By Frits Ahlefeldt-Laurvig

コンピュータやネットワークサービスの正規の利用者であることを証明し、操作可能な状態にすることを「Log in(ログイン)」と呼び、日常的な用語として定着しています。しかし、なぜ「Log in」と呼ぶようになったのかという由来についてはあまり知られていません。

The secret origin of “log in” | Designcult
http://www.designcult.org/2011/08/why-do-we-call-in-logging-in.html

デザインコンサルティング会社Reffell Designのジェームス・レフェルさんは、ごくごく日常的に用いられている「Log in」というフレーズの語源について気になったため、これを調査することにしました。

手始めに、オンライン版のオクスフォード英語辞典(OED)で「Log in」について調べてみたところ、コンピュータの認証作業という意味で最初に活字の形で用いられたのは、1963年のMITのコンピュータシステム「Compatible Time-Sharing System(CTSS)」であることが分かりました。CTSSの運用自体は1961年にスタートしているため、最初に「Log in」が使われたのは1961年なのではないかとレフェルさんは考えました。下記画像が当該箇所で「login」という形で使われています。

(PDFファイル)CTSS_ProgrammersGuide.pdf
http://bitsavers.informatik.uni-stuttgart.de/pdf/mit/ctss/CTSS_ProgrammersGuide.pdf


しかし「Log in」がコンピュータ用語として使われ始めた時期については、ブログの読者から、遅くとも1950年代には始まっていたと指摘を受けています。

さらに調査を進めたレフェルさんは、「Log in」というフレーズは、コンピュータ誕生の200年以上前にすでに船乗りの間で広く使われていたことを突き止めます。船の速度や位置などを記録する航海日誌は「logbook(ログブック)」と呼ばれており、航海日誌をつけることを「log in」と呼んでいました。どうやらこの「log in」がコンピュータ用語「Log in」の語源らしい、ということでレフェルさんはさらに「logbook」「log in」の語源へと遡りました。

By vxla

「log in」のlog(ログ)とは、樹木を切り倒して枝を取り除いた木材の「丸太」のこと。船の航行速度を測定する装置がない時代に、大きな丸太に一定間隔で結び目のついたロープを取り付け、その丸太を航海中の船の上から海に投げ込み砂時計で計った一定時間にどれだけ結び目が出たかその数を数えることで、ロープの距離・時間から航行速度を割り出していたそうで、そのため航行速度を記録することを「log in(丸太を投げ込む)」と呼ぶようになったというわけです。なお、これこそが船の航行速度の単位が「ノット(knot:結び目)」である語源とのこと。

航行速度の記録から転じて航海日誌がlogbookと呼ばれ、それを記帳する行為が「log in」と呼ばれるようになり、このフレーズがコンピュータ用語として採用されたのが「Log in」の由来というわけです。なお、どうして航海日誌の記録行為を指す「log in」というフレーズがコンピュータの認証行為にも使われるようになったのかについては依然として不明とのことで、レフェルさんはこの謎を知る人に情報の提供を求めています。


レフェルさんは「Log in」を「login」という一つの動詞のように使う用法に対しては大いに違和感があるとのこと。また、近年、「Log in」の代わりに「Sign in(サインイン)」というフレーズが台頭してきており、こちらの方が英語圏の人間にとってはしっくりきやすいのではないかと評価しています。さらに、レフェルさんはアメリカ・イギリスの主要なネットサービスで「Log in」「Sign in」のいずれを用いているのか調査したところ、いずれの国においても拮抗した状態であることが判明しています。


おまけ
なお、Twitterのサイトリンクには「Sign in」との表記があり、一見「Sign in」派かと思いきや……


リンクをクリックした先には「ログイン」と表記され、URLもhttps://twitter.com/loginと、ここでは「Log in」派というダブルスタンダードです。