■え……小泉大臣「レジ袋有料化に環境効果なし!」(キリッ)

7月29日にBSフジのプライムニュースで60代視聴者女性から小泉進次郎環境大臣に率直な質問が行われた。その質問内容は、

「レジ袋の有料化で買い物が不便極まりなくなりました。そもそも食料品をマイバックに入れるのは不潔です。レジ袋はゴミ捨てにかかせず便利で有用です。ごみを入れたまま燃やすことにも問題ないと思います」

という明確なものであった。これに対して、小泉大臣は下記のように明確に答えている。

写真=時事通信フォト
閣議後に記者会見する小泉進次郎環境相=2020年7月3日、環境省 - 写真=時事通信フォト

「不便極まりないのは申し訳ないなと。レジ袋を全部無くしたところで、プラスチックごみの問題は解決しません。それが目的ではありません。この有料化をきっかけに、なぜプラスチック素材が世界中の問題となって取り組まれているのか、そこに問題意識を持って一人ひとりが始められる行動につなげてもらいたい。是非ご理解いただけるように引き続き努力をしたい」

■愚民のために啓発を促す上級国民の進次郎くん

小泉大臣は、レジ袋有料化はプラスチックごみの問題は解決せず目的でもないと明言している。つまり、この政策には環境改善効果は何も期待されておらず、今すぐやめたとしてもほとんど何も問題ないのだ。小泉大臣は他メディアでもレジ袋有料化に言及されるたびに同様の趣旨の回答を行っており、どうやら冗談で言っているわけではなさそうだ。

実際、レジ袋は全国の自治体のゴミに占める割合が0.4%でしかない。レジ袋を集中してやり玉に挙げたところでほとんど意味がない。また、レジ袋を焼却したところで有害物質が出ることもないし、そもそも単なる石油精製時に生じる副産物でしかない。したがって、レジ袋に罰金を科すことは全く無意味である。

では、この政策自体は何のためにやっているのか。小泉進次郎大臣曰く、レジ袋有料化の目的は国民の「啓発」が目的だという。

■国連も認める日本の「高度な廃棄物管理システム」

小泉大臣の主張は、国民はプラスチックごみの問題について話しても理解できないだろうから、レジ袋有料化という無意味な痛み(事実上の税金)を与えることによって無理やり認識させてやろう、と言っているに等しい。

民は無知蒙昧(もうまい)であり鞭(むち)を振るって罰を与えねば分からない、とは、中世の愚昧な支配者そのものの発想である。世襲政治家特有の思想と発言と言えるかもしれない。

では、日本国民は小泉環境大臣よりも愚昧な存在なのだろうか。ろくに社会経験もない世襲政治家に指導される、北朝鮮のようなレベルまで日本国民は劣化しているのだろうか。

国連環境計画は2018年に発表した「SINGLE-USE PLASTICS : A Roadmap for Sustainability」の中で日本について下記のように言及している。

「日本はプラスチック袋を禁止していないにもかかわらず、非常に高度な廃棄物管理システムと国民の高い意識によって、環境中の使い捨てプラスチックの漏出が相対的に抑止されています」

実は、これが国連における日本の評価だ。つまり、日本においては「レジ袋」を禁止しなくてもプラスチック問題について極めて高い成果が上がっている、とされているのだ。

■小泉進次郎大臣は日本の政治家なのか

日本から直接的に海洋に排出しているプラスチックごみは年間4万トン程度とされている。これは日本で年間生産されるプラスチックごみ全体の0.5%以下の数字にすぎない。どのようなことをしても漏れは一定数であるため、これは日本人が限界まで取り組んだ結果と言えるだろう。2010年段階で隣国の中国は最大年間約400万トンの海洋排出可能性が指摘されており、日本とは比較にならない環境汚染が行われている。

日本のプラスチックごみの回収・燃焼システムは非常に高度なものであり、日本からの海洋プラスチック問題は深刻ではなく、さらにその中のレジ袋の占める割合など極僅かなミクロな問題でしかない。

したがって、プラスチックごみ対策のためには、日本の技術・社会システムを輸出して利益を上げることこそが重要であり、日本にレジ袋有料化を輸入することを推進することなど論外だ。今更、日本国民の意識改革など不要だ。

これが、筆者が「小泉進次郎大臣は日本の政治家なのか」と主張するゆえんである。彼は海外で流行っているものをむやみに日本に持ち込み、日本国民の生活・経済を破壊するパフォーマーにすぎない。むしろ、日本の政治家ならこれを好機とみなし、日本の社会システムを海外に売り込んで利益を上げることに注力するべきだ。

■日本から輸出された廃プラスチックは東南アジアの経済を支えた

また、日本に海洋プラスチック問題に一定の責任があるとしたら、それは日本からの廃プラスチックの輸出に伴う、中国・東南アジア各国からの海洋排出の問題だろう。日本は年間140万トン程度の廃プラスチックをアジア各国中心に輸出してきた。日本から輸出される廃プラスチックは各国で安価な資源として利用されることで、それらの国の経済成長を支える一助となってきた。

しかし、廃プラスチックを輸入してきた国の人々は、日本人と同じように高度な廃棄物処理システムや高い国民意識を持つことはできず、河川などを通じてプラスチックを海に放ってきた。近年になって中国は廃プラスチックの輸入を禁止したため、日本からの輸出は東南アジア中心となり、現在でも年間90万トン程度の輸出が続いている。しかし、それらの輸出も徐々に輸入国が禁止し始めているので、いずれは日本からの輸出が難しくなることは明白だ。したがって、今後、日本は輸出用の廃プラスチックを国内で処理する仕組みを適切に動かすことが求められることになるが、これは国民の意識改革とは関係なく、単なる設備投資・維持更新の問題である。

■結論、小泉進次郎は社会のゴミである

はやりものに飛びついてパフォーマンスを繰り返す環境大臣こそが「社会のゴミ」である。

「肉食巡り省庁バトル 『議論を』と環境省、反発の農水省」(朝日新聞)という8月15日付の記事を見たが、環境省は肉食を減らす運動を推進しようとしているようだ。

これは欧米における「CO2排出抑制のためには牛のゲップも許さない」という風潮の延長線上の主張だろう。近年、環境活動家は地球上のありとあらゆるCO2の排出に文句を述べるようになってきている。その活動内容は過激さを増しており、欧米であったとしても必ずしも一般の人々から理解が得られているわけではない。

本件については農林水産省が反発しているが、畜産業振興の観点からそれは当然だろう。人間の社会生活・経済生活が第一であり、環境省が日本の産業を破壊して回ることは許されない。まして、米国に訪問した際にステーキハウスを訪れて「毎日食べたい」と発言しながら、日本国内で環境活動家向けアピールとして「肉食を禁止」する、信念の欠片すらないパフォーマンス担当大臣が推進する政策を受け入れる必要など全くない。

■日本人に無意味な苦行を強いる進次郎くんの頭のなか

直近では、小泉環境大臣が介入したことで、日本の高性能石炭火力発電所の海外輸出を政府が支援しないことが決まった。仮に日本がやらなかったとしても、中国やインドなどの他国の発電事業者が進出して世界市場のシェアを奪っていくことになる未来が訪れるだけだ。また、途上国は理想論で再生エネルギーを採用することがコスト的に難しいため、少しでも良い発電システムを使うことを望んでいるのも明らかだ。一体これは誰のための政策なのか。

レジ袋有料化の「真の目的」は「小泉進次郎大臣が国際社会の環境関係者にオベッカを使いたい」「前回恥をかいたことの汚名を返上したい」ということだろう。日本人に無意味な苦行を強いるとともに、日本の産業活動・企業活動を破壊するパフォーマンスを繰り返すことに、なぜ日本国民は税金を支払う必要があるのか。日本人のために働けない政治家を廃棄物処理に回すべきだ。

----------
渡瀬 裕哉(わたせ・ゆうや)
早稲田大学招聘研究員
国内外のヘッジファンド・金融機関に対するトランプ政権分析のアドバイザー。
----------

(早稲田大学招聘研究員 渡瀬 裕哉)