3万円台から購入できる第7世代のiPadが10.2インチの画面にサイズアップして登場

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 アップルが第7世代のiPadを発売した。全国の家電量販店やECショップのPOSデータを集計する「BCNランキング」が直近で公開したタブレットの実売台数ランキングのデータを見ても本機への注目度の高さがうかがえる。最も安価なモデルが3万円台から購入できるというコストパフォーマンスの高さ以外にもどんな魅力が購入者を惹きつけているのだろうか。

●サイズアップした10.2インチRetinaディスプレイを搭載



 新しい第7世代のiPadが、2018年の春に発売された第6世代のiPadから変わった点の一つが、9.7インチから10.2インチにサイズアップされたRetinaディスプレイだ。11月2日に日本でもサービスが始まったアップルの新しい動画配信サービス「Apple TV+」や、100タイトルを超えるゲームを月額600円で無制限に提供する「Apple Arcade」など、エンターテインメント系のコンテンツがより快適に楽しめる。

 チップについては64bitアーキテクチャの第4世代「A10 Fusion」と、組み込み型の「M10」コプロセッサの組み合わせを第6世代のiPadから継承している。グラフィックスに凝ったゲームやAR系のアプリも快適に動かせる。

 上位モデルであるiPad Pro、iPad Airとディスプレイの画質を見比べてみても、明るさや色合いの自然なバランスは見劣りしない。ひとつ差を感じるとすればApple Pencilの使い心地だろうか。

 新しいiPadには液晶パネルにタッチセンサー、ガラスパネルを一体化したフルラミネーションディスプレイが採用されていないため、Apple Pencilをディスプレイに当てて描画した後に、ペン先を斜めの角度からのぞき込むと、カバーガラスと線との間に少しギャップがあることがわかる。

 フルラミネーションディスプレイ搭載のiPad Proはそのギャップがより小さく、画面の表示更新が速いProMotionテクノロジーにも対応しているため、Apple Pencilによる描画が滑らかだ。もしイラストや漫画を書いたり、画像データの細かな編集作業をメインに使いたいと考えているのであれば、Apple Pencilの描き心地を店頭の実機でしっかりと比べてみると良いだろう。

●純正のSmart Keyboardに対応した



 第7世代のiPadからアップル純正のSmart Keyboardに対応した。これで現行ラインアップとして販売されているiPadの中では、iPad miniを除いてSmart Keyboardが使えるようになった。

 Smart Keyboardについては独自のSmart Connectorを介してiPadと接続するため、充電が要らないところがBluetoothキーボードと比較したときのメリットになる。さらにiPadのディスプレイカバーにもなるので一挙両得だ。

 日本語対応のSmart Keyboardは10.5インチのiPad Air用のアクセサリーと兼用ができる。価格は税別1万7800円。もし2017年に発売されて、現在は生産が完了しているiPad Pro 10.5インチのSmart Keyboardを持っていれば、これも同じく使える。

 筆者は指が細く、手も小さいので10インチ台iPad向けのSmart Keyboardのキーピッチはさほど苦に感じない。ただ、とてもスリムなキーボードなのでキーストロークはどうしても浅くなる。こちらもまた購入前に店頭のデモ機を試しておきたい。

●PCライクにマルチタスク操作を使いこなす



 第7世代のiPadは、iPadのために最適化された「iPadOS」を載せた状態で出荷されている。iPadで複数のアプリによるPCライクなマルチタスク操作を使う機会が増えてきたら、「Split View」と「Slide Over」はマスターしておきたい。

 Split ViewはiPadの画面を左右に分割して、同時に2つのアプリを実行するモードだ。マップを開いて待ち合わせ場所をメールアプリにドラッグ&ドロップして送ったり、Webブラウザで調べ物をしながらテキストを書く作業にも向いている。

 iPadOSからSplitViewが「メールとメール」のように、1つのアプリを分割した2画面で表示できるようにもなった。送られてきたメールの文面を確認しながら、新規にメールの入力をすることもできる。

 もう一つのSlide Overはアプリの画面に、別のアプリを子画面のレイヤーとして立ち上げて実行できる機能だ。Slide Overで立ち上げている子画面にマルチタスクで使いたいアプリをドラッグ&ドロップしておき、素速く切り換えられる機能がiPadOSから加わった。覚えておけば便利に使える機会が訪れるだろう。

iPadOSのブラッシュアップされた「ファイル」アプリと外部ストレージ読み込み



 iPad 13、およびiPadOSから、iPadの本体内、またはiCloud DriveやDropboxなどのオンラインストレージに保存しているファイルを一覧管理できるアップル純正の「ファイル」アプリが一段と便利になった。

 メールに添付されているファイルの保存先に「ファイル」アプリを選択して、PCのようにフォルダ分け管理が自在にできる。フォルダの新規作成や削除がiPadOSならではの直感的なタッチ操作を活かして手早く行える。

 iPadOSは外部ストレージメディアの読み込みにも対応した。第7世代のiPadの場合はLightning-USB変換アダプターを介して、外部記憶媒体のUSBメモリやSSD、SDカードを読み込む。

 ドキュメントファイルやデジタルカメラで撮影した写真の読み書きだけでなく、「ファイル」アプリの簡易なメディアプレーヤー機能を使って動画や音楽ファイルの再生も楽しめる。ただしストレージメディアの中にはiPadOSが認識するものとしないものがあるようだ。今後対応製品の幅が広がることを期待したい。

iPadにマウスが接続できるようになった



 そしてiPadOSでは無線・有線のマウスが使用できる。iPadのタッチ操作、Apple Pencilによる書き込みに慣れてしまったので、今さらマウスを使う必要性を感じないという方も多いかもしれないが、例えばフォトレタッチ系アプリでiPadの画面を指でなぞるよりも、マウスの方が時に精度の高い操作ができるので、一度は試してみることをおすすめしたい。iPadの画面をベタベタと触ることも少なくなるので、きれいな状態に保てる。

 iPadにBluetooth対応のマウスを無線接続する方法は次の通り。設定アプリを開いて「アクセシビリティ」のメニューに入り「タッチ」を選択する。続いて「AssistiveTouch」をオンにして「デバイス」からつなぎたいマウスの名前を接続、完了するとiPadの画面に丸いポインタが表示される。PCの矢印型ポインタに慣れると最初は違和感を感じるかもしれないが、iPadOSのポインタはユーザーの好みに合わせて大きさや色、スピードも変更できる。

●macOSとの連携も深まる



 2019年10月8日に新しいmacOS Catalina(10.15)の無料提供が始まった。iPadOSに関係する新機能に、MacのデスクトップをiPadに拡張またはミラーリングできる「Sidecar」がある。

 iPadの側でこの機能を利用するための環境条件はApple Pencilに対応するiPadに、iPadOSが入っていること。第7世代のiPadはもちろんその条件に合致する。操作感も快適だ。iPadは単独でメールやブラウザが見られるデバイスなので、単純にMacの隣に立てかけておけばいいじゃないかと思うだろう。筆者はMacでPhotoshopを立ち上げて、iPadとApple Pencilの組み合わせで細かい画像加工の作業ができるようになることが便利に感じた。

 3万円台から購入できるiPadの入門機とも言える第7世代のiPadに、キーボードとスタイラスペン、そしてマウスをつないでノートPCライクに使える魅力はとても大きいと思う。最安値のiPadとSmart Keyboardを5万円台の予算で揃えるところからスタートしても良い。ビジネスマンや学生のワーキングスタイルを革新するツールとして、あるいは動画に写真、ゲームや音楽などのエンターテインメントコンソールとしてユーザーの期待に力強く応えてくれるだろう。(フリーライター・山本敦)