全国のスーパー、コンビニ、ドラッグストア、ディスカウントショップなどの販売動向を追っている「新型肺炎カテゴリー動向」。

今回からデータソースを変更し、昨年末まで約4000店だった調査対象店舗を、年明けから約6000店舗に拡大、精度を高めるため設計の見直しも実施した。2020年1月6日週からだったデータの起点も2019年12月2日週に変更、補正をかけた。

このほど公表した1月最終週までのデータでは、新型コロナ時代の“3種の神器”であるマスク、手指消毒剤、非接触型体温計の一部に変化が現れた。

【2021年3月24日11時30分追記】初出時、データの一部に誤りがあったため、ランキング表を一部修正しました。

対前年比で大幅減に転じたマスク、手指消毒剤

まずは次の“新3種の神器”のグラフをご覧いただきたい。最大で前年同期比3000%に迫る場面もあったので、30%や40%の伸びが小さな伸びに見えるが、新型コロナ襲来直前の2019年12月は、インフルエンザが大流行したため、マスク、手指消毒剤、非接触型体温計の販売高は、軒並み対前年比で数十パーセントの伸びを示していた。


それが1月に入って収束。1月下旬頃から新型コロナの影響でマスクと手指消毒剤が数百パーセントの伸びとなり、供給が追いつかなくなった3月にいったん後退。供給が追いついたことで、5月以降は1000%超えが常態化した。

非接触型体温計は供給が追いつきだした時期が、マスクや手指消毒剤に比べて1カ月ほど遅れたので、1000%を超えだしたのは7月に入ってから。マスクや手指消毒剤が8月以降、下降線をたどったのに対し、非接触型体温計は1000%台の伸びが年明け以降1月18日週まで継続。1月25日週でようやく295.0%に下がった。

公共施設や店舗など、どこでも入場の際に非接触型体温計による検温が常態化したことが原因だろう。1月25日週の新3種の神器の前年同期比は、マスクが21.3%(前年同期比78.7%減)、手指消毒剤が34.2%(同65.8%減)だが、非接触型体温計は295.0%と、一時期ほどではないにせよ、いまだ高水準の伸びが続いている。

新3種の神器の伸び率があまりにも大きいので目立たないが、血圧計が12月以降40%台の伸びを示している。


コロナ前は、血圧計は市役所や病院、クリニックの待合室に設置されていて、自由に計測することができたが、不特定多数が接触する物品として、一斉に撤去されてしまった。

筆者も血圧は通っていたスポーツクラブで測定していたが、コロナでスポーツクラブ自体が休業してしまい、タダで測定できる場を失ってしまった。そんなタダで計測できる場を失った人たちの需要を取り込んでいるということかもしれない。

継続的に伸びるヘアトリートメント

ヘアトリートメントも、20%〜30%の伸びが続いている。美容師と至近距離での接触が長時間続く美容院は、コロナ禍で行く頻度が下がった場所の1つだ。理容室、美容室は、近年過当競争にさらされ、そもそもコロナとは無関係に倒産や廃業の件数が増加傾向にあった。


信用調査機関の東京商工リサーチによれば、コロナ前の2019年1年間に倒産した理美容室は119件。これでも過去最高なので、一見少なく見えるが、倒産に至る前に閉店・廃業している店は数千店に上るという。

「2020年1年間の倒産件数は97件と前年から減ったとはいえ、依然として高水準。理美容室を取り巻く環境の厳しさに変化はない」(東京商工リサーチ情報部)。

感性の合う美容師にたどり着くまで時間がかかった人は少なくないはずだ。慣れ親しんだ美容院が廃業すると、「次」はそう簡単には見つからない。まして外出を自粛すべきとなれば開拓意欲は削がれる。

最近は自分で手軽に髪を染められるカラー剤や、自宅で縮毛矯正が可能なストレートパーマ剤なども市販されており、これらがヘアトリートメントに分類されていることからすると、美容院に行けない、行かない代わりとして販売が伸びている可能性がある。

一方、低迷が続き、一向に上向く気配がないのが口紅。マスクをしないで済む生活が常態化するまでは復活は望めないだろう。

練乳もマスクや手指消毒剤に比べると地味だが、着実な伸びを示している。練乳の需要期はイチゴが出回る12月〜5月と、かき氷の季節である7〜8月だが、2020年は若干のでこぼこはありながらも、年間通して10%〜30%前後の伸びが続き、年が明けてからも20〜30%の伸びが続いている。


総務省の統計によれば、昨年の冬はイチゴが小売り段階で1キロあたり100円前後高かった。最盛期の12月〜1月がまだコロナの影響が本格化する前だったということもあるのか、練乳は対前年比2割減程度で推移したが、夏場に30〜50%もの伸びを示し、12月以降も高水準の伸びが続いている。ちなみにこの冬のイチゴの価格は、12月は対前年比74円高、1月は210円安。

内食が増えて家でかき氷を作ったり、イチゴを食べる機会が増え、なおかつイチゴ狩りにも行けない状況下で、練乳の需要が高まったということか。

玩具メーカー菓子も、『鬼滅の刃』が大きく貢献したが、年明け以降も需要が継続しているのは、第2の鬼滅の呼び声高い『呪術廻戦』など、鬼滅以外のアニメも貢献しているため。

爆発的に売れた麦芽飲料

麦芽飲料も特異な動きを見せた。麦芽飲料と言えばネスレのミロ。鉄分やビタミン、カルシウムなどがバランスよく含まれている栄養機能食品である。健康志向が高まる中、昨年3月あたりから需要が伸びてはいたのだが、7月に入ってツイッターで話題になると、爆発的に売れ出した。


販売が再開されたミロ(写真:筆者撮影)

8月上旬に対前年比289%を記録したところで生産が追いつかなくなり、9月末にいったん販売が休止された。

そこからは流通在庫がはけていくだけなので、徐々に伸び率が下がり、11月16日に販売が再開されるやいなや、再度爆発的に売れ、12月7日週には対前年比1000%を突破。またもや供給が追いつかなくなり、12月8日に再度販売休止を発表した。


再び流通在庫からの販売となり、その後は週を追うごとに落ち続け、1月25日週にはついに対前年比5%、つまり95%減まで落ちたが、3月に入って供給が再開、スーパーやコンビニの店頭に戻ってきた。まだまだコロナ禍は続く。今後も思わぬヒット商品が誕生することは間違いないだろう。