最近ではかわいいデザインのスポーツブラも豊富

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「小中学生のファーストブラ」のイメージがあるためか、運動を習慣にする女性でも所有率が低いスポーツブラ。必要性とバストへの影響を専門家に聞いた。

垂れるのが嫌だから走らない

スポーツをする女性の多くは、バストが揺れて気になったり、ブラジャーのストラップやカップがずれてしまったり、汗やムレで不快な経験をしたことがあるだろう。とくに、バストが大きいと「垂れるのが嫌だから走らない」という女性も少なくないという。

男性は「走ることとバストが垂れることに何の関係が?」と疑問に思うかもしれない。むしろ筋肉が鍛えられてバストアップになりそうなものだが、実は、走ったりジャンプしたり、激しい動きを伴う運動は「オッパイが垂れる」大きな原因になる。

その理由は、乳腺組織や脂肪組織とともに乳房を支えている「クーパーじん帯」というコラーゲン線維にある。乳房の中に網の目のように張り巡らされているクーパーじん帯が伸びると、バストが下垂する原因になる。クーパーじん帯は、激しい運動による「揺れ」や妊娠・出産による急激なサイズ変化に弱い。一度伸びると元には戻らないので、「垂れるのが嫌だから運動しない」という気持ちも頷ける。

「運動するとき必ずスポブラ」は少数派?

「それでも走りたい」という女性の味方がスポーツブラだ。米国では近年のランニングやヨガブームに加え、自宅でリラックスするときにもアクティブウエアを着る「アスレジャー」トレンドが追い風となり、スポーツブラの売り上げが伸びているという。

一方、日本ではランニングやヨガをする女性が増え、「揺れると垂れる」という知識は浸透してきたものの、一般の女性の間では、運動するためにスポーツブラを購入する人は、まだ多くはないようだ。下着メーカー大手のアツギが実施したアンケート調査によると、運動をするときに必ずスポーツブラを着用する人はわずか14%。カップ付きインナーで代用している人もいるが、8割の人が普段と同じブラジャーをつけていることが分かった。

スポーツブラには、サポート力が強く上下の揺れを抑えられる、乳頭の擦れを予防する、通気性がよくムレにくい、汗が乾きやすい、ストラップの幅が広くずれにくい、伸縮性があり動きやすい、といった多くのメリットがある。

しかし、サポート力が高い分、バストが押しつぶされて形が崩れるのではないかという心配がある。また、マラソンランナーなど痩せた人や、バストが小さい人でもスポーツブラは必要か、カップ付きのインナーで代用可能か、現在の日本のスポブラ事情は――こうした疑問について、アンチエイジング医師団のメンバーで、湘南鎌倉総合病院形成外科・美容外科部長の山下理絵医師と、ニュー上田クリニック院長、国立スポーツ科学センターの上田由紀子医師に、それぞれの観点から意見を聞いた。

スポーツは「形から」でOK

形成外科と美容外科が専門の山下医師は、「スポーツブラでバストの形が崩れるという心配はありません。また、どんなにバストが小さい人でも走れば揺れるので、スポーツブラをつけることをお勧めします。バストの形を重視するならノーブラは論外。カップ付きインナーはノーブラで走るよりはましですが、サイズが合わないことがほとんどですから、揺れや皮膚の摩擦は避けられません。普通のブラジャーでも揺れを抑えるのに多少は役に立ちますが、ワイヤーなどで締め付けている部分が多く、摩擦で肌を痛める心配があります」とスポーツブラの必要性を指摘する。

一方、スポーツドクターとして多くの女性アスリートと接している上田医師は、「トップアスリートの女性は、ほとんどがスポーツブラを着用しています。それぞれの競技に適したタイプがあり、各メーカーがデザインや機能、サイズに特徴を持たせているので選択肢も豊富。国のスポーツ振興政策とともにスポーツブラに対する研究も盛んになっているので、現代の女性アスリートは助けられていると思います」と語る。上田医師によると、ランニングによる乳頭の擦れを予防するタイプのスポーツブラはこうした研究の賜物で、一般のランニング女子にも人気だという。さらにここ数年は、有名スポーツメーカーと女性下着メーカーとのコラボレーションにより、機能性とデザイン性を併せ持つスポーツブラが発売されている。

「スポーツは形から入ることも大切。おしゃれなウエアやブラなどをファッション感覚で楽しみ、体を動かす機会が増えることは望ましい動き」と二人の女性医師は口をそろえる。スポーツの秋。まずはお気に入りのウエアやシューズ、スポーツブラをそろえて、形から入ってみてはいかがだろうか。[監修:山下理絵 湘南鎌倉総合病院形成外科・美容外科部長、上田由紀子 ニュー上田クリニック院長、国立スポーツ科学センタースポーツドクター]

(Aging Style)