"蓮舫代表の交代"をうらやむ自民党の苦悩
■自分の能力がないのに気づいた?
「きのう(26日)1日、人事に向けてゆっくりと考えました。どうすれば、私たちが皆さんに託していただける民進党と思っていただけるのか。そのとき、人事ではなくて、私自身をもう一度見つめ直さなければいけないと思いました」
辞任会見で蓮舫氏は決断の経緯を、こう語っている。2日前の25日、野田佳彦幹事長が辞任を表明。それを受けて蓮舫氏は幹事長以下の人事を断行する手はずになっていただけに、代表が辞任するということは驚きのできごとだった。「部下の人事を考えていたら、自分が能力がないのに気づいた」と言っているのも同然の説明は、「素直」と言えばその通りだが、痛々しい。
実際のところ、蓮舫氏に批判的な幹部が、幹事長以下の人事断行に露骨な妨害行為をしたという。それで、心が折れてしまったのだろうか。民主党のころから「内紛はお家芸」と言われた体質は、今も変わらない。
しかし、この蓮舫氏の発言は、ある意味で自民党に反転攻勢をかける布石を打っているとも言える。
■ガバナンスが効いていることが裏目に
7月2日、東京都議選で惨敗して以来、自民党は深刻な逆風にさらされている。内閣支持率は急降下。中でも、不支持の理由として「安倍晋三首相を信頼できない」が急増しているという深刻な事態であることは7月25日にアップした「安倍政権を苦しめる『魔の月曜日』の深刻」や同月12日にアップした「もう末期"世論調査"でみる安倍内閣の体力」で報じた通りだ。
安倍氏は、8月3日の内閣改造で支持率をV字回復させたいと考えている。内閣と党の顔触れを一新し、浮上のきっかけをつかみたいところだ。しかし、安倍内閣の支持が下がっている最大の要因は、安倍氏自身にある。冒頭紹介した「人事ではなくて、私自身をもう一度見つめ直さなければいけない」という蓮舫氏の言葉は、そのまま安倍氏にも当てはまる。安倍氏はそのままで、下の閣僚や党執行部の顔触れを変えても、清新なイメージを国民に与えるのは難しい。
支持率が危険水域に達している現状では、安倍氏が退陣して自民党総裁選を行うという選択肢もないわけではないのだが、自民党は「幸か不幸か」党執行部のガバナンスが効いている。内閣では菅義偉官房長官、党では二階俊博幹事長がにらみをきかせていて「安倍おろし」の空気が広がることはない。政権与党としての責任感から、そう簡単に首相を代えるわけにはいかないという認識が党内で共有されているという側面もある。そして、そもそも安倍氏自身、辞任する気がない。
信頼を失った人物が手掛ける人事の効果は限定的だろう。自民党にとって悩みは、安倍氏を交代させるという選択肢を持たない、というところにある。
■政権転落決定後、5人目の代表
一方、民進党である。この党はトップが変わることに対し、ためらいはないようだ。2012年12月の衆院選で敗れて野田佳彦代表(首相)が民主党代表を辞任。以降、海江田万里氏、岡田克也氏、蓮舫氏がトップの座についてきた。5年に満たない間に、5人目の代表が誕生することになる。
「野党だから気楽にトップが変えられるのだろう」という指摘もあるだろう。しかし、民主党は2009年から12年末までの政権担当時にも、鳩山由紀夫氏、菅直人氏、野田氏の順で3人が代表につき、首相の座も「たらい回し」している。
「内紛がお家芸」の党は、トップを変えるのもお家芸なのだ。もちろんこの体質は、党のガバナンスの欠如を示しており、党の長期低迷の要因にもなっている。今回の蓮舫氏の辞任に対しても国民の視線は温かくはない。「またか」というのが率直な感想だろう。
しかし、トップを変える選択肢を事実上持たない自民党にとっては、選択肢を持つことはうらやましいともいえる。5月、まだ安倍内閣の支持が安定していた頃、自民党幹部から「正直なところ、都議選では民進党はあまり負けないでほしい。惨敗して蓮舫氏が辞任し、新しい代表が誕生すると面倒だから。次の衆院選は蓮舫代表のままが楽だ」という話を聞いたことを思い出す。この幹部は、蓮舫氏の辞任の知らせを聞き、自民党にとっては好ましくない展開になっていることを認めている。
これ以上皮肉な話はないが、今の民進党にとって「トップが辞める」という捨て身の技は、「トップが辞めない」自民党に対抗する数少ない武器なのだ。
(写真=時事通信フォト)

