死してなお、世間を騒がせる存在感はさすがの一言

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 インターネット上では大騒動に発展するも、新聞・テレビ・雑誌といった一般メディアは、完全に沈黙を貫く百田尚樹氏の『殉愛』(幻冬舎)を巡るドタバタ劇。同書の主役となる故・やしきたかじんさんの長女は、幻冬舎に対して出版差し止めと1100万円の賠償を求める提訴を起こす事態に発展した。ところが『大ベストセラー作家』百田氏に対する批判は絶対NGとして、かつては未亡人・さくらさんに対して疑惑を報じた各週刊誌も、現在横並びで報道を自粛している現状だ。

「しかし今週、権力に屈していた週刊誌がついに動きを見せました。12月2日発売の『サンデー毎日』(毎日新聞社)は2ページに渡って、今回のトラブルを特集。こちらに関しては、百田氏との権利関係が希薄という背景もあることでしょうが、特筆すべきは12月4日発売の『週刊文春』(文藝春秋)。作家林真理子氏の連載エッセイ『夜ふけのなわとび』が、この一件について『この言論統制は何なんだ!』と正面から疑問を呈しています」(出版関係者)

 林氏は「やはり書かずにはいられない」として、一般メディア上で完全スルーされている現状を説明。さらに、

『意地悪が売りものの週刊新潮も、ワイドの記事にすらしない(百田氏の連載が終わったばかり)』
『週刊文春も一行も書かない(近いうちに百田氏の連載が始まるらしい)』

 と、各出版社が百田氏の影響力を恐れて報道を見送っていることを風刺している。

各出版社の報道姿勢を試す“踏み絵”に

「確かに文春も殉愛を巡る騒動については沈黙中ですが、このコラムの掲載に編集部がGOサインを出すのは『さすが』の一言。現在百田氏は、各出版社にさくらさん擁護の記事を掲載するよう要請中だそうですが、週刊文春に限っては正面から突っぱねたという話ですからね」(同関係者)

 確かに、林真理子氏が、

「自分のところにとって都合の悪いことは徹底的に知らんぷりを決め込むなんて、誰が朝日新聞のことを叩けるであろうか」

 と提言しているように、大手メディアが触れられないタブーに切り込むことこそ、週刊誌の本来の姿のはずだ。

 大作家を語り部にした未亡人の“遺産目当て疑惑”から、ついには各出版社の資質を問う“踏み絵”となった今回の騒動。裁判の決着まではしばらく時間が掛かることとなるだろうが、疑惑の数々に関しては、やはり活字メディアに本領発揮してほしい。

(取材・文/一樹守)