大手キャリアから格安スマホに乗り換える人が増えていますが、その際に必要となるのが「MNP(携帯電話番号ポータビリティー)予約番号」というもの。その番号を発行してもらうには現在契約中のキャリアに連絡することが必須となりますが、その際に「自社サブブランドの格安スマホへの乗り換えの勧誘」が行われていることが問題視されています。ケータイ/スマートフォンジャーナリストの石川温さんは、自身のメルマガ『石川温の「スマホ業界新聞」』で、この問題の解決策について考察しています。

MNPは、新規契約先だけで手続きが完了する方向を模索か━━サブブランド誘導に歯止めをかける突破口として期待

総務省における議論では、たまにではあるが、真っ当な発言が見受けられる。今回の会合では「MNPにおける手続き」が問題視されたのだが、これが正当性のあるものだった。

日本ではMNPの手続きをする際、現在契約しているキャリアに電話をして、予約番号を発行し、その番号を持って、新しいキャリアやMVNOに契約しに行かなくてはいけない。

その点に関して、トーンモバイルから「サブブランドへの誘導が行われ、自社、自グループでの流出を阻止する事例が散見される」と指摘があった。トーンモバイルの資料では、過去にソフトバンクからトーンモバイルにMNPしたいというユーザーに対して「iPhoneに関する特典の説明、勧誘があった」として、ワイモバイルに移行してしまったユーザーの事例が取り上げられていた。

実は、筆者の家族も、1年半ほど前になるが、auからMNPをして格安スマホに乗り換えようと思った際、MNP予約番号を発行してもらおうと電話をしたら、見事にUQモバイルを紹介された経験がある。そのときは、解除料などが免除され、実にスムーズにauからUQモバイルに移行が完了したのだった。

キャリアとしては「格安スマホにしたい」という人に対して、自社の安価なプランを勧めるだけでなく、自社グループのMVNOやサブブランドに誘導するのは当然のことだろう。また、ユーザーとしても、安くなればどこでもいいという考えの人であれば、キャリアからの勧誘にのってしまうのは仕方のないことだ。

有識者からは「現在、契約しているキャリアに電話するのではなく、新しく契約したい会社だけで、MNPの手続きが完了するようにすればいいのではないか」という意見が出た。

筆者は、アメリカで、AT&Tからベライゾン、さらにはベライゾンからProject FiにMNPをした経験があるが、いずれも、新しく契約するキャリアで手続きをするだけで番号移行ができた。特にProject Fiはネットでの手続きだっただけに、本当に簡単だという印象がある。

総務省の議論では、2年縛りも問題視されている。しかし、5Gに向けて膨大な設備投資を余儀なくされるキャリアにとって、2年縛りは安定した経営を支える根幹だけに、是が非でも継続していきたいことだろう。

とはいえ、競争環境を促進するという目的をかなえるためには、キャリアとしてもどこかで妥協点をみつけないといけないはずだ。

ユーザーの利便性向上と、サブブランド優遇の批判を回避する上で、「MNPの手続きを新規契約時のみにする」という解決策は、キャリアも何とか飲み込める適度な落としどころではないだろうか。

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