まずは税制優遇を活用できる方法を考えよう

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■まずはDCでの運用を考えよう

2014年1月からNISA(少額投資非課税制度)がスタートした。ごく簡単に説明すると、年間100万円までの新規に購入する上場株式や株式投資信託の譲渡益と配当・分配金が非課税になる制度だ。ただし、口座開設期間は10年間、非課税期間は最長5年と期限がある。20歳以上の国内居住者であれば誰でも口座開設できるが、原則として1人1口座しか開設できず、現時点では一度口座を開設すると最低4年間は金融機関の変更ができない。

また、利益が非課税になる一方で、他の口座との損益通算ができず、上場株式等を売却した際に損失が生じた場合、翌年以降の3年間にわたり、確定申告すれば損失の繰り越し控除ができる制度も利用できないというデメリットもある。非課税枠を翌年以降に繰り越すことはできず、途中売却はできるものの売却部分の枠を再利用もできない。そのため、定期的に資産配分を運用開始時の状態に戻すリバランスをすることが難しい。100万円の非課税枠を使い切ると、投信の分配金を再投資する際、分配金は課税口座に入ることにも注意したい(分配金再投資コースを扱わない金融機関や最初から課税口座に入る金融機関などもある)。

複雑な制度ではあるものの、14年1月から譲渡益や配当・分配金の税率が現行の10.147%の軽減税率が廃止され、20.315%に戻ることを考えれば、非課税のNISAを使わない手はない。ただし、いきなり「NISAで何を買うか」ではなく、資産形成のなかでNISAをどう活用するかを考えるべきだ。

資産形成を考える際は、まず自分(家庭全体)が保有する金融資産の全体像を把握し、大まかな資産配分、つまり何にどの程度の資金を振り分けるかを決める必要がある。具体的には、6カ月分程度の基本生活費のほか、数年後に必要な教育費や住宅費などは預貯金などの無リスク資産で保有し、それ以外の金融資産をどう運用するかを考えることになる。

次に、活用可能な税制優遇制度を把握する。会社員ならば確定拠出(DC)年金(企業型・個人型)、自営業者やフリーランスならば個人型確定拠出年金や小規模企業共済などがある。これらの制度は、個人で払った掛け金が全額所得控除の対象になるうえ、運用益が非課税で、受取時にも税制優遇がある。運用商品も通常の投資信託よりも運用管理費(信託報酬)などのコストが低く、購入手数料もかからない。そのため、運用の目的が老後資金ならば、DCでの運用を優先的に考えたい。そのうえで、さらに運用する余裕があれば、NISAを活用する。会社の退職給付制度が厚生年金基金などの確定給付年金で、金融資産を自分で運用する必要があるなら、NISAの活用を検討する。

では、NISAをどう使えばいいのか。DCで、国内外の株式や債券に広く分散投資するインデックス投信を組み合わせて資産運用の中核となる資産をつくっているなら、NISA口座では単一国の株式投信を買ってみる、あるいは配当性向が高い日本株(個別株)を買うなど、リスクを取ってより積極的な投資をする選択肢もある。DCに加入できない場合にはNISAでインデックスファンドやETF(上場投信)などを活用したい。また、NISAは利益が出てはじめて非課税の恩恵を受けるため、なるべく損を抑えたいと考える人もいるだろう。その場合、まずは為替ヘッジ付きの海外債券のインデックス投信などで比較的安定した運用を目指すことも考えられる。いずれにしろ、自分のリスク許容度にあった商品を選びたい。

なお、単一国の投信や個別株は、インデックス投信に比べて値動きが大きくなる傾向がある。そのため非課税期間終了時に利益が出ているとは限らない。購入する際に長期保有か、ある程度利益が出たら売却して非課税の恩恵を受けるのかなどの出口戦略も含め、運用スタイルを決めておくべきだ。

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ファイナンシャル・ジャーナリスト 竹川美奈子
LIFE MAP, LLC代表。投資信託や個人型確定拠出年金、マネープランなどの講師、企業研修も務める。主な著書に『株、投信を買うなら必見! 税金がタダになる、おトクな「NISA」活用入門』など多数。

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(ファイナンシャル・ジャーナリスト 竹川美奈子 構成=大山弘子)