21日、都内のホテルで開かれた記者会見で引責辞任を表明したパイオニアの伊藤周男社長と後任の須藤民彦副社長(左)。(撮影:吉川忠行)

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業績不振のパイオニア<6773>は21日、創業家出身の松本冠也(かんや)会長(75)と 伊藤周男(かねお)社長(69)が引責辞任し、後任の社長に須藤民彦副社長 (58)が来年1月1日付で昇格する人事を発表した。松本会長と伊藤社長は退任後、取締役相談役に就任する。

 同社は、デジタル家電の価格下落を背景に、主力のプラズマディスプレーとDVDレコーダーが不振に陥るなど、経営状況が悪化したことで、2006年3月期は 2期連続で最終赤字になる見通し。このトップ交代で、現経営陣の責任を明確にし、業績回復を加速するねらいだ。

 同日、東京都千代田区の帝国ホテルで会見した伊藤社長は「急速な変化への対応が遅れた点では、経営の改革がまだまだ不十分だったことに責任を痛感している」としながらも、「お客様の満足を目指して、将来性のある事業に集中してきた方向性は間違っていなかった」と弁解。

 一方、後を引き継ぐ須藤副社長は「非常にきびしい経営環境の中で、どうやって(会社を)導くのか。責任の大きさ、難しさを実感している」と話した上で、PDCA(Plan、Do、Check、Action)サイクルの不徹底を業績悪化の原因のひとつとして 「当たり前のこととして回っていくような仕組みの改革と、それを実現する社員の意識を徹底的に変えたい」と強調した。

 家電事業をめぐっては、経営再建中の三洋電機が先週18日、経営状況の悪化から、半導体やテレビなど不採算事業の大幅縮小による総合家電からの撤退、総額2000─3000億円規模の資本増強を柱とする中期の再建計画を発表したばかり。近藤定男副会長、桑野幸徳取締役相談役の社長経験者2人が辞任、創業家出身の井植敏代表取締役兼取締役会議長が役員報酬を全額返上することなどで経営責任を示した。三洋とパイオニアで創業家の去就が分かれたことについて、伊藤社長は「うちにはうちのやり方がある」と述べた。

◆須藤民彦(すどう・たみひこ) 1947年群馬県生まれ。70年立教大社会学部卒でパイオニア入社、カーエレクトロニクス事業部長などを経て04年専務、05年6月から副社長。 【了】

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