ブンデスリーガ第33節ドルトムント対マインツ。リーグ戦が残すところ最終節のみになっても、香川真司の復帰は叶わなかった。4月中にチーム練習に合流。第32節のブレーメン戦ではベンチ入りを果たしたが、出場はなかった。それでも、「雰囲気を楽しめた」(香川)とのことで、マインツ戦での出場が期待されていた。

 だが、香川はブレーメン戦の2日後のチーム練習を半ばで切り上げていた。その日、取材に訪れていた筆者は、負傷箇所のケアに時間がかかるから先に切り上げたのかもしれないと、あまり深刻には考えなかった。つめかけていたファンや報道陣も、その程度に捉えていたのではないだろうか。

 ところが翌日、香川はクラブハウスを訪れたものの、全体練習には合流しなかった。マインツ戦2日前の定例会見で香川について聞かれたペーター・シュテーガー監督の話はなんとも要領を得ないもので、なにやら雲行きが怪しいことが伝わってきた。

 そしてマインツ戦当日。結局、香川はベンチ入りもしなかった。ただし、試合後に他のベンチ外メンバーとともにピッチに姿を現した香川は、特にプロテクターなどもつけておらず、いたって普通に見えた。ピッチ上では武藤嘉紀とがっちり握手し、にこやかに言葉をかわしていた。


ドルトムント戦でマインツの1部残留を決めるゴールを決めた武藤嘉紀

 試合は、とうの昔に優勝の可能性も消えて3位につけているドルトムントに対し、自力で1部残留を決めるという強いモチベーションに支えられたマインツに軍配が上がった。結果は1-2。マインツの2点目を決めたのは他ならぬ武藤だ。

 前半13分。左サイドのペナルティエリアの角あたりからのクロスを、武藤はニアサイドで合わせて今季8得点目とした。マインツはその後、1点を返されており、結果的に貴重な決勝ゴールとなった。

 1部残留を決めた試合後のロッカールームは大騒ぎに。少し冷静さを取り戻した武藤は、それでも満面の笑顔で現れた。

「ありがとうございます。シーズンのはじめにも『(今季は)ケガをしないで』と言いましたけど、またケガで8試合出られなかったので、そこは非常に悔しいです。だけど、今日こういう緊張した一戦で、ドルトムント相手に点を決められたということは非常に自信になりますし、去年に続いて残留を決めるゴールを獲れて、今日は本当に嬉しいです」

 この数週間、武藤には移籍の噂が絶えないのだが、それについては「まだあと1戦あるのでなんとも言えないです。チームの雰囲気を悪くしたくないので、ちょっと待っていてくださいとしか言えないかな」と含みを持たせた。

 ビルト紙の報道によれば2000万ユーロ(約26億円)という高額の移籍金が設定されたとのことだが、「僕はこの間、別に何も言ったつもりはないのに(移籍希望と書かれた)……。チームメイトにも移籍金でいじられるし」と、笑いながら煙に巻いた。

 とはいえ今季チーム最多の8得点を挙げたストライカーだ。おそらくオファーはあるのだろうし、武藤にもマインツにとどまる義理はない。マインツ自体、選手を売ることで経営を成り立たせていくクラブだけに、もしかしたら楽しみなことになるかもしれない。

 ちなみに8得点は今季のブンデス日本人最多。過去には岡崎慎司がやはりマインツで2013〜14シーズンに15得点、2014〜15シーズンに12得点を挙げてレスターへと羽ばたいた。香川真司は2011〜12シーズンの13得点が自己最多で、それに続くのが2010〜11シーズンの8得点となる。8得点というのはそれくらい価値のある数字。当然のことながら日本代表への復帰も期待される。

「それはもちろん願っていますよ。やっぱり海外にいると、代表に対する思いというのは本当に強いですし、日の丸を背負うことの誇りというのもある。W杯のことが頭から一瞬でも離れたことはないですし、(代表に)選ばれないときは本当に悔しい思いをしました。あとは自分が結果を出し続けて待つしかないな、と」と、強い思いを隠さなかった。

「今日はたぶんすごいパーティーになるんですけど、やはりそこは落ち着いて、アルコールゼロで。体が資本なので、最後まで抜かりなくいきたいなと思います」

 シーズンは残り1試合。武藤はロシア行きを念頭に、自分を律して朗報を待っている。

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