大企業出身の中年転職者が嫌われるワケ…「役員待遇で採用」の悲惨な末路

写真拡大

「ぜひ、弊社に役員待遇で来てください!」

 会社員であれば誰しも喜ぶような一言かもしれません。ましてや、大企業でそこそこのところまで出世したものの、それ以上の昇進はないだろうなと半ば諦めていたミドル層やトップ層の一段下のアッパー層の人が、取引先や知人、人材エージェントから紹介された会社から言われたら捲土重来がやってきた感覚で、心が躍るでしょう。

 ましてや今のタイミングですと、コロナ禍で自社の市場や自社自体の将来が見えない状況。大企業のミドル層やアッパー層のサラリーマンは「いまが最後のチャンスかもしれない」と考える人もいるのかと思います。

 ところが、そこには大きな落とし穴があり、本人は「こんなの詐欺だ!」みたいに騒いでも周りは何も同情してくれないような悲惨な事態に陥りかねないリスクがあります。

 意気揚々と役員待遇や社長として転職・着任することが決まると、周りは羨ましいといわれ、本人も恍惚の表情を浮かべる毎日です。

 ところが実際に入社して1か月も経ってくると、本人はまったく自覚なくとも、新しい会社で仕事を一緒に始めた一部の人たちを中心にザワめいた空気がじわじわと出してくるのがありがちなパターンです。

 いわゆる「メッキがはがれる」という状態が始まります。

◆感覚が思い出せないどころか、やったことがない

 どうしてそうなってしまうのか? それは大企業と中小企業では何もかもが違うために、環境に順応できないどころか実務が未経験であったりもするので順応のしようもないことがあります。

 入って早々に大企業並みにスタッフが揃っているなんてことを期待してはいけません。もちろんいたらいいですが、いろんなことをまず自分一人で何でもやらなければなりません。まずそこで躓きます。

 ひどい人の場合は入社して1〜2日で「優秀なスタッフを用意してくれなければ、私は何も動けません」という爆弾発言をさも当たり前のように、自分を選んでくれた人に対して訴え、唖然とされたりもします。

 用意されていないのではということで、自分の代わりによく働いてくれていた子飼いの社員を古巣から連れてこようとしてもうまくいきません。子飼い側にとっても「いえいえ、あなたにそこまで義理立てする必要ありませんから。私はこの大きな船がいいので」とけんもほろろに断られます。

◆大企業の看板がなければ無価値な存在

 次にすでに古巣を辞めている元社員に声をかけます。ところが、そうしてかけられて集まってくる人たちは、「仕事がなくて困っていた」人たちであって、やはりパフォーマンスには疑問が生じてしまいます。

 そうした人たちが自分の新しい中小企業で悪い評判が立つと、連れてきた自分にも「採用責任」という言葉のもとネガティブポイントになります。

 それならばと、どこかにいるであろう優秀な人を捕まえようと考えます。そうしたときに威力を発揮するのが、過去にたくさん名刺交換をした「知っている人たち」だと思い立ちます。

 しかし、そうしてお願いをしたとしても、皆「わかりました、頭に留めておきますね」とは言ってくれますが、実際にはなかなか紹介には至りません。

 それは当たり前のことで、向こうとしても一緒に汗を流してよく知っている人からの相談ならまだしも、大企業の看板があるからニコニコと接していただけ。これから看板がなくなろう、あるいはすでになくなった人に対してはそこまでは義理立てしてくれないからです。

 Facebookやリンクトインでつながっていようがなんだろうが関係ありません。

◆専門家シンドローム 大企業にいたときのネットワークを中小企業で活用しようと思っても、なかなかうまくいきません。うまくいくことのほうがレアケースです。