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クルマの寿命、そもそもあるのか?

text:Wataru Shimizudani(清水谷 渉)

クルマに限らず、機械ものはすべからく使っていけば年月とともに劣化する。では、クルマにも寿命があるのだろうか。

博物館では、19世紀末のクルマ黎明期に作られたモデルが動態保存されている。日本でも70年近く前の大戦後から間もないモデルが、個人所有でナンバーを付けたままヒストリックカーのイベントなどに参加している光景も。

長距離走行ギネス記録にもなった、故アーブ・ゴードン氏と1966年式のボルボP1800。

もちろん、日常的に乗っているわけではないだろうけれど、キチンと手をかけていけば長い年月もたせることはできるというわけだ。

アメリカの故アーブ・ゴードン氏は、1966年式のボルボP1800を購入してから約480万km以上走行したという、乗用車の走行距離ギネス記録がある。地球と月の間を6往復以上したことになる距離だ。

定期的なメンテナンスを行い、また摩耗したり壊れた部品はすぐに交換しながら、彼はこのクルマで毎日約200km通勤していたという。

クルマを永く維持するために特別なことをやっていたというわけではないようだが、愛車に永く乗り続けたいのなら、見ならうべき点はありそうだ。

クルマの寿命とは、クルマそのものの問題より、劣化していくクルマを維持していくことができるか(維持していきたいか)という、オーナーの問題なのかもしれない。

クルマの劣化防止 ちょっとしたノウハウ

愛車を劣化させないためには、ちょっとしたことだけれど、やっておいたほうが良いことや、やらないほうが良いことがある。例えば、

エンジンをかけてすぐに発進しない

最近のクルマは暖機運転の必要はなくなっているけれど、それでもエンジンをかけたらメーター類などをチェックするとか、ひと息入れてから発進するようにしよう。

エンジンをフルに回すのは、水温が少し上がってから

水温計の一例。

いくら暖機運転の必要がないといっても、走り出してすぐにエンジン全開! なんて運転はエンジンや駆動系に負担をかける。

エンジンを高回転まで回して走りたいのなら、水温計の針が少し上がってから、最近のクルマは水温計がないモデルもある。

その場合は水温インジケータが消えてからにしよう。

クルマ留めにタイヤを当てたまま駐車しない

たいていの駐車場にはクルマ留めがある。

駐車時に、タイヤがクルマ留めに当たったら、サスペンションアームに無理な力がかかったままにならないよう、クルマ留めからタイヤを少しだけ離して駐車しよう。

Pレンジはパーキングブレーキのあとで

AT車の場合、ATのロックに負担がかからないように、Pレンジに入れるのは停車してパーキングブレーキをかけてからにしよう。

もちろん発進時は、その逆の順になる。

ステアリングの据え切りは避けよう

いくらパワステが付いているからといって、クルマを動かさずにステアリングを切る、いわゆる「据え切り」

タイヤもパワステポンプなども痛めることになるから、ステアリングを切るときは少しでもクルマを動かそう。

クルマは乗ったほうが劣化しない!?

前述のような、ちょっとしたことに気を配っていれば、愛車を劣化しにくくすることはできるはずだ。

前述のゴードン氏のクルマが永く使えた要因のひとつに「毎日約200kmの通勤」というポイントがある。

ゴードン氏が所有したボルボP1800の距離計。

クルマに限らず、機械ものはいったん動かしたら止めずに動かし続けるほうが効率が良いし、故障もしにくい。

毎日100km以上、月に3万km以上、年間で35万km以上も走るタクシーに故障が少ないのは、「一度エンジンをかけるとほぼ1日エンジンを止めることがないから」とタクシーの運転手はいう。

逆に、お子さんを駅まで送ることなどがメインとなるクルマは、エンジンをかけても水温が上がる前の5分くらいの走行でエンジンを切ってしまう。

「こんな繰り返しのほうがクルマには負担が大きいので、走行距離は少なくても故障の頻度は高くなります」と某ディーラーのサービスマン。

走行距離が増えれば部品は消耗するけれど、かといってクルマは動かさなくてもブレーキディスクが錆びたり、油脂類は酸化したり、樹脂類は経年変化で劣化する。バッテリーも自然放電していく。

また、クルマは保管状態でも劣化の頻度は変わる。屋根付き車庫ならクルマは汚れにくいけれど、湿気には注意したい。

愛車を劣化させないためには、適度にクルマを動かしたほうが良い。週末しか乗れなくても、エンジンをかけたら水温が安定するまでの時間と距離は走っておきたい。

もちろん、定期的なメンテナンスは忘れずに。

新車に乗り換え続ける楽しみもあるだろうが、気に入ったクルマとジックリ付き合っていくのも、クルマ好きの楽しみのひとつなのだから。