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●法人向けの新機能とは?

LINEは3月1日、法人アカウント向けの新機能「通知メッセージ」を発表した。電気・ガスや交通、運送など6社が第一陣として採用する。この新機能でLINEは何を狙っているのだろうか。

○友だち登録していないユーザーにも通知を送れる

LINEの法人向け機能としては、現在300アカウント以上が登録している「LINE公式アカウント」や、中小企業や店舗向けの「LINE@」(30万アカウント以上)の2種類がある。これらのアカウントは登録費用や通知機能に差はあるが、いずれも企業や店舗とユーザーを直接繋ぐコミュニケーション手段として広く普及している。

また、こうしたアカウントが主に企業側からの情報提供用の手段として使われているのに対し、チャットbotを導入するための「Messaging API」や、LINEアカウントと企業システムを連携させる「LINEビジネスコネクト」といった仕組みを提供することで、サポート窓口やパーソナライゼーションされたコミュニケーション手段としても機能するようになっている。競合するコミュニケーションツールと比べてもこうした機能は充実しており、LINEが日本においてコミュニケーションインフラと呼ばれる所以だ。

ただし、こうした機能はあくまで企業側のアカウントとユーザーのアカウントが「友だち」として登録されている状況でしか利用できない。たとえば製品のリコール情報などをLINEを使って告知したい場合、自社のアカウントに登録してくれている、ロイヤルティの高いユーザーにしか届かないことになる。しかし、実際はむしろそういった登録作業を億劫がるようなユーザーにこそ、通知を届けたい場合も多いわけだ。

そこで今回新たに加わった「通知メッセージ」では、企業側のアカウントと直接つながっていないユーザーに対しても通知が送れるようになる。ただしこれは全ユーザーを対象とした同通メッセージではなく、あくまで企業が送りたい相手にのみ届くという仕組みだ。

●メッセージ送信の仕組み、内容は?

○メッセージを送る仕組み

どうしてこのようなことが可能なのか。LINEはユーザー情報として名前や電話番号といった情報を保有している。一方、企業側もユーザー登録などを通じて電話番号などの情報を保有している。そこで企業側がメッセージを送りたい相手の電話番号とメッセージをハッシュ化してLINEに送信すると、LINE側でマッチングし、対象になるユーザーにのみ通知を送る、という仕組みだ。

個人情報の取り扱いが気になるところだが、今年1月に改訂されたプライバシーポリシーに含まれており、基本的にLINEを利用しているユーザーには合意を得ている状態だという。もし通知メッセージを受信したくないユーザーは、「通知メッセージを受信」設定をオフにすればいいという(個人情報の取り扱いがなくなるわけではない)。

○メッセージには制限も

大変強力な機能だけに利用は制限されており、「広告を除く、重要性や必要性が特に高い、公共性の高いメッセージ」だけが通知されることになるという。例えば市役所などがこの機能を使うなら、光化学スモッグ警報など、従来なら屋外の防災無線などを使って送信されていたようなメッセージになると考えればいいだろう。企業であればリコール情報なども考えられる。個人情報を含んだ通知も送信されないということなので、行方不明の人の捜索などに使えるかは微妙なところだ。

発表会では「通知メッセージ」を利用する第一陣として、JAL、ANA、東京電力、中部電力、東京ガス、ヤマト運輸の6社が登壇した。いずれも航空会社、電力・ガス、宅配便といった公共性の高いサービスを提供する企業だ。通知メッセージの用途としては「飛行機の運航情報・遅延/欠航情報」や「予約確認」、「電気/ガス料金の確認と通知」、「宅配便の配送通知/受け取り確認」などが主となる。

こうした通知機能はすでにアプリやウェブ、メール、あるいはハガキなどを通じて提供している企業も多いが、LINEの通知メッセージはDAU/MAUが多くリーチ率が高いこと、ペーパーレスによるコストダウンとエコなオペレーションにつながる点がメリットといえる。

●新機能で取り込みを目指すジャンルは多岐に

○公共サービスもカバーする生活インフラを目指す

今後はユーザーの反応を見ながら、行政や金融の通知、さらには飲食店やレジャーなどの予約通知などへと、通知メッセージを適用するジャンルを増やしていきたいとしている。これによって多くの企業や行政機関が通知手段としてLINEを使うようになれば、LINEはこれまで以上に生活に欠かせない、生活インフラとして認知されるようになる。コミュニケーションする相手の有無に関わらず、LINEをインストールしていなければ生活自体が不便になる社会が目標というわけだ。

従来、こうした役割は携帯電話網の緊急メールやSNSなどが担ってきたわけだが、こうした機能もLINEが取り込もうという目論見だろう。当然キャリア側もこれに対抗したいところだが、すでに普及率が非常に高いLINEと同等以上の機能を準備したり、企業アカウントを誘致するのはなかなか大変そうに思える。

キャリア側がLINEに対抗するべく、SNSのアップデートやそれに準じる新機能を用意しているという報道も一部で行われているが、現時点では、ここまで数年をかけて地道に機能を更新してきたLINEが一歩リードしているように見える。LINEとそのパートナーは今後2〜3年をかけて通知機能の向上を目指してるようだが、果たしてユーザーからはどのように受け入れられるのかが注目される。