今日、ブランドの立ち上げは簡単になった。インフラストラクチャーは使いやすくなり、デジタルマーケティングによってブランドは、新製品の情報を流すために、大金を費やしてテレビ広告を出したり、カタログを印刷したりしなくてもよくなった。代わりにFacebookを使えば費用は10分の1で済み、クリックベースのアトリビューションのおかげで、サイト閲覧者のうちの誰が製品を購入したかも正確にわかる。

その結果、D2C(direct-to-consumer:直販)ブランドの大量発生という事態が起こった。D2Cブランドは、Facebookでのマーケティングを手助けし、新既顧客獲得につなげてくれるエージェンシーに喜んでお金を払う。匿名を条件に本音を語ってもらう告白シリーズ。今回は、いくつかのエージェンシーを渡り歩き、D2Cブランドをメインとするエージェンシーを最後にフリーランスに転身した元マーケターの話を聞いた。この人物は、D2Cブームの最初の頃、エージェンシーがブランドを厳しく審査できずにいたことや、「ブラックフライデー」が間近に迫るなかでFacebookで遭遇している問題について語ってくれた。

なお、インタビューの内容は読みやすさを考慮し、多少編集を加えてある。

──D2Cブランドが求めているものは何か? 最後に籍を置いたエージェンシーで見たものは?

我々は、たくさんの初心者、あるいは、まだ経験の浅い人間に起業させた。その多くはマーケティングの基礎知識を持っていなかった。彼らの平均売上は0ドル〜2500万ドル(約27億円)のあいだだった。彼らはFacebookの有料マーケティングの側面を知らず、「ソーシャルで成功するためには、どんなクリエイティブを作ればいいのか?」となる。バリュープロポジションがわかっていないので、クリエイティブのこともわからない。

──どのようにして、彼らと仕事を進めたのか?

我々マーケターは、必ずしもそうした問題を解決するためにいるのではなく、人々が彼らのUSP(unique selling proposition:独自の売りの提案)に引き込まれるような、ストーリーを語るための良い方法を見つけるためにいる。彼らは我々のところへやってきては「これはうまくいっていない。なぜうまくいかないのか?」とか、「なぜこの製品は違うのか?」とか口にする。我々は相手のブランドにそこまで詳しくないので、歩み寄るのは我々のほうだ。あなたはそのブランドを作った人間だが、あなたのメッセージを我々はどうやって世界に伝えるべきなのか?

──Facebookの利用を減らし、代替手段を見つけると誰もが言っている。Facebookを通じて顧客を獲得しているクライアントの割合はどの程度か?

75%以上、いや80%以上、圧倒的と言っていいだろう。

──そのやり方はまだ機能している?

私は毎日Facebookにログインしていて、目下、ちょっとしたパニックに陥っている。いまは第4四半期で、毎年第4四半期になると、コンバージョンが大きく跳ね上がるものだ。それまでの数カ月間、これを期待して数百万ドルを費やしてきたが、まだその増加が確認できていない。もう2週間しか猶予はないのに。これには驚いている。

──代替手段は見つかっている?

人々は「Snapchat(スナップチャット)へ行こう」と話しているが、Snapchatはまだ過報告している。購買に関与していて、売上のうちのX相当をもたらしていると主張しているが、実際にカートのなかやショップファイ(Shopify)を見てみると、似たようなもので、「確保さえされていない」ということがある。この報告問題があるので、いまのところFacebook以外のプラットフォームを信用するのはとても難しい。真のインサイトを得る能力は構築されていない。ピンタレスト(Pinterest)やYouTubeは、その途上にあると私は思う。

有料ソーシャルという側面では、人々はこうした他チャンネルに投資したがっているが、同時に、そういうチャンネルに特化して機能するコンテンツにも投資しなければならない。それが越えなければならないもうひとつのハードルになっている。

──ビジネスをはじめるのは簡単だ。だが、ブランドをはじめるのは難しい。D2Cブランドについて人々が気づいていないことは?

2017年、2018年に、ドロップシッピング(在庫を持たず、受注後にメーカーなどに発送を依頼する取引形態)や、かなり低品質の製品を再梱包、または発送することしかしない偽のフロントブランドが登場した。これがD2C体験をダメにしたと言えると思う。「正当な」という言葉で私が意味するのは、半年から1年はビジネスをしている企業だ。Facebookで売っていると、消費者はFacebookやGoogleが製品を送ってくると信じてしまう。ウェブサイトを離れてしまうと、それがどこから来るかを見分けられないこともある。

──ドロップシッパーを相手にしている、一部のエージェンシーにも問題があると感じている?

必ずしもドロップシッパーだとは思わないが、(注意する必要がある)人間が3種類いると思う。ひとつはドロップシッパー、つまり短期間で素早く稼ごうとする人間だ。彼らは市場機会をとらえ、「今ならXドル儲けられるぞ。一緒に仕事できる最善の相手を探そう」と考えて行動する。

ふたつ目は、「どうだ、ここに最高の製品がある。私が開発したもので、画期的な製品だ。我々が使った予算をすべて4倍にして回収する必要がある」と言ってくる人間だ。そういう相手に対して私は「あなたはどうかしている。あなたのブランドのことを誰も知らないのに、どうやったらそんなことができると思うのですか?」と答える。

みっつ目は、新参者であることはわかっていて、いわゆる「データ購入」が必要で、自分が何をすべきか、どんな視点立つべきか、どんなクリエイティブを作る必要があるかを学びたいと言ってくる人間だ。それには多くの学習が関与する。候補が3人いるとしよう。「Aは嫌と言い、Bも嫌だと言う。Cをとても気に入ってくれたとして、Cのような人、つまりブランドに投資しビジネスの成長を喜ぶ人は簡単には見つからない。そこへたどり着くまでに、たくさんのドアを叩いて回らなければならないだろう。

Anna Hensel(原文 / 訳:ガリレオ)