森保新監督の下で一体どのような選手が起用されていくのか。9月7日の初陣が期待される。写真:滝川敏之(サッカーダイジェスト写真部)

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 森保一新監督誕生に伴い、果たして日本代表は、いかなるカラーを持つチームに生まれ変わるのだろうか。おそらくは採用されるであろう「3-4-2-1」のシステムで、輝きを放つ選手、重宝される選手とはどのような特性を携えた選手なのか。そこに当てはまる有望株とは?
 
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 監督が代われば選ばれる選手の顔ぶれも変わるもの。これは古今東西を問わないサッカーの鉄則のようなものだ。百人の監督がいたとして、その全員が選ぶというような選手は極めて例外的。今の日本においてということだと、もしかするとひとりもいないかもしれない。ハリルホジッチ体制から西野体制への緊急移行ですら選手選考に大きな修正が加わったように、代表監督の政権交代はしばしば大きな地殻変動を伴うものである。
 
 ましてや、今回の森保一監督誕生はワールドカップ終了直後というタイミング。しかも直近のワールドカップをベテラン中心のメンバーで戦っており、すでに代表引退を表明している選手が複数いるというシチュエーションもあるので、人選に変化が生まれるのは必然だろう。
 
 さらに言えば、就任するのが「森保監督」であるというのも大きい。U-21日本代表でも広島でも採用してきた3-4-2-1のシステムは「日本人に一番合っていると思っている」と語る、自信を持っている戦術だ。以前から頑迷に一つのシステムにこだわるつもりはないという趣旨のことも繰り返しているので最終的に4バックを採用するといったケースもあり得るが、3-4-2-1にトライしないはずもない。となれば、やはり人選は変わる。
 
 森保式3-4-2-1の採用で大きなポイントになりそうなのは、3バックとウイングバックの適材探しだ。後方からのビルドアップを重視するので、できれば3バックの左に置ける、左利きのCBは探したい。U-21代表で言えば杉岡大暉(湘南)や中山雄太(柏)の名前が挙がりそうだが、車屋紳太郎(川崎)のような4バックでは左SBの候補としてカウントされる選手がこちらの候補になることも考えられる。小川諒也(FC東京)、松原后(清水)といった選手のポテンシャルを買った起用もあるかもしれない。
 
 もうひとつのポイントはウイングバック。このポジションの選手を意図的に孤立化させて、相手サイドバックとの1対1の状況を作り出すのが攻撃面の戦術的な狙いとなっているので、「1対1でぶち抜ける!」というのが一つの条件。もちろん攻撃“だけ”ではダメで、守備に戻って5バックを形成しつつ、攻めに出て行く走力も欠かせない。
 
 現代表ならば、原口元気は「はまり役」だと思うが、普段は普通にサイドバックをやっている選手だと「ぶち抜く!」部分が物足りず、普段はウイングをやっている選手だと「走力」が物足りないという事態に陥りやすい。ただ、U-21日本代表で遠藤渓太(横浜)がフィット感を見せたように、少し意外な選手がピタリと収まることもあり、まずはそうした可能性を探っていくことになるのではないか。個人的な意見を言うと、伊東純也(柏)はこのポジションで観てみたい選手だし、もしかすると武藤嘉紀のようなタイプもハマるかもしれない。
 
 2シャドーの適材は多いので、それほど心配はしていないが、1トップの人選は簡単ではない。ボールを収められる大迫勇也は2シャドーを活かすという意味では適材だが、かつて佐藤寿人や浅野拓磨がJリーグで猛威を振るったように、裏抜けできる選手を置きたいポジションでもある。1トップが裏を狙って相手を押し下げることで生まれるスペースを2シャドーが活用するのはこの戦術における一つの理想形でもある。その意味では武藤はこちらの位置でこそ本命かもしれないし、当然ながら浅野にもチャンスはありそうだ。
 
 いずれにしても「誰が選ばれるか分からない」という緊張感はJリーグに活力をもたらすし、常連選手には良い緊張感も生まれるもの。アジアカップまで半年しかない時間的制約はあるが、ちょっとビックリするくらいの変化が待っているかもしれない。
 
文●川端暁彦(フリーライター)