国連の世界食糧計画(WFP)が、栄養失調に苦しむ北朝鮮の子どもたちのために製造した栄養強化ビスケットが、市場で安値で売られていることが明らかになった。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。

両江道(リャンガンド)の情報筋によると、WFPのビスケットが売られているのは、恵山(へサン)市内の市場だ。WFPの恵山穀産工場が2002年から製造しているものだ。

WFPは生産過程のチェックを行っているが、係員が常駐しているわけではない。チェックする人員がいなければ、工場の関係者は、牛乳、卵、砂糖を入れず、小麦粉だけ使ってビスケットを作る。

残りの材料の行方について情報筋は明らかにしていないが、おそらく工場の関係者が横流ししたものと思われる。

子どもはもちろん、大人でも噛めないほど固く「レンガ菓子」と呼ばれているこの菓子は、朝鮮人民軍(北朝鮮軍)10軍団や、国境警備隊の兵士に配給されているとのことだ。

別の情報筋によると、このビスケットは1キロ4元で売られている。これは、市場で売られている、普通江(ポトンガン)輸出食料工場で作られている「花の露印」という安物のビスケットの半額だ。そのままではとても食べられないので、別のお菓子を作る材料として使われている。

現在、市場で売られている小麦粉は、1キロ3.5元のロシア産のものだが、少し色が黒い。一方、栄養強化ビスケットは白い小麦粉で作られているので、ドーナツ、パンなどを作るのにちょうどいいとのことだ。

ビスケットは、児童養護施設である育児院や中等学院の栄養不足の子どもたちに配られることになっているが、2013年までは兵士たちだけに配給されていた。上官は、休暇中や脱走した兵士の分を市場に横流しして、利益を得ていた。

また、白頭山英雄青年発電所の建設に動員された突撃隊員(建設労働者)にも、WFPの栄養強化ビスケットと粉ミルクが配給されていた。

また、当局は故金日成主席と故金正日総書記の生誕記念日(4月15日、2月16日)に、WFPの工場で製造された栄養強化ビスケットを、指導者からの贈り物として子どもたちに配っていた。つまり、国際社会の援助物資が、体制の宣伝に利用されていたということだ。

このような横流しの事実が知れ渡った上に、相次ぐ核実験、ミサイル発射の影響で、北朝鮮に送られる食糧支援は減少しつつある。WFPの今年11月の対北朝鮮食糧援助の量は、前月比で20%減少した。

WFPは、このプロジェクトを2018年末まで行う予定で、1億2900万ドル(約150億円)の予算が必要として、世界各国に支援を呼びかけている。しかし、12月28日現在で集まったのは2420万ドル(約28億1400万円)、必要額の19%に過ぎない。

このままでは、来年4月にプロジェクトの中断を余儀なくされるとWFPは訴えている。