テクノロジーの進化とともに、ソーシャルメディアへのデジタル広告出稿が増加し、フリーランスのメディアバイヤーは、大規模なエージェンシーや企業に勤務しなくても仕事ができるようになってきた。

匿名を条件に、本音を語ってもらう「告白」シリーズ。今回は、アメリカでフリーランスのメディアバイヤーが、どんなふうに仕事をしているのか、支払サイトの延長がフリーランサーに及ぼす影響、報酬が支払われるまでに30日以上待たななければならない仕事を受けない理由などを語ってくれた。

インタビューの内容は読みやすさを考慮し、多少編集を加えてある。

──フリーランスのメディアバイヤーとして、どんな働き方をしているのか聞かせてほしい。クライアントはエージェンシーなのか、ブランドなのか、それとも両方か?

エージェンシーから仕事が来ることもある。仕事が多すぎて人員が追いついていないからというものもあるし、チームメンバーの経験があまりに浅くて手助けが必要だからという場合もある。ほかにも、製品発売前のメディア購入にサポートを必要としている大手ブランドの仕事も経験してきており、そういった場合は数カ月間その仕事をすることになる。ペイドメディアに一気に費用を投入し、その後はほどほどに、というようなプロジェクトで購入を担う形だ。いずれにせよ、エージェンシーやブランドは、そうした仕事をフルタイムで担当する人員を雇いたがらない。クライアントが望んでいるのは、さっさと仕事を終わらせてくれることだけだ。それから、大手エージェンシーの費用を払いたくないというのもあるだろう。私の報酬は、そうした大手エージェンシーよりは安い。

──どんなメディア購入を担当している?

私が手掛けているのは、GoogleやFacebook、それからポッドキャストなどのペイドメディアだ。テレビやラジオ、新聞のペイドメディア購入はやったことがない。最近はビルボード(広告看板)も流行っているので、クライアントに提案することもある。

──フリーランスになって、エージェンシーでフルタイムの仕事をしていた時よりも収入は増えた?

間違いなく増えている。収入は以前の3倍になった。企業に勤務していると収入源はひとつしかないが、フリーならクライアントも収入源も複数になる。大事なのは、自分の仕事をきちんと評価して、正当な対価を払ってくれる人たちを見つけることだ。1時間50ドル取るべき仕事を、1時間10ドルで受けてはいけない。私の仕事は安くないが、決して高くもない。1時間50ドルでと言われた仕事は、それではできないからと断ることが多い。仕事はほかにも沢山ある。私は1時間150ドル未満ではベッドから出ない。そんな時間はないからだ。

──フリーランスでメディア購入をするのと、クリエイティブの仕事をするのに違いはあるか?

仕事の内容はまったくの別物だ。どちらのほうがフリーランスとして仕事がしやすい、というのはないと思う。両方とも大抵は納期が厳しい。エージェンシーと仕事をするときは、私はフルタイムではないので、本当の緊急事態でない限りは月曜日に対応する、とクライアントには正直に伝えるように言っている。

あとはどちらの仕事でも、プロジェクト、チャネル、ビジネスを救ってほしいからと、最後の最後に参加を求められることがあるのが大変だ。フリーランスに仕事を依頼したいと考えている場合は、早い段階で依頼して、成功させるために必要なリソースはすべて提供してほしい。フリーランスで関わる人たちも、同じようにその仕事を成功させたいと思っている。経験に基づく、しっかりしたアドバイスをしてくれている場合は、きちんと耳を傾けるべきだ。

──最近では、エージェンシーの支払サイトが30日から、90日、120日と長くなってきていると聞く。何か影響を受けている?

最初の頃は、支払サイトは30日でないと受けないと決めていた。30日以内に支払いをしてくれるところはほぼないので、最長で30日に設定した。なぜそうしたかというと、フリーランスになりたての頃に仕事をしたあるエージェンシーが、45日後に支払するという会社だったからだ。仕事を納めてから、支払いがされるまで45日も待つ余裕はない。

昨年には支払サイトを15日間に変更した。どの取引先も、まだ何も言ってきていない。おそらくそのうち、どこかのエージェンシーが「45日でお願いできないか」と言ってくるだろう。そのときは仕事を断るまでだ。私が仕事を納めたから、エージェンシーはクライアントに納品できるのに、エージェンシーとクライアントのあいだで決めた支払いサイトがあるから、私が支払いを受けるのを待たなければならない、などという状況は受け入れられない。エージェンシーとクライアントが決めた条件は、私とエージェンシーとの条件とは違うものだ。

──なぜ15日の支払サイトが受け入れられているのだろうか? なかなかない条件だと思うが。

自分の発言に自信を持ち、仕事を断るのを恐れないことだ。キャッシュフローが良くないと、フリーランスで自営はできない。相手がいくら素晴らしいブランドでも、45日の支払サイトで事業をめちゃくちゃにされてしまうのであれば、それは相手があなたを人間や会社としては評価しておらず、ただ誰かに仕事をやってもらえればいいと思っているということだ。事業にとって重要なのは、結局のところキャッシュフローだ。ひとりで仕事を受けているフリーランサーの場合、クライアントからの支払いが一度なかっただけでも、事業が潰れる可能性がある。ホールディングカンパニーであれば取引先も大量に抱えており、どこかひとつ支払いが遅れても、多少の痛手があるくらいで、事業を支える巨額の資本があるのだから問題ないというのが現実だ。

──支払サイトの問題は悪化している?

間違いなく悪化している。クライアントは支払いまでの期間を引き延ばしたがる。エージェンシーによっては支払サイトが60日とか90日とかいう記事を目にすることがあるが、(エージェンシーが)クライアントの言いなりになり、酷い扱いを許しているとしか思えない。それではやっていけないと、もっと多くのエージェンシーが声を上げるべきだ。エージェンシー、なかでも大手エージェンシーが声を上げないと、クライアントはやりたいようにやり続けるだけだろう。

──エージェンシーがノーと言っても、クライアントは別のエージェンシーを使うだけだ。フリーランサーにも同じことが起こるのでは?

クライアントは自分たちには絶大な権力があると思っているが、実際はそうではない。エージェンシーや、フリーランサー、従業員らが皆で抵抗すれば、企業は耳を傾けざるを得なくなる。フリーランサーを使うエージェンシーもそうだ。エージェンシーの仕事をしないという人が増えれば、対応するしかなくなるはずだ。

だが、エージェンシー同様、それでは生きていけないだろうという報酬でも仕事を受けてしまうフリーランサーがあとを絶たないのも現実だ。残念な悪循環に陥っている。

──支払サイト15日という条件を提示して、笑い飛ばされたことはある?

拒否されたことは一度もない。問題があるとすれば、依頼する側がフリーランサーを事業ではなく人間として見ていることだ。だから、フリーランサーには期日通りに支払わなければならないという感覚が薄い。しかし実際は、フリーランサーも事業なのだ。税金も支払わなければならないし、自分自身に給与を支払う必要もある。ツールやテクノロジーに投資もしなくてはならない。

私の場合は、必ず毎月1日と15日に請求を行い、そこに例外を作らないようにしているのが効果を発揮している。それが、こちらも事業であり、漏れなく支払いをしてもらう必要があるということをクライアントに意識させるのに役立っていると思う。請求を早くすれば、支払いも早くされる。だが、それをしていないフリーランサーが、驚くほど多いのだ。

Kristina Monllos (原文 / 訳:ガリレオ)