2020年11月12日に発売された家庭用ゲーム機「PlayStation5(以下PS5)」。そのコントローラーの持ち手にあるすべり止め部分に、「あのマーク」がデザインされていたと、ツイッターで話題になっている。

こちらが、その画像だ。


すべり止め部分のザラザラが......(以下、画像はアムザ@ALevammeさんより、編集部で一部加工)

遠目から見ればただのすべり止めの点の集まりにしか見えないが、拡大してよく見てみると、なんとコントローラーのボタンでお馴染みの「○×△□」マークになっているのだ。こ、細かすぎる......!


「○×△□」マークの集合体が(編集部でトリミング)

このコントローラーのデザインが注目を集めたのは、ツイッターユーザーのアムザ(@ALevamme)さんの2020年11月12日の投稿がきっかけ。アムザさんの投稿にツイッターでは、

「恐ろしく芸が細かい仕様だ」
「鳥肌立つくらい凄い......」
「ソニーさんはバカ(良い意味)なのかなと思ったwこれ金型作るの大変だったろな」

という反応が寄せられている。

なぜ、すべり止め部分にこのデザインを採用したのか。

Jタウンネットはソニー・インタラクティブエンタテインメント(東京都港区、以下SIE)に詳しい話を聞いた。

こだわりの塊だった

まず、話題のツイートを投稿したアムザさんに話を聞いた。

PS5コントローラーの「○×△□」マークについては、写真を撮影する以前から噂だけは知っていたとのことだ。

「スマホで写真を撮ってマークが見えたときは、純粋に驚きました。細部までデザインにこだわり抜いてるのがすごいと思います」

次に、Jタウンネット記者はSIEに話を聞いた。

SIE広報部を通して取材に応じたのは、SIE デザインセンター プロダクトデザイングループ シニアアートディレクター・森澤有人さんだ。

今回、コントローラーに「○×△□」マークを入れた理由について、森澤さんはまず、

「どんな製品を作る場合でも、生産性などの観点も踏まえ、光沢以外の部分にはシボ(細かい凹凸)と呼ばれる既存のテクスチャーを選んで使います」

と前置きをした上で、PS5では「せっかく入れるのであればそこ(シボ)もデザインしよう」という考えがあったと話した。

「一見するとカメラのグリップなどに採用されることが多い『革シボ』といわれる革を模したテクスチャーにも感じられ、触れた時の触り心地も絶妙で、その上で『よく見ると△○×□でできている!』というデザインにしています。
ユーザーの皆さんに手に取っていただいた時に、使っていてあとから気が付いて驚くような要素も含めたい、という考えもあり、UIやマーケティングなどでも使用している『△○×□』マークを取り入れました」(森澤さん)

また、デザイン案を形にするまでに特に苦労した点について、森澤さんは「データを作成する膨大な作業が必要だった点」を挙げた。

「実際にデザイナーが手作業でこのパターンをデザインし、絵の段階で何度も調整を繰り返しました。その後、立体にする過程でも設計メンバーと共に高さやサイズを一つ一つ何度も調整し、絶妙な触り心地や見え方になるようにギリギリまで苦心しました」

明かすつもりはなかった


PS5本体カバーの内側にも!

ただ、これだけ苦労を重ねて設計をしたものの、あえて自分たちからこのデザインについて明かすつもりはなかったという。

ゲームにおける、いわゆる「イースターエッグ(隠し要素、隠しコマンド)」のような感覚で、「ユーザーの皆さんが現実世界でも見つけていただけるものを隠したいという想いで入れました」とのことだった。

「しかし、驚くことに最初の製品発表イベントの時点ですでに気が付いた方が多く、正直逆に鳥肌が立つくらい皆さんが凄い! と思いました」

ツイッターでの反響について森澤さんは、

「こうして製品を通して世界中のプレイヤーと対話するのはデザイナーとして、1ユーザーとして大変嬉しく思いますし、途方に暮れるほどの労力でデザイナーが一個一個調整したのでその魂を感じていただけたのではないかと思います」

と話した。

PS5を手に入れたゲーマーの皆さんはぜひ、自分の目でもこの「隠し要素」を確かめてみるといいだろう。

11月19日13時20分追記:記事初出時、森澤有人さんの肩書に誤りがありましたので、修正しました。