メディア業界のイベントスケジュールは新型コロナウイルスによる混乱がなくても十分にあわただしいが、その影響で多くの主要業界イベントが秋に延期されている。

夏が終わればこの状況もやや落ち着くのではという想定のもと、今年前半に開催される予定のイベントの大半が、当初から予定されていたイベントとともに狭い枠のなかに詰め込まれている。そのごく一部を見てみよう。

9月6〜9日:ドバイ・リンクス・インターナショナル・フェスティバル・オブ・クリエイティビティ(Dubai Lynx International Festival of Creativity:3月から変更)
9月14〜17日:ショップトーク(Shoptalk)/ラスベガス(3月から変更)
9月14〜17日:アドバタイジング・ウィーク・ヨーロッパ(Advertising Week Europe)/ロンドン(3月から変更)
9月23〜24日:ドメキシコ(DMEXCO)/ケルン
10月5〜8日:アドバタイジング・ウィーク・ニューヨーク(Advertising Week New York)
10月20〜23日:ANAマスターズ・オブ・マーケティング・カンファレンス(ANA Masters of Marketing Conference)/オーランド
10月26〜30日:カンヌライオンズ(6月に予定どおり開催できなかった場合)
秋実施(日程未定):ザ・4A’s・マネジメント・プラクティショナーズ・フォーラム(The 4A’s Management Practitioners Forum:3月から延期)

これらのほかにももちろん、今年後半に延期された、あるいはすでに予定に組み込まれていた、B2Bビジネスやパブリッシャーなどが開催する小規模イベントもある。また、多くの社内イベントも今年後半に先送りされており、これらもカレンダーの混雑に拍車をかけている。

今年後半は倍の働きが必要

新型コロナウイルスのアウトブレイクによる混乱は、イベントだけにとどまらず、多くの国々でビジネス機能や人々の日常生活の大部分にも影響を与えていることは確かだ。この状況がいつまで続くのか、経済にどれだけの爪痕を残すのかは、はっきりとしていない。表面上の平常が戻ってくれば、小売や旅行、高級品など、さまざまなセクターの企業幹部は、失われた売上を取り戻すことに全力で取り組むことになるだろう。

「こうした(先送りになった外部)イベントにマーケターを出席させるのは、現実的な問題になっている」と語るのは、マーケティングコンサルタントで研究者のマーク・リトソン氏だ。「グローバルで、大規模ブランドの関係者らから話を聞いているが、新型コロナウイルスのアウトブレイクにより、売上が40、50、あるいは60%減少しているということだ」。

「たとえ8〜9月に新型コロナウイルスにひとつの結論が出ても、これらの企業のどこにも資金など残っていない。同等の短期収入を第4四半期に組み入れるためには、倍の働きが要求されるはずだ」と、リトソン氏は付け加えた。

イベント主催者も、見込まれる収入減の年内の埋め合わせをめざすことになるだろう(彼らが加入している保険の多くが感染症の悪影響は保証していないのだから、なおさらだ)。出席者や講演者、スポンサー、利用可能な大会場をめぐる激しい争いが行われることになりそうだ。

注目されるイベントのROI

マネジメントコンサルタンシー、スパロウアドバイザーズ(Sparrow Advisers)の共同創業者であるアナ・ミリセビック氏は「いまの私たちは、これが持つ副次的効果に対する理解の表面をなでているだけなのではないか」と語る。

この思いがけない沈黙期により、多くのメディア幹部がどのカンファレンスが参加必須なのかを見直すことになるかもしれない。今年後半のカレンダーの混雑ぶりを考えると、そう思えてならない。

「差し迫ったロックダウン(封鎖)やスケジュール変更により、我々は業界イベントのROIに目を向ける機会を得ることになった」と、ミリセビック氏は語る。「かなりの関係者が各カンファレンスのROIの理解にリベラルなアプローチを取るようになっている……そこにはある種のマッスルメモリーがある」。

イベントを延期するか中止するかの選択は、スポンサーシップにも影響を与えるおそれがある。年間を通して一連のイベントを後援する企業は、年後半の短期間にこうしたマーケティング活動を強引に押し込むことに利点を見出さないかもしれない──金を出したところで、どのみち次の事業年度までは収益が出ないかもしれないからだ。

「いずれ元に戻ると誰もが想定していると思うが、一度でもCFOに会ったことはあるだろうか? 資金を投じる機会が消えるやいなや、すぐにその機会を利用するのが彼らだ」と、ミリセビック氏はいう。

ますます「差別化」が重要に

アドバタイジング・ウィークのイベントを手がけるスティルウェル・パートナーズ(Stillwell Partners)がアドバタイジング・ウィーク・ヨーロッパを延期した背景には、「2020年を失わないために」という目的があると、同社のグローバルCEOを務めるマット・シェクナー氏は話す。「パートナーたちの反応は非常に謙虚なものだ。誰もが理解を示してくれている。長い付き合いがあったればこそだ。いままさに、業界内の人々のあいだに仲間意識が生まれているように思う」。

アドバタイジング・ウィーク・ヨーロッパは、いつもより混み合った場所に足を踏み入れることになった。シェクナー氏によれば、スティルウェル・パートナーズは常に、幹部クラスを対象とする招待制の朝食会や、深夜のポップコンサート、オンライン学習プログラムなど、さまざまな活動をラインナップし、自社が手がけるイベントの差別化をはかってきたという。「我々のプロダクトは万人向けに開発されている。若い人たちも参加できるし、地理的にもアクセスしやすい。参加費という点でもだ」と同氏は付け加える。

英国のB2Bメディア/イベント企業、インフォーマ(Informa)は3月第2週、新型コロナウイルス危機のために130近くのイベント(今年これまでの予想売上のうち、およそ4億2500万ポンド[約534億円]相当)を延期・中止したと発表した。インフォーマCEOのスティーブン・カーター氏は、同社の延期プログラムに関連する売上のどのぐらいが今後また生じるのかについては、確信が持てないことを認めている。

「希釈効果は発生するのか、減衰効果は発生するのか、人々はもう二度と飛行機に乗りたがらないのか……これらに関する判断をすべて自ら下さなければならない」と、カーター氏は3月10日に行われたアナリスト向けのプレゼンで述べた。一連のイベントを今年後半に延期できるのは、インフォーマが「スケールとリーチ、場合によっては人間関係、また別のケースでは影響力のおかげで、選択できる力を手に入れた」からだと、カーター氏は語った。

「過剰反応で間違えたほうがいい」

だが、必ずしもすべての企業に大型イベントを中止・延期できるだけの力があるわけではないはずだ。

「建物は限られており、大きなショーの多くは世界でもっとも占有率が高い会場で行われている」と、イベント企業のマンダース・テラス・リミテッド(Manders Terrace Limited)のCEOを務めるパディー・コスグレイブ氏は語る。マンダース・テラスは巨大年次イベント「ウェブ・サミット(Web Summit)」のオーナーで、同イベントはいまのところ予定どおり11月にリスボンで開催されることになっている。「たとえば、エクセル・ロンドン(ExCeL London)がそうだ。大きなショーのなかには、設営に何週間もかかるものもある。ベンダーもサプライヤーもふたつの場所に同時には参加することができない。出席者にも出展者にも同じことが言える」。

マンダース・テラスはテックカンファレンス「コリジョン(Collision)」のオーナーでもある。同イベントは6月にトロントで開かれることになっていたが、いまのところオンラインのみのイベントとして開催されることになっている。出席者はトークをライブ視聴でき、バーチャルワークショップにも参加できる。また、ユーザーに最適と思われるコンテンツや人々を紹介するアプリ「コリジョン・フロム・ホーム(Collision from Home)」使えば、人脈をつくることもできる。

「このような状況では、反応が鈍いせいで間違いを犯すよりも、反応が過剰なせいで間違いを犯したほうがまだましだ」と、コスグレイブ氏は述べている。

Lara O'Reilly (原文 / 訳:ガリレオ)