地震で倒壊したタワーサイロ。牛舎には、搾乳できず、乳房が張った牛が、苦しい鳴き声を上げる。岡橋さんは、早急な支援を求めている(6日、北海道厚真町で)

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 北海道胆振地方中東部を震源とする、最大震度7の地震が6日午前3時7分に発生した。その影響で、水田を巻き込んだ土砂崩れやハウスや家屋の倒壊が各地で続出。道内全295万戸が一時停電となるなどライフラインがストップしたことから、酪農業や流通に大きな影響が出た。酪農家らは「電気がこなければ牛が死んでしまう」として、発電機に使う燃料や水の確保など早急な支援を求める声が挙がる。長期化すれば生乳が全国で逼迫(ひっぱく)する恐れがあり、事態は深刻だ。(川崎勇、望月悠希)

 気象庁によると地震の規模(マグニチュード=M)は6・7。厚真町で震度7、安平町で震度6強などを観測した。

 総務省消防庁によると、家屋倒壊など大きな被害があった厚真町で2人、むかわ町、新ひだか町でそれぞれ1人の計4人(6日午後3時45分現在)の死亡が確認された。

 北海道厚真町の酪農家、岡橋和夫さん(64)は、30頭ほど飼う経産牛の搾乳が、停電により5日夜から6日夕方にかけてできていない。「電気も水も止まった。このままだと牛が死んでしまう」と絶望する。乳房が張っているため手搾りも検討したが、夫婦二人で体力的に厳しい。餌を与えたいが、さらに乳房が張ってしまう恐れもある。停電と同時に断水したため、飢えと乾きと乳房の張りを訴える牛の声が焦りを募らせる。

 岡橋さんは「発電機が来ても搾乳施設が動くかどうか。とにかく早く復旧してほしい」と頭を抱える。

 停電などで搾乳できない場合、乳房炎などの疾病を防ぐため、自家発電機で搾乳設備を動かして搾るか、手搾りなどで電気を使わず搾乳するなどの対応をする。ただ、出荷先の乳業工場が停電により停止しており、搾乳できても工場で受け入れができない。

 JAとまこまい広域では、業者から発電機を借り、酪農家で共有。酪農家が多い安平町や、厚真町では断水しており、水の配送の手配も進める。営農支援に懸命だ。

 JA厚真支所では、ジャガイモやカボチャ、調製後の小麦などを保管する倉庫が被災。激しい揺れで積み上げていたコンテナが倒れ農産物が散乱した。

 農家から集めたジャガイモを保管する倉庫では、コンテナ約900個(1個600キロ)が崩れた。下敷きになった選果の機械は現在近付けない。停電で扉を開けることができない倉庫もある。

 JAの職員は同日、資材店舗などの片付けを行った。服部啓三参事は「(4日夜からの)台風の被害もひどかった。今度は地震で、立て続けに被災した。7日以降、各支所で施設の復旧に向けた作業を進めたい」と険しい表情で話した。

 JA管内では、厚真町の吉野地区や朝日地区など広範囲で土砂崩れなどが発生。土砂は住宅や道路をのみ込み、水田にまで及んだ。JAは「まずは人命が最優先」(営農部)として、情報収集を急ぐ。今月下旬には、米の収穫も始まる予定。被災した調製や乾燥などの機械が順調に動くのか、懸念している。

 6日の地震を受け、ホクレン、JA北海道厚生連、JA共済連北海道、JA北海道信連など連合会も対策本部を立ち上げ、JAなどの状況把握に追われた。

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