増沢 隆太 / 株式会社RMロンドンパートナーズ

写真拡大

・小学生時代に集めていた宝物
時代とともに中身は替わりますが、子供の間でお菓子についているカード、ビックリマンからプロ野球カード、Jリーグカード・・・と時代とともに流行するコレクション対象があります。クラスで流行すれば同級生間で競って宝物のように集めたのではないでしょうか。私が子供の頃にも、友だちの持っているコレクションが欲しくて欲しくて、掃除当番と引き換えたり、ついには相場が高騰して現金取引でコレクションを譲り合うなどという仕手戦状況にまでなったことがありました。

さてそれらのコレクション経験ある人。大学生・大学院生となった今、その宝物はどうなっていますか?大切に今もしまっている人より、いつのまにやら行方がわからなくなった人の方が多くないでしょうか。かつての宝が時とともにその価値観を失い、いまやガラクタやゴミ扱いか雲散霧消しているのは普通です。

これは正に「相場」を表しています。相場とは取引される価格、時価ともいい、定価ではなく需要が高ければ売り手市場(売り手有利)に相場は上がり、需要が無ければ買い手市場(買い手有利)でどんどん相場価格は下がります。株式や通貨が代表ですが、学生の身近にあるものとしてはネットオークションと思っていただければわかりやすいと思います。

・恥の心理
自分が価値があると感じていたものの価値が下がったり消えたり、全く興味なかったものが欲しくなるという心理変化が相場には大きく影響します。では就活スタートを迎えた「今」の心理はどうでしょう。当然こもまた必ず変化します。

見ず知らずの企業の人と話すこと、それだけで恐いし恥ずかしいし、まして自分のような準備不足な学生はその不用意さやふがいなさを怒られるのではと思うかも知れません。怒られる筋合いはないまでも、バカにされ軽蔑され、あげくは無視されたりひどい扱いを受けるように思うかも知れません。「恥」や恐怖という心理は、このような攻撃を予期することから身を守るために発生します。

しかし一方で小学生のコレクションのように、その心理や価値観は時間とともに大きく変化します。今、気になって仕方がない「人の目」も、後になってみれば決して攻撃ではないことがわかるでしょう。この就活の数か月間だけで、これまでの学生生活で会ってきた何十倍もの社会人と交流があります。変化しない訳がないのです。

・仕事とは何か
緊張しやすい、人見知り、引っ込み思案・・・・人付き合いが苦手な人は社会人でいくらでもいます。私の講義や講演を聞いたことがある方からは信じられないと言われますが、あんな教壇全体を行き来して、身振り手振りでしゃべりまくる私ですが、実は一人でビデオ見てるのが至福という至って人付き合い苦手な人間です。しかし講演することは私の「仕事」です。仕事をしなければ私と私の家族は生きていけません。好き嫌いをいえる選択ではないのです。

キャリア教育やキャリア科目が全国の大学で一般的に教えられるようになり、キャリア決定は「自己実現」などという専門家向けの言葉もずいぶん有名になったようです。しかし私はキャリア決定における一番重要なことは生きることだと思っています。仕事をしなければ食べていけませんから、生きられないことになります。それならば生きるため、素の自分の好みではなくとも動くしかありません。

就活は採用企業にとって「仕事」です。仕事である以上、来た学生が多少変でも、とんちんかんな質問をしても、明らかに準備不足でも、何とも思わないどころか採用活動のレスポンスがあったことに喜びを感じます。今年も何百という企業の人事の方とお付き合いをしていますが、人事の本音としては、何でも良いから説明会やブースに人が来てくれることこそ最優先という声が圧倒的です。「人を集めること」が目下人事にとって最大の目的であり、「仕事」だからです。

就活は人生を決める重要な仕事です。仕事をしなければ生きていけないのだということを真剣に考えて下さい。就活でうまく行く人は、流ちょうなアピールができることでも、人がマネできない特殊な体験・特技がある人でもありません。「『仕事』ができると思われた人」です。何一つしゃべりも上手くなくて、特殊体験もなしに内定を複数得た人は、恥の感覚を克服できた人ともいえるのではないでしょうか。

小学生時代の自分の価値観が変わったように、今感じている恥は確実に後で見れば何ともない恐怖になります。堂々と開き直り、説明会で「仕事」をしてきてください。