一丁5万円以上もするハサミ、世界の理美容師が欲しがる理由
水谷理美容鋏製作所は水谷社長の祖父である水谷頼次氏が1921年に創業した。理容師だった頼次氏が自分に合ったはさみづくりから事業に発展した。父の元一会長も職人だった。一人ひとりの使い方に応じたモノづくりのDNAは水谷社長も受け継いでいる。
一般的に理美容はさみは3万円以上が高級品に分類されるが、同社の商品は、その上の5万円以上の商品が主力だ。水谷社長は「機械でできる仕事はやらない。ロットの大きい仕事もやらない。我々が必要とされる仕事しかやらない」と仕事の内容にこだわる。
同社のはさみの特徴はボールベアリングを採用し、摺動(しゅうどう)性を高めることで、理美容師の負担を軽減するなど機能を追求した高いデザイン性だ。特種素材の熱処理など一部を除き、鉄板からの刃材の切り出しから全工程を自社で行う。
素材にはナノレベル(ナノは10億分の1)の微細な粉末で構成される鋼材「ナノパウダーメタル」や、航空機のエンジンで使用されるコバルト基合金を採用。パーマ液などの薬品を使うことを踏まえ、耐腐食性と耐摩耗性に優れた素材を使用する。
メンテナンス体制も整えられており、販売代理店以外にも国内は本社と東京都港区、大阪市中央区のショールームで対応する。6月には同社発祥の地である東京・浅草にも開設。直接ユーザーの要望を吸収する狙いもある。
海外は現地で教育した後、本社でトレーニングして職人を育成している。米国や英国、ドイツ、アイルランド、韓国、香港、シンガポール、豪州などに十数人の職人がいる。今後も海外で職人育成を進め、メンテナンス体制を固める。
(文=千葉・中沖泰雄)
