新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行を抑えるため、各国では「社会的距離」を保つ戦略が実施されています。他者との物理的な接触を減らそうとする意識の高まりにより、「出会い系アプリの使い方が変わってきている」と、ウェスタンシドニー大学の文化・社会研究所に所属するリサ・ポートラン氏が主張しています。

The safest sex you'll never have: how coronavirus is changing online dating

https://theconversation.com/the-safest-sex-youll-never-have-how-coronavirus-is-changing-online-dating-134382

新型コロナウイルス感染症が流行する中で、出会い系アプリは社会的距離が推奨されている状況下で責任を果たそうとしています。Tinderは異性とマッチングしたユーザーに対し、「あなたの健康が私たちの最優先事項です」と訴え、デート中も頻繁に手を洗ったり顔に触れたりしないように呼びかけるポップアップを表示していると報告されています。



出会い系アプリは異性との出会いをオンラインで求めるものですが、多くのユーザーは最終的に現実世界で相手とデートすることを望んでいます。そのため、不要不急の外出を控えるように呼びかけられている中では出会い系アプリの利用率も減ると考える人も多いはずですが、実際には以前よりも多くの人々が出会い系アプリを利用しているとポートラン氏は指摘。

アメリカでも新型コロナウイルス感染症が拡大しつつあった3月5日〜10日の間、出会い系アプリのOkCupidはアメリカ国内でのチャットが7%増加したと報告。また、Bumbleという出会い系アプリは3月の第2週にユーザー数が8%増加し、3月12日〜22日の期間中にシアトルとニューヨークでは23%、サンフランシスコでは26%も送信されるメッセージの量が増えたとのこと。さらにインドでも、Tinder上で交わされるメッセージの量が増えていると報告されています。

社会的距離を取ることが推奨される中でも異性とのつながりを求めるユーザーの需要に応じ、出会い系アプリは関係の大部分をアプリ上で築く方法を提供し始めています。出会い系アプリの中にはビデオ通話機能を改良し、マッチングしそうなユーザーと無料のビデオ通話を数十秒〜数分単位で行い、気に入ったユーザーを登録できるようなシステムも実装され始めているそうです。



社会的距離が推奨されている中でも出会い系アプリが人気な理由についてポートラン氏は、出会い系アプリが退屈をまぎらわせつつ他者とつながり、リスクを下げる解決策となっているからだと考えています。「以前はオンライン上でパートナーと出会うことは、現実世界での出会いと比べて不健全だとみなされていました。しかし、2020年ではオンラインでの出会いがより安全だとみなされています」と、ポートラン氏は指摘しました。

ニューヨーク市保健局が3月27日に発表した市民に向けた(PDFファイル)通知には、「You are your safest sex partner.(自分自身こそが最も安全なセックスパートナーです)」と記されており、市民にはセックスではなく自慰行為が推奨されました。社会的距離を保つ政策は数カ月にわたって続く可能性もあることから、人々のセックス習慣が大きく変わることも予想されています。

既に長期間にわたるセックスレスを見越してか、大人のおもちゃは売り上げが急上昇しているそうで、イギリスでは以前よりも13%、イタリアで71%、カナダではなんと135%も大人のおもちゃの売り上げが伸びているとのこと。短い期間ではあるものの、人々の性的交渉は非常に大きな変化を迎えているとポートラン氏は述べました。