山下泰裕JOC会長、室伏広治スポーツ庁長官らが盗撮を非難した会見には、女性の姿が見えず、認識不足と姿勢を疑う声も聞かれる 写真/朝日新聞社

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昨年11月、JOC(日本オリンピック委員会)などが、アスリートを標的にした「性的画像」の撲滅を訴える声明を出し、広く知られるようになった盗撮問題。多くの競技団体が対策に動くが、被害が減らない背景に迫った!

◆競技団体は事実上放置? 盗撮被害のひどい実態

「競技に集中しているので、選手は盗撮に気づかない。後で、私のお尻や股間の写真が卑猥な言葉と一緒にネットにアップされているのを知って、ショックでした……」

 女子陸上中距離界で将来を期待される大学生のAさん(21歳)は、過去の忌まわしい体験をこう明かしてくれた。陸上競技、水泳、新体操、バレーボール……アスリートを「性的」目的で盗撮し、SNSに投稿する事例が相次いでいる。

 昨年11月には、JOCやスポーツ関連団体が被害の実情を訴え、盗撮を非難する声明を出したが、今もネット上には、バストや股間を執拗に接写した画像が溢れ、多くの女性選手が被害に苦しんでいるのだ。スポーツライターの酒井政人氏は、近年、盗撮が増えた背景をこう説明する。

「アスリートの盗撮自体は20年以上前からあったが、増えはじめたのはビーチバレーが注目を集めた’03年くらいから。同じ頃、陸上選手のあいだにセパレート型のユニフォームが広まり、露出の多さから狙われるようになった。デジカメが普及し、陸上の大会でスタンドから女性選手に望遠レンズを向ける不届き者が増えたのもこの頃です。駅伝やマラソンなど公道で行われる競技は、盗撮に対して打つ手なしで無法地帯と化している」

◆アスリート側に「落ち度」があるかのような理不尽な意見

 陸上の女性選手のユニフォームは、以前はランニングシャツにランニングパンツと体にフィットしないものが一般的だったが、セパレート型は薄い生地が体に密着し、ビキニ水着のようにお腹が丸出しになる。

 露出が多いのも確かで、「あんな格好だから、盗撮されるのだ」という声も一部に根強い。だが、アスリート側にあたかも「落ち度」があるかのような理不尽な意見に、酒井氏は強く反論する。

「選手がセパレート型を着るのは、動きやすいからに尽きる。セパレート型は女性の胸の膨らみの下にできる空間の空気抵抗を減らす目的で開発されたもので、世界のトップアスリートが愛用するようになると、国内の選手にも浸透し、今や中高生も着用しているほど。また、陸上以外の競技でも丈が短いパンツを着用する選手がいるが、競技によっては規定で長さが決まっており、長めのユニフォームを着用できない場合もある」

 SNSも被害拡大の大きな要因の一つだ。盗撮写真が拡散するだけでなく、選手に直接メッセージを送れてしまう。さらに、盗撮写真や動画を専門に販売するサイトがいくつも存在し、有名な“撮り師”が商売にしているのだ。

◆JOCはようやく通報窓口を設置した

 実業団の短距離選手Bさん(23歳)は、被害体験をこう話す。

「私の盗撮画像に体液をかけている局部の写真や、『あなたで抜いている』とDMを送ってくる人もいた。高校時代は田舎で、盗撮の存在自体も知らず、被害に気づいたのは大学4年の頃。でも、誰かに助けを求められるものではないと思っていた。友人の選手は所属チーム宛てにアダルトグッズが送られてきたり、同じような目に遭っている人は多いけれど、声を上げたのを見たことがない……」

 状況改善を訴える声を受けて、JOCは通報窓口を設置したが、激増する被害にようやく競技団体が重い腰を上げた格好だ。実際、一連の動きは、女性陸上選手2人が勇気をもって声を上げたのがきっかけだった。

◆「撮られた選手が不快に感じたらハラスメント」 ただ、一般人による撮影の規制には、競技団体や選手のあいだに温度差があるという。元全日本テコンドー協会理事・アスリート委員長で、女性選手のハラスメント被害に詳しい高橋美穂氏が説明する。