かつてはMLBドラフト1巡目、阪神ではメッセンジャーと先発ローテを形成

 2017年までロッテで投げたジェイソン・スタンリッジが引退を表明した。7月31日は、MLB、NPBのトレード期限だった。

 スタンリッジはアラバマ州の生まれ。高校から1997年にドラフト1巡目(全体31位)でタンパベイ・デビルレイズ(現レイズ)に指名された。デビルレイズはMLBのエキスパンションによって翌1998年からのMLB参入が決まっていた新球団だった。スタンリッジは、この年、新球団の特例で92人が指名されたデビルレイズの1期生の筆頭で入団した。

 2001年にはMLBに昇格。しかしMLBに定着することなく、2004年にはレンジャーズに移籍。以後、レッズ、ロイヤルズを経て2007年にソフトバンクに移籍。2シーズン主に先発投手として投げたが、故障もあって2008年オフに戦力外となる。

 2009年にはマーリンズとマイナー契約するも、MLB昇格はならず。2010年はフィリーズに移籍したがキャンプ中に解雇。この年4月になって阪神が、スタンリッジと契約した。

 阪神はこの年、ランディ・メッセンジャーを獲得し、救援投手として起用する予定だったが、開幕3戦目で負け投手になるなど不安定な投球を見せたので、急遽スタンリッジの獲得に踏み切った。なお、ソフトバンク時代の登録名は「スタンドリッジ」だったが、阪神入団後は「スタンリッジ」となった。

 その後、スタンリッジは先発投手に転向したメッセンジャーとともに阪神のローテーションを維持した。

2010年 スタンリッジ11勝5敗 メッセンジャー5勝6敗
2011年 スタンリッジ9勝7敗 メッセンジャー12勝7敗
2012年 スタンリッジ7勝12敗 メッセンジャー10勝11敗
2013年 スタンリッジ8勝12敗 メッセンジャー12勝8敗

 この数字を見てもメッセンジャーとの評価がじりじりと逆転したことがわかる。

助っ人として史上8人目のFA権取得、外国人枠から外れるも今季はオファーなし

 2013年オフにスタンリッジは阪神を退団。ソフトバンクに復帰が決まり、2年間投げたのちにロッテに移籍し、なおも2年投げた。

 NPB通算では75勝68敗。阪神に入団以後は8年間で6回規定投球回数に達しており、計算できる選手だった。

 外国人投手の勝利数10傑

1.ヴィクトル・スタルヒン 303勝176敗 率2.09
2.郭泰源 117勝68敗 率3.16
3.郭源治 106勝106敗 率3.22
4.ジョー・スタンカ 100勝72敗 率3.03
4.ジーン・バッキー 100勝80敗 率2.34
6.ランディ・メッセンジャー 94勝76敗 率3.00
7.ジェイソン・スタンリッジ 75勝68敗 率3.31
8.ネイサン・ミンチー 74勝70敗 率3.64
9.荘勝雄 70勝83敗 率4.05
10.ジェレミー・パウエル 69勝65敗 率3.97

 2010年に獲得したメッセンジャーとスタンリッジの2人が、ともに外国人屈指の投手になるとは阪神も想像できなかっただろう。

 NPBでは外国人選手が8シーズンの出場選手登録日数を満たしFA権を取得すると、外国人枠を外れ、日本人選手と同じ扱いとなる。これまで9人しかいない。取得年順。

1996年 郭泰源(西武)
2004年 タフィ・ローズ(近鉄-巨人-オリックス)
2008年 アレックス・ラミレス(ヤクルト-巨人-DeNA)
2009年 アレックス・カブレラ(西武-オリックス-ソフトバンク)
2010年 ブライアン・シコースキー(ロッテ-巨人-ヤクルト-ロッテ-西武)
2011年 許銘傑(西武-オリックス)
2011年 ホセ・フェルナンデス(ロッテ-西武-楽天-オリックス-西武-楽天-オリックス)
2017年 ジェイソン・スタンリッジ(ソフトバンク-阪神-ソフトバンク-ロッテ)
2018年 ランディ・メッセンジャー(阪神)

 今年のスタンリッジは、獲得しても外国人枠を気にしなくていい存在ではあった。しかし、今年11月8日に40歳になるスタンリッジにオファーはなかった。抜群の成績を残したわけではないが、どの球団でもローテを維持し、試合を作ったスタンリッジは、NPBで花開いた外国人投手の一人といえるだろう。(広尾晃 / Koh Hiroo)