スキー場でも大活躍、Apple Watchを冬のニセコで使ってみた
ここは北海道、ニセコ。世界有数のスノーリゾートです。さらさらとしたパウダースノーでスキー・スノボを楽しむため、世界各地から観光客がやってくるこの地で、Apple Watchを使ったスキーにトライしてみました。

■便利なのは電車に乗るときだけじゃない


今回試したアプリ「snoww」は、スキーやスノーボードで滑走した記録を残せるほか、SNS機能も備わっていて仲間と楽しめるようになっています。

Apple Watchを使った記録は簡単。ゲレンデでスキーを始めるまえに、「記録スタート」のボタンを押すだけです(「Hey,Siri スキーをしよう」とSiriでも起動できます)。後はApple Watchをつけたまま滑っているだけで、自動で記録しつづけます。

優秀なのが、スキーの滑走本数を自動で識別してくれるところ。リフトで山の上まで上って、下まで滑走したのを1本として、滑走ごとの記録を表示できます。

▲リフトに乗っている間などに「今の滑りはどうだった?」と振り返れます

普段はあまり運動せず、スキーも久しぶりの筆者でしたが、滑りやすいニセコの雪に挑んでいるうちに、なんとか勘を取り戻し、最後は難し目のコースにも挑戦しました。

滑走の記録はiPhoneに自動で同期され、詳細な内容を見ることができます。滑走した回数や速度、高度といった情報はもちろん、自分の身長と体重の情報をもとにした滑走時の消費カロリーなども表示されます。

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また、Series 4なら滑走時の心拍数も常時取得されておあり、グラフとして表示できます。特に興味深かったのが地図上で経路を表示しつつ、そのときのスピードや心拍数を色で表示できる点。そのマップを見ているだけで「あの地点は狭くて急な道だったから特に注意していたな」とか「あの道は予想以上に凸凹していて焦ったな」といったように、滑った時の状況を自然とふり返っていました。

ただ「滑走の記録」ができるだけではない、というのもsnowwのポイント。snowwはスキー・スノーボードで滑った他のユーザーに公開できるコミュニティでもあるのです。


▲snowwアプリ。滑走情報に写真をつけてシェアできます

滑走記録はInstagramのようなタイムラインで表示され、スキー場で撮った写真をつけることもできます。スキーの記録をつけて回数や速さを競ったり、スキー旅行の思い出として残したりといった風に使えます。

また、これはiPhoneアプリの機能ですが、フレンドに登録した人がsnowwを起動して滑っているとき、iPhoneのAR機能を使ってその人の方角と距離を表示する機能があります。はぐれてしまった時には便利ですね。

■連絡ツールとして有能な「トランシーバー」


iPhoneにはなくてApple Watchだけに搭載されている、そんな機能がいくつかあります。その1つが「トランシーバー」。これは、押している間通話できるという、いわゆるPush-to-Talkアプリです。トランシーバーアプリの通話はFaceTimeとおなじ仕組みを使っており、iPhoneの連絡先に登録されたApple Watchユーザー同士で通話できます。



このトランシーバーアプリ、スキーで活用して特に便利だと感じたのは、1人乗りのリフトに乗っているとき。前後のリフトに乗っている同行者と会話して、「リフトを降りたら右側で待っていて」といった連絡を取ることができます。

スキー場のリフトではスマホを落下させると厄介なことになるため、気軽に出すことはできません。その点、Apple Watchだけで使えるトランシーバーアプリは特に適したシーンと言えそうです(ただし、Apple Watchを操作するために外したグローブを落とさないように注意!)。


▲スマホを出すと落としそうなリフトでは特に便利

お詫びと訂正(2019/03/17 20:00)

初出時、トランシーバーで「グループ通話が可能」としていましたが、これは誤りです。1対1通話のみに対応し、同時に複数の人と話すことはできません。お詫びして訂正いたします。

■つながってるけど、集中できる


Apple Watchはスマートウォッチなので、iPhoneの通知ももちろん表示されます。この「スマホを出さなくても通知が表示される」というのは地味なメリットですが、意外と重要かもしれません。

筆者のスマホには仕事上のメッセージやプライベートのLINEなどいろいろな通知が表示されますが、Apple Watchがぶるっと震えたら一目見て「これは反応するべきだ」という通知が来たときだけiPhoneを取り出すといった動きをすれば無駄がありません。スキー中にスマホを出せるシーンは限られているので、これも便利な機能と言えます。スキー中まで仕事のメッセージに拘束されたくはありませんが、恋人からのメッセージはなるべく早く返したいですからね......!


▲最高速度更新の通知がくるとちょっとうれしい

■いつもの運動もスキーも活動記録に


運動の記録は、アップル純正の「アクティビティ」アプリでもまとめて確認できます。アクティビティアプリには「アクティビティリング」というゲージがあり、毎日の運動量の目標を意識できます。

アクティビティリングは毎日の活動を「ムーブ(動いているか)」「エクササイズ(運動しているか)」「スタンド(立っているか)」の3つの視点で円グラフ上で示したもので、日頃のウォーキングなどのスキー以外の活動も記録できます。

スキーで激しく運動したこの日には、「エクササイズ」のリングが9周回転する表示(=日頃の目標の9倍を達成)になりました。目標達成が視覚的に見え、「運動した感」も深まります。


▲リングを眺めて「運動した!」と悦に入るのも良いもの

■他のスキーアプリも試してみた


Apple Watchでスキー・スノボの記録を撮れるアプリはsnowwだけではありません。日本のスキー場コミュニティサイト「Snoway」も滑走記録アプリを提供しています。このアプリは日本のスキー場の情報を詳しく記録できるのが強みと言えそう。

ニセコには4つのスキー場がありますが、その中から実際に滑った「ニセコマウンテンリゾート グランヒラフ」というスキー場名をあわせて記録できます。なお、滑走開始時にスキー場を選択するため、Apple Watchでの滑走開始操作はsnowwよりもワンステップ多くなります。

▲Snoway。日本製だけにスキー場を正確に記録できるほか、天候や雪質のメモ欄もあります

ワークアウト記録アプリ「Zones」もApple Watchを使ったスキーの記録に対応します。こちらはスキー専用のアプリではなく、水泳や、ダンスやフェンシングに車いすランニングまでさまざまなアクティビティの記録に対応するアプリです。専用アプリでは無い分、その分記録される内容は薄めで、スキー場などの情報はなく、消費した活動量の記録が中心となります。ただし、「アクティビティ」を利用する他のアプリの(たとえばsnowwやSnoway)の記録も一覧で表示できるため、閲覧用に利用すると良さそうです。

▲Zones。さまざまな活動の記録ができるアプリ。snowwなどの他アプリで記録した情報の閲覧に使うのも良さそうです​​​

■スキーを記録する仕組み


先ほど紹介した3つのアプリ、snoww、Snoway、Zonesは、実はすべて同じ仕組みを使ってスキーの活動量を計測しています。iPhone/Apple Watchの活動量計測の仕組みは、Appleが開発し、アプリ開発者に利用しやすいAPIとして提供されています。

Apple Watchでは、サッカー、テニスといったメジャーなものから、水泳やヨガ、そしてスキーやスノボまで、さまざまな運動のデータを記録できます。その中でもウォーキング、ヨガ、スイミング、スキー、スノボといった運動はアルゴリズムで運動を検出し、消費カロリーなどの詳細なデータを計測できるようになっています。

▲「スキーをしている」と判断するアルゴリズムはAppleが開発し、アプリ開発者に提供しています

加速度センサーの情報などから「今どんなアクティビティをしているか」を判別するわけですが、その判別アルゴリズムには、AI(この場合は機械学習)の技術を活用して作られています。Appleはその判別アルゴリズムを独自に協力者を募ってデータを収集したと公表しています。活動データも大切な個人情報なので、購入者のデータを使うようなことはしない、というわけです。

特にスキー・スノーボード用のAPIについては、Appleは、初心者からエキスパートなど様々なレベルのスキーヤー、スノーボーダーと250日分のデータを記録する研究を行い、1000滑走以上を分析して開発したといいます。

実のところ、筆者は今までスマートウォッチをあまり使いこなせていませんでした。Apple WatchではSuicaを登録して改札をピピっとできるのに便利さを感じていますが、おおよそ「デザインを変えられる時計」という認識でした。

しかし、実際に使ってみるとその印象は覆りました。最新のApple Watch Series 4はハードウェアこそ正統進化といえるものにとどまっていますが、ソフトウェアの飛躍的な進化により、一味違った時計になっていました。

普段はビジネスシーンでも使える時計ながら、バンドを付け替えればランニングやジムでのトレーニングから、スキーやスノーボードなどのウインタースポーツまで活用できる。そうした万能さもApple Watchの魅力と言えそうです。


​​​​​​▲Apple Watchがあれば、ウインタースポーツもさらに楽しくなりますね。