三宅 信一郎 / 株式会社BFCコンサルティング

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物流の世界も例外ではありません。

IoTがもたらす次世代の物流の姿である「インテリジェント・ロジスティクス」。

それがどういう世界なのか? どんな概念なのか?どんな技術で実現しうるのか?

また、世の中にどんな効果をもたらすのか等 筆者の考えを皆さまにお伝えし、考察して行きたいと思います。

昨今、企業活動において物流の重要性が見直され、「物流は企業戦略である」との認識をお持ちになる企業経営者の方が、業界を問わず多くなってきています。

ここで、「次世代のインテリジェント・ロジスティクス」に入る前に、原点に立ち返って「物流の重要性」について考えてみましょう。

世界中でインターネットが発達し、多くの消費者がインターネットを使ってモノを買う時代になりました。

パソコンやスマホなどで、ほんの数クリックするだけで好みの商品を検索し、注文でき、翌日、場合によっては当日に入手することが可能です。

また、こうしたビジネスモデルの流れに合わせて、以前に比べてモノの供給スピードが格段に速くなりました。

このようなビジネスがその機能を最大限に発揮できるかどうかの根幹を支えているのが、「物流」です。

パソコンやスマホ等によるWebオーダーの利便性が発達しても、自動的にモノが消費者の手元に突然現れることは決してありません。

物流が益々重要視されているのはこのようなビジネス環境の変化が背後にあるからなのです。

「物流史談:物流の歴史に学ぶ人間の知恵」((株)流通研究社刊)という本があります。
著者は、半世紀も前に「物流」という言葉を創出し、日本の荷役運搬業務の近代化のための啓蒙活動をされた物流業界の偉人ともいえる平原直先生(1902-2001)です。

この本によりますと、人間生活と運搬は切っても切れないとあります。

昆虫や動物の一日の大半が「運ぶ」生活であるように、人間の生活もその大半は「運ぶ」生活であるといっています。

また、「働く」という漢字を分解してみると、「人」偏に「重」いと書き、それに「力」を加えると書いてあります。

つまり、睡眠や食事、団らんなどの活動以外で、人間のやっていることの大半は、昔から変わらず、物のかたちを変えることか、物を移動(運搬・荷役)させることだけだというのです。

そう考えると、我が家の家内の生態を物流の視点からじっと観察してみますと、日常ほぼ毎日運搬と荷役といった物流業務しかやっていないと言っても差し支えありません。スーパーに買い物に行き、食材を調達して車という輸送手段で家まで運搬し、車から荷卸しをして台所まで輸送し、所定の荷捌き場にて荷卸しを行う(調達物流)。

食材を生産・加工・調理するプロセスが終了したら、完成品としてお盆という使いまわし可能な輸送容器に積載効率を考えて乗せ換えし、「声」にて事前出荷通知(「ご飯が出来ましたよ!」)を消費者に伝達することによって受け入れ準備を促して、消費者の待つテーブルまで人力にて運搬し、テーブル上に荷卸しする((生産物流)。

食事終了後直ちに再度積載効率を考えてお盆にお皿や橋などを荷揚げして、 シンクに搬送する。洗浄プロセスを経てお皿と食器、お盆はそれぞれの棚に格納する。

残ったおかずなどの余り物の廃棄物は別途回収して、自治体の規定通りに廃棄処理を行う(回収物流)。

頭の中にある倉庫管理システムに、お皿やお盆などの輸送容器の数や洗浄状況、格納場所などの情報と、余った食材の在庫数量や賞味期限情報などをインプットして、一連の一つの食事プロセスが終了する。

要は、極端に言いますと毎日運搬と荷役をやっているに過ぎないのです(家内に知れたら激怒されそうですが・・・)。

これは企業活動にも当てはまります。

製造業といえども、製鉄業のように、遠い資源国から原料を運んで来て、加工して、製品としてまた運びます。

農業も、肥料や種子を運搬し、収穫時に荷役しまた運搬する。林業も、木を山奥から運び出し、人里まで届けているに過ぎません。商業も、商品の売買というものの、その実態はモノの仕入れ、保管、配達という商品の荷役・運搬が主体であります。

ということは、人間の日々の営みや企業活動の大半が「荷役したり」「運搬したり」する運搬業であるといっても差し支えがないとその本は説きます。

昨今、インターネットの発展に伴い、モノの供給スピードが一段と速まるにつれ、改めて物流というものが、企業活動においてその重要性を増してきています。また、「運搬」して「荷役」するというシンプルな作業だけに、その高度化には困難が伴うということをご理解いただけたら幸いです。

次号は

「インテリジェント・ロジスティクスを支える IoT(Internet of Things)とは何か?」です。