鳩山氏は「東アジア共同体」の実現が持論だ(写真は2010年11月、東京大学「駒場祭」の講演で)

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鳩山由紀夫元首相が、沖縄県の尖閣諸島をめぐり、「領土問題として主権を主張すべき」なとど発言した。尖閣諸島については領土問題は存在しないというのが政府の公式見解で、これと対立する形だ。

鳩山氏は民主党の最高顧問(外交担当)に復帰したばかり。一部の識者からは領土問題化を唱える意見はあるものの、「またもや日本外交の足を引っ張っている」との指摘も出ている。

野田首相は「領土問題はない」の立場

鳩山氏は2012年10月27日に苫小牧市内で行った講演で、尖閣諸島の問題について、中国側が領有権を主張していることを理由に、

「領土問題でないといくら言っても、日本は不利な立場」

と発言。その上で、

「領土問題は領土問題として議論を大いにしながら、日本の主権を主張していくべきだ」

と主張した。

「友愛精神、東アジア共同体の発想を生かしたい」

と持論を展開した。

なお、野田佳彦首相は10月1日の記者会見で、

「領有権の問題は存在しないというのが我々の立場、この基本的な立場は堅持していきたいと考えているし、堅持しなければならない」

と発言しており、これが日本政府としての公式な立場だとされている。

最高顧問復帰は「国益に資する活動」目的だった

現時点では、香港のRTHK、韓国の聯合ニュース、中国の環球時報などが、日本の報道を引用する形で、事実関係を論評抜きで淡々と伝えている。だが、発言が中国のネット利用者を勢いづかせることになっているのは間違いないようで、記事のコメント欄には

「日本にも、有識者は少しはいるようだ」
「こういう現実的な政治家が少なすぎる」

などと鳩山氏を支持する内容が相次いでいる。中には、

「いかなる領土問題も存在しない。釣魚島(編注: 尖閣諸島の中国名)は昔から中国領土だ」

と、皮肉たっぷりのものもある。

鳩山氏は12年6月、消費増税関連法案の採決に反対することを理由に最高顧問を辞任。反対票を投じたことを理由に党員資格停止3か月の処分を受けていたが、処分が解けたため、10月16日に輿石東幹事長の求めで最高顧問に復帰したばかりだった。「外交担当」の肩書きは、「国益に資する活動がしたい」などとして、鳩山氏側が求めたという。