タバコは男の「妊活」にも百害あって一利なし

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肺がんをはじめ、さまざまながんや心臓病、脳卒中など喫煙の悪影響は数多くあるが、精子にもダメージを与え、精子の数が1〜2割減ることがわかった。

以前から精子の活動が悪くなるといわれてきたが、具体的な数字を示した研究は初めて。「妊活中の男性は絶対に禁煙すべきだ」と専門家は強調している。

精子の運動能力、形、DNAの構造も悪くなる

米セントジョセフ大学のチームが、欧州泌尿器科学会誌「European urology」(電子版)の2016年4月21日号に発表した。精子に関する過去の20の論文を分析したもので、具体的には不妊治療の医療機関を受診した計5865人の精子を、喫煙習慣のある人とない人に分けて比較した。

調査したのは精子濃度(精子の数)、運動能力の良し悪し、形態の良し悪しの3つ。その結果、次のことがわかった。

タバコを吸う人は吸わない人に比べ、1ミリリットルの精液中に含まれる精子の数が平均で約972万個少なかった。通常、1ミリリットルの精液には約5000万〜1億個の精子があるから、平均で1〜2割も少ないことになる。また、精子の運動能力の指数はタバコを吸う人は吸わない人に比べ、平均で3.48%悪く、形態も平均で1.37%悪かった。こうした精子の状態は、ヘビースモーカーほど悪い傾向がみられた。

研究チームは、喫煙がなぜ精子に直接ダメージを与えているのかは明らかにしていない。男性不妊治療の専門家、岡田弘・独協医科大学教授は著書の『男を維持する「精子力」』の中で、「子どもを作りたければ、絶対禁煙しなさい」と強調、次のような悪影響を指摘している。

(1)ペニスの海綿体の血流が悪くなり、ED(勃起障害)になりやすい。

(2)精子の数が減り、運動能力が低くなるので妊娠しにくくなる。

(3)タバコによる酸化ストレスで精子のDNAの構造が傷つけられる恐れがある。正常な胎児にならず、流産しやすくなる。

(4)副流煙により、パートナーの体と胎児に悪影響を与える。

最後に子どもは生まれたものの脳梗塞で倒れて、首から下が動かせなくなった男性のエピソードを紹介している。男性はこう語ったそうだ。

「あの時、先生があれほど言ってくれたのに、僕がタバコをやめませんでした。悔やんでも悔やみきれません」