創業40年以上の老舗ヘアカラーブランド、マニックパニック(Manic Panic)が採択した新進ブランド勢への対抗策は、一般的なそれとは違う――彼らはいわば、時計の針を元に戻そうとしている。

マニックパニックは2020年1月15日、自社サイトのManicPanic.comで、創業以来初となるヘアケア製品(シャンプー2種とコンディショナー1種)の販売を開始した。さらに、1月末までにウィッグ、第2四半期にはヘアツールにも手を広げていく。2019年10月には、ブランドをイメージしたスマホケースも発売。これら新製品はいずれも、同ブランドをライフスタイル的視点と紐付けるためのものであり、これはマニックパニックのDNAに織り込まれている基本理念だと、共同創立者ティッシュ・ベローモ氏はいう。

「多くの人は弊社の豊かな歴史を知らない。パンクシーンのなかで誕生したという背景も、我々がインディペンデントブランドだという事実も知らない」と、ベローモ氏は語る。同氏は姉妹のアイリーン“スヌーキー”ベローモ氏と、1977年に同社を興した。当初は、イーストビレッジに店舗を構え、ヘアカラーや衣料品、レコードや小物など、パンク関連のプロダクトを販売していた。

ライフスタイル的視点が重要

その後、イーストビレッジの店舗を1989年に閉め、マニックパニックはヘアカラー専門の卸販売に切り替えたのだが、ここにきて、コスメおよび日用品ブランドにはライフスタイル的視点が欠かせないことに気づいたという。

マニックパニックはアルタ(Ulta)、CVS、ホットトピック(Hot Topic)といったリテーラーを介し、42カ国で販売されているが、彼らの代名詞だった大胆なヘアカラーはいまや市場の主流であり、そのため同社は難局に直面している。さらに、グッドダイヤング(Good Dye Young)やパルプライオット(Pulp Riot)、ライムクライム(Lime Crime)といったデジタルファーストブランドの登場により、競争は激しさを増している。そんななか、ライフスタイル製品の開発は売上の促進だけでなく、マニックパニックが有するブランド力の強化にもつながり得ると、ベローモ両氏は考えるに至った。実際、具体的な数字こそ明かさなかったが、同社の売上は2019年、前年比+15%の伸びを記録したという。

「マニックパニックの名前をあちこちで目にするようになれば、総合的なライフスタイルブランドという認識が広まることが期待される」と、スヌーキー・ベローモ氏。「いまは、弊社の歴史をあらためて前面に出している。多くの人々が我々の背景を知らないし、マニックパニックは[そういう]歴史を持つ唯一のブランドだからだ」。

「SNSには、まだ慣れていない」

ただし、こうした努力が報われるか否かは、現時点では何とも言えない。マニックパニックは古参だけに、ソーシャルメディアに最初から親和性の高い新進ブランド勢に遅れを取らないよう躍起になっているのだが、スヌーキー・ベローモ氏も認めているとおり、ここまでは苦戦を強いられている。同社のインスタグラムフォロワー数は現在37万5000人。これに対し、パルプライオット(2016年設立。2018年5月、世界最大のコスメ/ヘアケアブランド、ロレアル[L'Oreal]が買収)には89万5000人のフォロワーがおり、グッドダイヤングも4年前に創業したばかりだが、すでに20万人以上のフォロワーを獲得している。また、同じくコスメとヘアケアの両分野を扱うライムクライムには350万人以上のフォロワーが付いている。ヘアケア製品とウィッグの販促法についてはいまだ検討中だが、予算上の制約と信頼性に関する懸念から、インフルエンサーはほぼ起用しない意向だと、ベローモ両氏は語る。

「我々が誕生した頃にはもちろん、ソーシャルメディアはなかったわけであり、SNSを利用した販促には正直、まだ慣れていない」と、スヌーキー・ベローモ氏は認めている。

EMMA SANDLER(原文 / 訳:SI Japan)