中国の中鉄二院工程集団とロシア企業によるコンソーシアムは2015年5月、ロシアの首都モスクワとタタールスタン共和国カザンを結ぶ高速鉄道プロジェクト「モスクワ−カザン高速鉄道」を落札した。(イメージ写真提供:(C)Ping Han/123RF.COM)

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 中国の中鉄二院工程集団とロシア企業によるコンソーシアムは2015年5月、ロシアの首都モスクワとタタールスタン共和国カザンを結ぶ高速鉄道プロジェクト「モスクワ-カザン高速鉄道」を落札した。

 「モスクワ-カザン高速鉄道」の総延長は770キロ、設計最高速度は時速400キロ、将来的にロシアの大都市であるエカテリンブルクまで延伸される計画だ。その「モスクワ-カザン高速鉄道」にこのほど、中国にとって看過できない事態が起きつつあるようだ。

 中国メディアの電纜網はこのほど、ドイツのシーメンスおよびGerman Initiative社が「モスクワ-カザン高速鉄道」の建設に対して20億ユーロ(約2475億円)を投資する用意があると表明したと伝え、「中国にとって変数が生じた」と懸念を示した。

 記事は、「モスクワ-カザン高速鉄道」の建設に向け、中国とロシアの協業は着実に前進していたと指摘し、中ロの企業は双方が対等な関係で基金を設立すると同時に、中国のシルクロード基金やロシア側の基金による出資を受け入れる計画であったことなどを紹介した。

 続けて、「モスクワ-カザン高速鉄道」は中国にとって非常に重要な高速鉄道路線となる見込みで、中国政府が推進する輸出戦略「走出去」や「一帯一路」構想の実現に向けた計画の一部であることを指摘。さらに中国国内で深刻化する生産能力の過剰という問題についても、「モスクワ-カザン高速鉄道」が解消に役立つとの見方があったことを伝えた。

 一方で記事は、ロシアが現在、欧米から経済制裁を受けていることを挙げ、「中国の鉄道産業にとってはロシアという大市場に参入するうえで最適なタイミングだった」としながらも、シーメンスはかつてロシア企業と鉄道建設で協力関係にあったと指摘。仮に欧米がロシア制裁を解除すれば中国企業の優位は「政治によって奪われることになる」とし、ドイツ企業が「モスクワ-カザン高速鉄道」の建設において資金を提供することになれば、中国とロシアの鉄道分野における協力関係に対して「大きな変数が生まれることになる」と懸念を示した。(編集担当:村山健二)(イメージ写真提供:(C)Ping Han/123RF.COM)