快適かつ確実なドライブのために必要な装備ばかり

 クルマの装備は多種多用だ。オプション装備をすべて含めれば車両価格が倍になるような車種もあるほど。こうした装備、実際に使わずにカタログだけを見て選択するというのはじつに難しいだろう。

 今回はレーシングドライバー/モータージャーナリストとして年間4〜5万kmを40年間走り続けてきた経験値から、これだけは外せない! と言える有用な装備をご紹介しよう。

 まずドアを開けて運転席に乗り込む。最初に行うのはドライビングポジションを正しくとることだ。そこで重要なのはシートやステアリングの調整機能だ。現代なら電動アジャストのシートを選択し、長距離運転も考慮してランバーサポート機能を備えていることもマストだ。また助手席にも運転席同様の電動調整機能が選べると質感が高まる。ステアリングにはテレスコピック/チルトの両調整機能が必要で、できればこれも電動がお薦め。

 現在は2ペダルのATモデルが大半を占めているが、ドライビングポジションをつねに正しく維持するため、3ペダル同様左足フットレストもきちんとしたものを装備するべきだ。

 次にミラー。サイドミラーの電動可倒、電動調節機能はほぼ常識となっているが、その際に斜め後方から近接する車両の存在を知らせる「ブラインドスポットモニター」が備わっているか確認したい。ルームミラーには自動防眩機能を備えていることも、夜間のドライブでは重要。デジタルミラーが普及し始めているが、解像度や明るさ、視界の広さなど実用上の問題点がまだまだ多く、お薦めしない。

 エアコンは左右独立のクライメート式であること。冬季の低温時にはシートヒーターの装備も必須だ。EVなど空調によりバッテリー消耗が大きな場面でもシートヒーターが装着されていれば、それだけで十分に暖まる場合も多い。もちろん前席のみならず後席にも装備すべきで、最近ようやく後席シートヒーター装着モデルが増えてきたのは嬉しいかぎりだ。

 ついでに言えば、4ドアモデルには後席にもリクライニング機構や専用のエアコン吹き出し口、USB電源ポートなどもほしい。セダンモデルなら後席シートバックが可倒式でトランクスルーとなることが実用性を大きく向上させてくれるだろう。

 近年は運転アシスト機能も多種多用となってきた。ABS(アンチロックブレーキ)やTC(トラクションコントロール)は常識となり、ESP(電子制御車両姿勢機能)も標準で装備される時代になったなか、選択すべきものは全車速追従式のアダプティブクルーズコントロールだ。数年前のモデルでは115km/hまでしか設定することができない。新東名など120km/hで走行可能な区間が増えるに従い、クルーズコントロールも130km/h程度以上で設定できることが望ましい。輸入車の多くは最高速度でも設定が可能になっており商品力を高めているのだ。

安全装備まで充実したモデルを選びたい

 レーンキープアシスタントは実用的な完成度レベルのものが少ないので選択しなくてもいいが、エマージェンシーブレーキアシストはあったほうがいい。前方に停止車両を検知したり、壁や建物など障害物を検知し、ドライバーが気付かなくても自動的にブレーキをかけてくれる。しかし、障害物の手前で確実に止まれる装置ではない。あくまでも衝突時被害軽減ブレーキの範囲であることを忘れてはならないものだ。

 前方監視装置としてレーダーやカメラを備えているものが多いが、悪天候時や夜間など視界が悪いときはドライバーの目だけが頼りとなる。そんな場合、オートマティックハイビームに対向車や前走車を検知して自動的に減光してくれるアダプティブ機能が付加されているとありがたい。

 カメラは前方、両サイド、後方に装備されるべきで、ドライバーが任意に確認できる操作性が欲しい。現状のアラウンドビューモニターは正直役に立つとは言い難いレベル。一方、前後クロストラフィックアラートは実際役に立つ。

 フロントガラスの撥水加工などは標準で施してほしいし、サイドミラーも同様だ。雨天時の快適ドライブに貢献する。

 ここに挙げた装備が選択可能あるいは標準で備えるモデルは、じつはまだ数少ない。価格面とのバランスを考慮するとマツダCX-5の上級グレードがじつはもっとも理想に近い。というわけで、レーシングドライバー/モータージャーナリストの筆者は、またしてもマツダCX-5を買うのである。